
新幹線鉄道規格新線(スーパー特急方式)とは
どうもゴハチさんです。
突然ですが、皆さんは「新幹線鉄道規格新線」という言葉をご存じでしょうか。
それってただの新幹線じゃない?と思った方もいるでしょうが違います。
新幹線鉄道規格新線、またの名を「スーパー特急方式」
かみ砕いていえば新幹線路線の敷設方法のひとつです。ですがこのスーパー特急方式、ほかの新幹線の敷設方法にはない大きな特徴があります。
何が違うのかと思った方、それでは下の写真をご覧ください。

はい、これが今回の主役であるスーパー特急方式で使われる車両です。
…そうですね、関西圏や名古屋圏の方にはおなじみ「サンダーバード」や「しらさぎ」などで大活躍の681系です。この車両こそが、いわゆる「スーパー特急」として活躍するポテンシャルを持っている列車です。
つまりどういうことかと言えば、ミニ新幹線の逆を行くのがこの新幹線鉄道規格新線。
新幹線基準に設計された車両が在来線に乗り入れる秋田・山形のミニ新幹線に対して、在来線向け特急車両が新幹線規格で設計された1067mm幅の線路の上を160~200km/h程度で走らせる方法を指すのが、この「新幹線鉄道規格新線」というものなのです。
ほかの新幹線と比較して、比較的線形の良い区間では通常の在来線を走行させ、新線への付け替えとスピードアップが求められている区間などでの採用が検討されていました。
…そうです、過去形なんです。つまり2025年現在において、スーパー特急方式を採用して運行を行っている路線はなく、過去行われた実績も1社しかありませんでした。

その1社というのが、みんな大好き北越急行。線路幅1067mmながら、最高時速160km/hというバケモノじみた記録を打ち立て、多くの鉄道ファンの心をわしづかみにしました。
北越急行の詳細はこちらの記事よりどうぞ
このような在来線車両を高速度で走らせる方式が新幹線鉄道規格新線、あるいはスーパー特急方式と呼ばれるものなのです。
建設費や建設区間が、フル規格新幹線と比較して短く済む点や、既存の在来線に直接乗り入れることが可能になる点などから、北陸新幹線の糸魚川~金沢間や、九州新幹線の新八代~鹿児島中央間および武雄温泉~諫早間にて導入が検討されました。しかし、フル規格新線の方がより速く運行が可能なことや、東京・大阪などからの直通運転が可能なことなどから、費用対効果を考えてスーパー特急方式の本格採用には至りませんでした。
しかし近年、とある会社がこのスーパー特急方式に意欲を示しているのです。

そう、我らが苗穂の匠を抱える、萌黄色の北の戦士ことJR北海道です。
2024年に発表された「JR北海道グループ中期経営計画2026」において、北海道新幹線開業後の目標として軌道強化や線路改良、高架化事業などを基に最高速度の引き上げを行い、札幌~旭川間136.8kmを60分以内に結ぶ計画(2025年現在最速85分)、および札幌~新千歳空港間46.6kmを25分以内に結ぶ計画(2025年現在最速33分)が立てられています。
仮にこの方式が成功すれば、改めてスーパー特急方式の可能性が開けると考えていますし、これまで以上に主要幹線の高速化や所要時間短縮なども期待できます。
というわけで、新幹線鉄道規格新線方式、以下スーパー特急方式の可能性について考えてみようと思います。
スーパー特急方式のメリット・デメリット
まずそもそも、スーパー特急方式のメリットとデメリットについて考えてみようと思います
メリット1:これまでの在来線との互換性があるため、乗り換えの手間がない

北陸新幹線や西九州新幹線などが開業する前から槍玉にあげられていた「乗り換え」という心理的に障害の大きい問題。これを簡単に解決できるのがスーパー特急方式の魅力です。
1度の乗り換えには、30分所要時間が延びるのと同等の心理的な壁があると言われており、現に福井・金沢から大阪へ向かう人が北陸新幹線延伸前と比較して減ったとも言われています。 そうした同区間をスーパー特急方式として在来線特急をそのまま新幹線へ乗り入れさせる方法を取ることができれば、これまで通りの直通運転でより速達化を行うことができるようになります。
メリット2:やろうと思えば既存の在来線をそのまま新幹線にできる

例えば今ある高規格な高架の幹線路線や、建設中のローカル線をそのまま高規格な新幹線に変えることも可能なのです。
実際に、北越急行線は単行キハでトコトコ走らせる路線として計画されていたところに国が目を付けて、東京対北陸へのショートカットルートとしてこの路線をスーパー特急方式の電化路線として計画変更したという経歴があります。
また計画倒れに終わったものの、琵琶湖西岸を走る湖西線で160km/h走行を実現させる計画が立てられており、こちらも既存の在来線の防音対策を強化したうえで在来線規格の200km/h対応車両を走らせることになっていました。
メリット3:全線フル規格の区間よりも安上がりで済むしコンパクトに収まる

設備投資が少なく済むのも、スーパー特急方式の大きな魅力です。
フル規格の新幹線を整備する場合、既存の在来線とは別個の車庫を整備したり、駅を建設したりする必要があるのですが、そういった設備をすべて在来線と共用で設置することができるので、特に都市部などの過密地帯に線路を新しく無理やり通す必要がないのです。これはお得。
デメリット1:フル規格新幹線と比較して速度が遅い
メリットがあるということは、当然ながらデメリットも存在するわけです
まず遅い。第一に遅い。何より遅い。本当に遅い。(超大事なことなので4回言いました)
フル規格新幹線の場合は260km/hで走れるのに対して、スーパー特急方式だと速くても200㎞/h。新幹線の定義を定めている全国新幹線鉄道整備法では、「主たる区間を200km/h以上で走る鉄道」という風に決められてるので一応新幹線の括りにはなりますが、だとしても時短効果がそこまで大きくない、というのが一番大きいデメリット。
実際に、フル規格で東京~金沢間を結ぶ場合は現状2時間25分が最速ではあるものの、仮にスーパー特急方式で着工された場合は越後湯沢乗り換えで3時間20分ほどかかる計画でした。遅い。マッジで遅い。1時間の差はマジで大きい。
速やかな速達化が求められるのであれば、フル規格の新幹線を一気に整備したほうが結果的に良いのでは?という話もあります。
デメリット2:都市部の容量が足りないときに増発できない

そもそも新幹線の目的が「ひっ迫した在来線の輸送力を分散しつつ、ついでに回転率の高い列車を走らせること」にあるので、これだとただ速くしただけでおしまいです。
超ざっくり語ると、速度の遅い貨物列車や普通列車と、速度の速い特急・急行列車を複々線で分ける的な役割なんですよ。
新幹線は文字通り「新しい」幹線路線です。速いだけじゃダメなんですよ、えぇ。
まぁ正味整備新幹線ってそういう側面は結構ある気がするんですが、本来の新幹線の目的を見失ってる気がしてなんだかなぁ…っていうところです。
新幹線が整備できれば、その都市間の移動需要も大きくなるものですが、そうした輸送力に合わせた運用ができなくなるのも大きなデメリットです。
デメリット3:もしフル規格新幹線に計画を変更するとなると、軌道改良などに余計なカネがかかる

そもそも、スーパー特急方式はあくまで新幹線の整備方法の一環である一方で、フル規格新幹線を整備するまでの暫定措置。
将来的にフル規格新幹線に変更することになった場合、架線の高さの変更や電圧、軌間幅などの調整が必要になります。
将来的に全線フル規格化が決まったら、既存でスーパー特急が走らせているなら、安く済んだはずの整備費が余計にかかることになりますね。人口の多い東京からの直通を考えた場合、利便性が高く付くのはフル規格の方ですからね…
JR北海道が掲げたスーパー特急の再実現、その意味は?
というわけで問題山積なスーパー特急方式ですが、この方式に意欲を示しているのがJR北海道。
開拓という名のもと敷かれたまっすぐなレールは、高速走行にふさわしく。かつては日本最速の表定速度106.2km/hを叩き出した特急「スーパー北斗」や、2024年現在も日本第3位の表定速度を誇る特急「カムイ」・「ライラック」が駆け抜けています。
しかし、これらの路線は並行する高速道路に押されたり、場所によっては空路と直接対決を挑んだりと、北の大地に試されているわけです。そんな中でも民営会社であるJR北海道は、北海道新幹線開業後の札幌対各都市間の所要時間の短縮を目標に掲げており、その方式のひとつとしてこのスーパー特急方式に着目しています。
新青森より函館、札幌を経て最終的に旭川までの整備計画の出されている北海道新幹線と、札幌から千歳、室蘭を経て長万部に至る北海道南回り新幹線の計画。この2つの計画を活用したスーパー特急方式が検討されています。
その中でも、札幌~旭川間と、札幌~沼ノ端間および苫小牧~東室蘭間は日本の在来線でもトップクラスに線形が良いため、新しい線路を敷かずに、既存の線路を活用して列車の速度だけを上げるという湖西線やほくほく線と同様の手法で速度を向上させる計画が打ち出されました。
これらを実現することができれば、これまで以上に道内の移動需要の拡大や旅客争奪戦においても優位に立てるようになります。
札幌~旭川間を整備した場合の概算
参考程度に、札幌~旭川間を1時間で結ぶようになった場合、その先の非電化区間へ乗り入れる特急も同様の所要時間で結べるようになると考えると、各列車だいたい30~40分の所要時間短縮にもなります。さらに旭川より先の区間、例えば北海道高速鉄道開発(株)が保有する宗谷本線旭川〜名寄間の最高速度をさらに引き上げることができれば、さらなる所要時間短縮も可能になるのではないかと考えています。
もし実現ができれば、札幌〜稚内間は5時間を切ることになり、さらに旭川〜名寄間を130km/h化させることができればそこからさらに15分程度の短縮にも繋がるので、JR北海道にとっても札稚間の輸送シェアで優位的になるのではないでしょうか?
仮にJR北海道で成功した場合、今後スーパー特急方式は増えるのか
というように、再実現に向けていよいよ大きく前進している「スーパー特急」方式。
仮に成功した場合、JR北海道を飛び出してほかの地域での運用も想定することができるのでしょうか?また、どういった路線であれば実用化をすることができるのでしょうか。
ここでカギとなってくるのが、直接的には東京や大阪などとのつながりよりも、近隣の大都市圏とのつながりが強い地域であり、なおかつ特急列車の本数が多い地域になると考えます。

例えば、日豊本線の小倉~大分間など、博多や小倉などとのつながりの方が強い都市とを結ぶ路線などで活用できることが予想できます。運行頻度も申し分ないですし、何より高速バスと戦っている地域でもあります。こうした地域間輸送においても、鉄道有利に進めるためには、より速度面で対抗策に出る必要性があると思います。
ただ、現状以上の高速化に踏み切るためには、踏切の切除などを図る必要もあるため、沿線自治体側との協力も必要になってくると思います
そうしたことを考えると、一つ一つの自治体の規模が大きく話が進みやすく、かつ線形も良い北海道ほど有利な場所は多くないので、そうしたことを踏まえるとあまり道外には出にくいのではないのかなとも思います。

踏切の一切ない湖西線の160km/h化についても、現在主力となっている683系が台車の対応改造などをしないといけないことや、時期未定ではあるものの北陸新幹線の大阪延伸も控えていることを考えると、現実的ではないのも事実ではあると思います
スーパー特急を走らせるためには、沿線自治体の同意を得て、補助金などを活用しつつ、効率的な鉄道運用を実現させる必要もあると思います。
そうした面も踏まえると、スーパー特急方式が他の自治体へ波及していくには、可能性こそあれど北海道ほどスピーディーに進むことは難しいのかもしれません。
終わりに

再び実現に向けて大きく前進した「スーパー特急方式」。
「ウナギを頼んだらどじょうやアナゴが届いた」という迷?言が残されていますが、それでも鉄道ファンとしていつも都市部で見る特急列車が高速で駆け抜ける様子を思い浮かべると、ちょっとウズウズしてしまいますね(笑)。
一方で、その実現の足掛かりになる北海道新幹線の札幌延伸の時期は未だに決まっていませんし、北海道内での運行に際したそこそこ重大なトラブルも発生していることは事実であると思えます。
何より、今後鉄路が生き残れるかどうかは、JR北海道の経営戦略以前に、地元の人たちや観光客に掛かっていると思います。私も旅行で北海道を訪れたときには、基本道内移動はJRで済ませるつもりです。
無理にJRを利用しろ、というわけではないものの、札幌から函館や旭川などの都市間輸送や、札幌~新千歳空港間だけでもJRを利用するだけでも、JR北海道の懐事情は大きく変わると思います。
スーパー特急方式を再び実現させるためには、今からでも私たち鉄道ファンにもできることは多くあると思います。
撮り鉄では、レンタカーをただ利用するだけではなく、ある程度大き目の駅まで特急列車を利用してみる、というのも選択肢に入るのではないでしょうか。
改めて、北海道旅客鉄道さま、多分夏に行きます。乗り回してやるから震えて待ってろ。
お知らせ
北千葉線運転会の編集担当も兼任している私ですが、北千葉線の動画公開を7月末に予定しておりますため、そちらに向けて少しブーストをかけなければいけないと考えましたので、8月頭辺りまで執筆活動はお休みします。
次は北千葉線の動画でお会いしましょう!

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別名:停車駅馬鹿
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スーパー特急試験車両は1994年に製造されており速度試験直前で試験中止と廃車が決まりました。
当時ほくほく線経由のスーパー特急で北陸新幹線を建設する計画があり、一部着工もされたのですが、それを妨害するために北陸の有力政治家が圧力を掛けたもので、以後スーパー特急はタブーになっています。
技術的には最高速度は軌間に比例すると考えるのが打倒でスーパー特急はフル規格の0.75倍の速度となります。フル規格260キロに対してスーパー特急200キロは妥当なものでした。
現在フル規格は騒音問題さえ解決すれば360キロ走行が可能になっています。スーパー特急で整備新幹線の260キロは現実的な数字です。
いよいよもってスーパー特急を認める訳に行かなくなりましたね。