つるまいバーガー 〜バンズとパティは17歳差〜

都営新宿線には、古い車両を新製した車両で挟んだ、という編成があったと聞いております。その電車の名を「10-300R形」と言うそうですね。知らない子ですね(笑)そのような車両はかなり特徴的で、さらに大抵早くに廃車されるため、鉄道ファンの注目を集めがちです。では、そのような車両が名古屋にあったのかというと、ありました。それが、今回の記事のテーマ・鶴舞線3050形3159Hです。それでは、詳しく見ていきましょう。

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そもそも鶴舞線とは

鶴舞線、正式には「名古屋市高速度鉄道第3号線」とは、愛知県日進市の赤池駅から、名古屋の南東部(天白区・昭和区)を経由したのち、名古屋の中心地を縦に貫き、北西部に位置する上小田井駅を結ぶ路線です。

ラインカラーは水色です。特段海に近い場所を走っている訳ではありませんが、相互直通運転によって結ばれる名鉄線の伝統カラー・赤色(名鉄スカーレット)と見分けがつくよう、赤色の補色・水色(青色)がラインカラーとなっています。駅ナンバリングにおける路線記号は「」(Tsurumai・鶴舞のT)であり、起点となる上小田井駅を「T01」とし、そこから順に隣駅・庄内緑地公園駅が「T02」、庄内通駅が「T03」、浄心駅が「T04」・・・と番号が振られています。終点・赤池駅は「T20」です。

画像から分かる通り、名古屋の地下鉄路線の中では最もレトロさが残っている路線であり、ホームドアもつい最近(昨年9月以降)設置・運用が開始されたばかりです。また、直通先の路線・名鉄豊田線と犬山線からやって来る車両も、かなり古臭い(褒め言葉)ものばかりですから、それを助長させています。(「助長」は「不必要な力添えをしかえって害となる」というのが本来の意味ですが、鶴舞線の場合は受け取り方次第ですね。古臭くて汚いというイメージを持つ方もいれば、レトロさが残っていて味わい深いと感じる方もいるでしょう

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つるまいバーガーについて

つるまいバーガー・3159H

当該編成の同型車

では、この「鶴舞ハンバーガー」(杉山英澪が勝手に名付けました)である3159編成について紹介していきます。同編成は3050形のうちの1編成です。この3050形は、1993年の上小田井駅延伸や輸送力増強などを目的に、翌年までに10編成が導入されました。「じゃあ、製造両数も、6両×10本で、60両なんだよね?」とお考えの皆さん、違います。それでは、ウィキペディアにある、この系列のページを見てみましょう。

そう、60両ではなく、2両少ない58両製造となっています。1本だけ4両編成なのかというと、そういう訳ではありません。それでは、その理屈について解説します。

3000形の組み換え

こちらは3000形。鶴舞線の開業時から使用されていた車両で、2年前に勇退しました。同系列は、「黄電」と呼ばれていた名古屋の地下鉄のイメージをガラッと変えた車両で、以下のような特徴を備えていました。

  • 冷房装置(名古屋初、日本の地下鉄では神戸市営地下鉄に続き2例目)
  • 電機子チョッパ制御(名古屋初)
  • ステンレス鋼製(名古屋初)
  • 車両長が20m級(名古屋初)

名古屋の地下鉄初の技術がたくさんあり、当時の最新の技術を取り入れた、まさに最先端をゆく車両でした。これだけ優れた車両ですが、のちに鶴舞線の車両事情を混乱に陥れます。まず、登場時の編成に就いて見ていきましょう。

じゃん。この3000形は、1984年までに4両編成が23本、つまり92両が導入されてきました。細かな仕様は変えつつも、基本的なデザインは変更せず、およそ8年間増備が断続的に続いてきました。しかし、そんな3000形にも転機が訪れます。1993年より、鶴舞線の全列車が6両編成での運行になることが決定しました。このままだと運用出来なくなる3000形は、同年までに編成の組み換えを行います。ここまでは至極とまでは行きませんが、当然なことですね。では、組み換えについて、以下の写真をご覧ください。

このときに、以下の編成がバラバラになりました。

  • 3103H
  • 3104H
  • 3105H
  • 3106H
  • 3109H
  • 3117H
  • 3119H
  • 3121H

初期車(3109Hまで)が多くバラバラにされていますね。それでは、製造された編成数と、組み換え後に組成された編成数・解体された編成数の合計とを見比べてみてください・・・。何かに気が付きませんか?

そう、最終的な製造数からバラされた編成数と組み換え後の編成数を引くと、1本余ります。つまり、1本減少しているのです。編成に2両組み込むところ、1本足りないので、2両の余剰車が発生したと言えます。では、それはどの車両なのでしょうか?

←豊田市・赤池方面  犬山・上小田井方面→
31XX32XX31XXA32XX37XX38XX
310132013104320437013801
310732073105320537073807
311132113103320337113811
311232123106320637123812
311332133109320937133813
311432143119321937143814
311832183117321737183818
312232223121322137223822
←豊田市・赤池方面  犬山・上小田井方面→
31XX32XX37XX38XXA37XX38XX
310232023103380337023802
310832083105380537083808
311032103104380437103810
311532153109380937153815
311632163117381737163816
312032203119381937203820
312332233121382137233823
合計で15本が組成された。

この図表を見比べて、組み替えられた編成のうち、上には記載があるが、下には記載が無い(=余った車両)編成を探してみてください。分かりましたか?そうです、3106編成のみ、編成のうち2両が余ってしまいました。この編成の3706号車・3806号車の存在が、色々厄介なことになります。

つるまいバーガーの誕生

このころ、新型車両である3050形の導入計画が具体的になってきました。

名古屋市交通局
名古屋市交通局

ようし、3000形の組み替え計画は順調だし、3050形も9本導入するぞ〜!

3000形
3000形

待ってください!待ってください!大ピンチです!

名古屋市交通局
名古屋市交通局

どうしたんだ、鶴舞線の奴。

3000形
3000形

組み替えたところ、2両余ってしまいました・・・(早く形式名覚えろよ・・・)

名古屋市交通局
名古屋市交通局

どえりゃあやばいなぁ・・・

←豊田市・赤池方面  犬山・上小田井方面→
315032503350345037503850
315132513351345137513851
315232523352345237523852
315332533353345337533853
315432543354345437543854
315532553355345537553855
315632563356345637563856
315732573357345737573857
315832583358345837583858
315932593359345937593859

仮に上図のように導入してしまうと、やはり余剰車が発生してしまいます。しかも、その余剰車は、鶴舞線の最古参組の車両とは言え、まだまだ車齢は20年にも満たず、勿体ない・・・。そんな中、名古屋市交通局はこのような奇策を考えます。

名古屋市交通局
名古屋市交通局

新型車両のうちの1編成に、余剰車を組み込もう

その結果、編成表は以下のようになりました。

←豊田市・赤池方面  犬山・上小田井方面→
315032503350345037503850
315132513351345137513851
315232523352345237523852
315332533353345337533853
315432543354345437543854
315532553355345537553855
315632563356345637563856
315732573357345737573857
315832583358345837583858
315932593706380637593859

本来の3350形/3450形のポジションを、余剰車2両が奪い取りました。そうした結果、3159編成内では、およそ17歳もの差が生まれてしまったのです。後に東京都も同じような方法を新宿線の10-300R型で採用していますが、名古屋ではその10年以上前から、このようなゲテモノ編成が誕生していたのです。また、3706号車も3806号車も電動車でしたが、通常の3450形については付随車であったため、3159編成だけMT比率が4M2Tと高くなってしまいました(他の編成は3M3T)

ゲテモノ編成の運用

こちらは上段の写真を編集したもの。このように、前面などに差異はなく、運用上の区別も大してなかった。

ゲテモノ編成てあった3159編成ですが、他の3050形の仲間たちに混ざって、25年以上も名古屋の地を駆け続けました。杉山英澪が初めてこの編成に乗ったのは2018年ごろで、その頃既に10-300R形は退役しており、このような形態の車両は全国的に見ても珍しくなってきていた頃でした。

迫りくる消費期限

この特殊な編成も暫くは安泰かと思った矢先である2011年、ついに新型車両・N3000形が導入されます。

この車両は、フルカラーLEDの行先案内表示器や液晶ディスプレイ式の車内案内表示器、IGBT-VVVFインバータ制御など、熟成しつつあった様々な新技術を積極的に採用し、次世代の鶴舞線に相応しいような車両となりました。この車両の導入本数は、最終的には16編成となりましたが、ここで注目してほしいのが、結構前に登場した、3000形の組み換え後の編成表です。この表から見るに、3000形の組み換え後の本数は15本。では、運用本数が増えたのかと言うと、そうではありません。寧ろ、90年代は平日昼間に時間10本運転されていたところ、2003年より7〜8本、2023年からは6本の運転と、本数は減っています。つまり、このN3000形には、また別の駆逐すべき車両がいたのです。それこそ、3050形3159編成だったのです。

当初は、中間の3000形車両だけを廃車し、残された3050形車両はそのままに、3000形の代替としてN3000形中間車を挿入する、という可能性もありましたが、そのようにはならず、結果的に2019年9月26日をもって運行を終了。翌日に、代替となるN3000形のN3111編成が運行を開始し、26年ほどの歴史に幕を下ろしたのでした。これにより、1977年の開業時に製造された3000形の1次車は全廃となりました。また、名古屋市交通局におけるVVVFインバータ車の廃車は、2025年現在ではこの3159編成が唯一となります。

3050形写真集

走り去っていく3050形(2023.05.04)
当時は未更新車だった3157編成(2023.10.14)

まとめ

今回は、鶴舞線にいたゲテモノ編成、杉山英澪の呼び方では「つるまバーガー」となる、3050形の3159編成についてご紹介しました。この編成は、廃車後解体され現存していませんが、3050形は、機器更新を経ながらも現在までこの編成以外は生き残っており、もう数年ほどは安泰であると考えられます。

また、鶴舞線は、東京などでは決して味わえないような「昭和らしさ」が随所に見受けられますが、このような雰囲気が漂い続けるのも、決して長くはないはずです。私が勝手に「最後の昭和の地下鉄」と呼ぶほどレトロさの漂うこの路線に、是非乗ってみてくださいな。

それでは、今回はこの辺で終わりにしようと思います。ありがとうございました。それでは・・・グレート グレート グレート 東海市!(分かる人いるかな)

この記事を書いた人

杉山英澪
杉山英澪
明石生まれ・奈良育ち・名古屋住みの学生架空鉄。東海エリアの記事を中心に書いています。心の中はいつも東海市。知多半島の萌えキャラ「知多娘。」のしゅうちゃん・メディちゃん・酔子ちゃん推し。
・・・Freedom TrainもBRAVE!

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