おわび
この記事において一部画像が欠落している箇所がございますが、引き続き内装記録を進めたのちに正式な画像に順次差し替える方針でおります。
ご理解をお願いするとともに、完全体の記事の完成に今後もお時間をいただくことをお詫びいたします。
はじめに
はじめまして。17901と申します。2002年4月に東急車輛を出場した5101F以来、最後に落成したサハ4413ーデハ4513・サハ4414ーデハ4514に至るまで21年間製造が続いた東急5000系列。
この系列では増備の過程において、さらなる混雑対策や着席時の快適性向上をもくろみ、しばしば座席設計に変更が加えられることがありました。これだけではなく、後天的な仕様変更によって種類がさらに増えるなど、実に趣味者をうれし泣きさせるムーブをしているように感じます。しかしウィキペディアにて当該記事を参照してみると……。
座席は3000系と共通の1人の掛け幅を450 mmとした片持ち式バケットシートである。2003年度以降に導入した車両はE231系[注 7]とほぼ共通の座面にSばねのクッションが入ったものとし、座り心地を改善した。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%80%A55000%E7%B3%BB%E9%9B%BB%E8%BB%8A_(2%E4%BB%A3)#%E8%BB%8A%E5%86%85
注7:2004年度以降に新製した近郊タイプ。
座席にはハイバックシートを採用し、座面も10 mm厚く変更。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%80%A55000%E7%B3%BB%E9%9B%BB%E8%BB%8A_(2%E4%BB%A3)#Shibuya_Hikarie%E5%8F%B7
筆者補足:4110F(Shibuya Hikarie号)についての記述です。
座席をハイバックシートに変更し、一部座席にはヘッドレストを装備[95]。モケットを緑系とした。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%80%A55000%E7%B3%BB%E9%9B%BB%E8%BB%8A_(2%E4%BB%A3)#2015%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E8%A3%BD%E9%80%A0%E5%88%86
95:鉄道ファン通算665号付録「新車カタログ2016」
と、(製造期間の長さゆえ仕方のないことですが)実に様々な言われ方であるのが分かります。しかしはっきり申し上げると、
さっぱりなにもわからない!
のです。これらの記述は、東急5000系列の座席の沼を表すには不十分だと感じてきました。
ということもあって、かつての私が成し遂げられなかった「東急5000系列の座席の分類」に、これから再び挑んでみることとしました。人様の書いた内容を理解できないのであれば、自分自身で資料を読み漁ってかみ砕くまでです。
座席に関する寸法各種
かつての私は「座ぶとん」と「背ずり」の種類に着目して分類を行っていましたが、今回はそれらに加え、「寸法」という確かな値・差異をもって分類を進めていく所存です。ここでは、分類に使用する3つの座席の寸法についてご説明いたします。
測り方 | 説明 | |
座席幅 | 座席の右端から左端までの幅を測る 幅を着席定員で割ると一人当たりの掛け幅 を算出できる | 座席幅を広くすると(バケットシートの場合) 定員着席時の窮屈感・圧迫感を軽減できる |
座面高さ | 床面から座面先端の上辺までの高さを測る | 座面を高くすれば短時間向き、その逆は長時間向き |
座席奥行 | 座面先端の延長線から内張り(内壁)までの 幅を、床面と常に並行になるようにして測る | 奥行を短くすれば短時間向き、その逆は長時間向き |
また前回ではモケットの種類を考慮しませんでしたが、今回はそれも考慮することとします。
5000系列の定義
続いて、当記事における「5000系列」の定義をご説明します。当記事では、以下の範囲までを5000系列としました。
- 5000系(全車両)
- 5050系(4000番台を含めた全車両)
- 5080系(6000系由来の車両を含めた全車両)
5000系列への発展の礎となった3000系、5000系列の派生系列である6000系・7000系については、今回は取り上げませんでした。なにとぞご了承くださいませ。ただし一部の座席寸法欄において、6000系の数値を参照している箇所があります。
それではお待たせいたしました。分類の成果をどうぞご覧くださいませ。
3000系タイプ
1次車
幅・高さ(㎜) | |
座席幅1 | 450 |
座面高さ | 430 |
座席奥行 | 550(座面430+背ずり120) |
5101F
記念すべき5000系列の第一陣、1次車は5101Fのみが該当します。上回りのベースとなったE231系電車とは別の座席を採用しており、3000系とほぼ同等のものです。モケットは青系の内装材に合わせてか青系のものを使用し、3000系のローズレッド系のモケットとは雰囲気が異なっています。2013年ごろからクッションの仕様変更が始まったのを受け、後述の2次車もろとも背ずり側のモケットの模様が変わりました。
2024年現在、登場時に青モケットだった5000系は全車新モケットないし後述のx020系風の緑系モケットに切り替わりました。
5000系列座席カウンター | +2 |
2次車
幅・高さ(㎜) | |
座席幅 | 450 |
座面高さ | 430 |
座席奥行 | 550 |
当初5102ー5106Fとして製造された車両※画像はクッション・背ずりモケット仕様変更後
5181・5182F
2次車では目黒線向け仕様の5080系が設定されました。5080系のモケットは5000系の色違いとなりましたが、これは3000系の内装のカラーコードを踏襲したためです。5080系においても後述の増結車を除きクッション・背ずりの更新が終わり、原型のクッション・モケットは消滅しました。
一部書籍において、5182Fを「2004年度に入籍した」のを理由として3次車とする記述が見受けられますが、当記事では「内装において2次車と共通点が多い」ことから、5182Fを2次車として扱っています。
直近では2023年8月ごろに5106Fが、2024年3月ごろに5181Fがx020系列風の緑系のモケットに切り替わり、話題を呼んだのは記憶に新しいことでしょう。
余談①横浜高速鉄道Y500系
Y511ーY515(・Y516)F※画像は座面の仕様変更後
2004年のみなとみらい21線開業にあわせて製造された当形式ですが、ライラック調の色調の内装とされたほかモケットも新規の柄が起こされ、できる範囲内で極力、5000系列との差別化を図ったように見受けられます。一方、座席自体は5000系列(2次車まで)と同一のものを採用して2、トータルコストを削減しています。
本家から三年遅れ2017年、Y500系でも座席の座り心地を改善する名目で座席に手を加えることとなりましたが、本家とは異なり座ぶとんにSバネを追加しただけに留まり、座り心地は両者で全く異なります。個人的には、圧倒的に5000系列のほうが座り心地が良いと感じます。
5000系列座席カウンター | 2+3 |
5000系列座席カウンター(Y500系含む) | 2+5 |
E231系(Sバネ入)タイプ
3ー6次車
幅・高さ(㎜) | |
座席幅 | 450 |
座面高さ | 430 |
座席奥行 | 550 |
5107F
5183-5187F既存車※画像はクッション・背ずりモケット仕様変更後
5151ー5165F・4112ー4114F既存車(旧5166ー5168F)※画像はクッション・背ずりモケット仕様変更後
ところで、この記事を執筆するにあたって大変お世話になっている書籍の中に、このような記述があります。
腰掛には3000系と共通の片持式のバケットシートを採用し(中略)たが、東横線用はE231系とほぼ共通する計画である。
今野雅夫(2003). 東京急行電鉄5000系の概要, 鉄道ピクトリアル, 電気車研究会 53巻12号(通算740号), p43
出版された2003年11月の時点で、すでにE231系に準じた仕様の座席で製造することを明言しています。なぜこのような決定を下したのかは、5000系列の形態差分を研究している者にとっての最大の謎です。
3次車では東横線向けの5050系が設定されました。車外行先表示器にフルカラーLEDを世界で初めて採用したのは有名なお話でしょう。座席についても先述の通り大幅な変更が加えられ、2004年以降製造のE231系近郊タイプで初採用のSバネが入ったタイプ3となり、ビジュアルはもちろんのこと、座り心地も大きく変化しました。いわゆる「新系列座席」と呼ばれるタイプだと申し上げればわかりやすいでしょう。
現在は1次車や2次車同様、座席クッション・モケットは更新されて原型をとどめません。2024年7月現在、5183Fと5184Fがx020系列風モケットとなっています。
5000系列座席カウンター | 5+7 |
5000系列座席カウンター(Y500系含む) | 7+7 |
余談②横浜高速鉄道Y500系Y517F
幅・高さ(㎜) | |
座席幅 | 450 |
座面高さ | 430 |
座席奥行 | 550 |
Y517F
2014年に発生した元住吉駅列車衝突事故の当該となったY500系Y516Fの補填として、東急側から譲渡された5156Fを、2018年にY500系として再デビューさせました。運用開始当初は5050系のままの内装でしたが、のちにY500系の内装にほぼ揃えられました。当然ながら座席モケットにも手を加えられましたが、これがどうも、原型のクッションをいまだに保っているというのです。
比較してみると、座面のクッションが明らかに違うことが分かります。そして、このクッションはむしろE231系(Sバネ入)タイプの原型のものと同等品であると考えます。Y500系Y511-Y515(Y516)Fの座席についても、先述の通り座面にSバネを追加しただけにとどまり、背ずりに関しては原型を保っています。
横浜高速鉄道が保有する車両は基本的に東急電鉄の車両をベースとしていますが、この座席の例一つとっても、本家たる東急車では見られなくなった仕様が残りがちなのが興味深いところです。読者の皆さまにおかれましては、Y517Fに遭遇した際はぜひ座り心地に注目していただきたく存じます。
5000系列座席カウンター | 12 |
5000系列座席カウンター(Y500系含む) | 14+1 |
E231系(Sバネ入)タイプ・改
幅・高さ(㎜) | |
座席幅 | 450 |
座面高さ | 430(推定) |
座席奥行 | 510(推定) |
(4・)5・6次車
(現・サハ5418・)5108-5114F既存車※画像はクッション・背ずりモケット仕様変更後
さっきの写真と何が違うの?と思われた方、ぜひ車端部にご注目くださいませ。
ご覧の通り、座席奥行が縮まっているのです。また、心なしか背ずりの角度がより立っているようにも見えます。これは座席間距離(≒扉間の立席スペース)を増やして、田園都市線のより激しい混雑に耐えうるためのものだと考えております。同時期には6ドア車も並行して導入が進んでいたのも相まって、当時の東急が田園都市線の混雑緩和に全力を尽くしていたというのが垣間見えます。例によって、このグループも全車のクッション・モケットが更新され、原型を留めていません。
2024年9月現在、5112Fと5114Fがx020系列風モケットとなっています。
5000系列座席カウンター | 12+3 |
5000系列座席カウンター(Y500系含む) | 15+3 |
E233系タイプ
幅・高さ(㎜) | |
座席幅4 | 460 |
座面高さ | 430 |
座席奥行 | 550(推定) |
7次車・2010ー2013,2021-2022年製造車・元(新)6000系車
5188-5190F既存車※画像はクッション・背ずりモケット仕様変更後
5170-5171F(サハ除く)・5172F(サハ5472除く)・5174F・5175F・5176F(サハ5576除く)・4101-4104F(デハ4600形除く)・4105-4109F・4111F(デハ4611・サハ4711除く)・4115F(L/C座席車除く)
デハ5481ー5488・サハ5581-5590
デハ5489・デハ5490
こちらのグループを解説するにあたり、2007年から2018年にかけ池上線・東急多摩川線に導入された、新7000系の存在を抜きにすることはできません。新7000系は、5000系列をベースとした機器類や車体、内装となっています。ただし内装に関しては、同時期に製造されていたE233系の影響を大きく受けたように見受けられる場所が多々あります。それは座席に関しても例外ではなく、まず座席幅が450mmから460mmへ広がったほか(ロングシート部に限る)、座席形状やクッション性が改善されています。一方、E233系では420mmだった座面高さが430mmのまま据え置かれたのは、東急独自の方針といえるでしょう5。以上の仕様を5000系列に逆輸入したのがこれらのグループです。
また5080系増結車の座席については、これまでの「新製車はハイバックシートを装備する」という傾向を打ち破ってこちらのタイプに先祖返りしたことで、東急電車ファンを大いに沸かせました。
「新系列座席」の決定版とも言えるE233系初出の座席のデッドコピーを載せているだけあって、5000系列はおろか、東急随一の座り心地のよさを誇っていると、個人的には感じます。
2024年7月現在、5080系5188-5190F既存車・5050系4000番台4101-4103F(デハ4600形はまた別種類)の座席クッション・モケットが更新されて原型をとどめないものの、それ以外の編成・車両にはまだ手が加わっておりません。原型内装の記録はお早めにどうぞ。
5000系列座席カウンター | 15+6 |
5000系列座席カウンター(Y500系含む) | 18+6 |
E233系タイプ・改
幅・高さ(㎜) | |
座席幅 | 450(推定) |
座面高さ | 430(推定) |
座席奥行 | 510(推定) |
7・8次車
当初5115-5122Fとして製造された車両
先述の「E231系(Sバネ入)タイプ・改」に引き続き、座席幅を450mmのまま据え置き、座面奥行を縮めたタイプです。座席奥行の違いに加えて、袖仕切りと扉横の柱材との隙間(≒扉横の立席スペース)の違いも比較画像からおわかりいただけたかと存じます。
ところで「ここまで仕様が違うなら座り心地も違うのでは?」と思われた方は鋭いと思います。実際両者で座り心地は別物であり、この「E233系タイプ・改」のほうは背ずりの張り出し位置(ランバーサポートとも言います)が高めにセッティングされており、私の身体(173cm・標準体型)にとっては思わぬところに張り出しが来る印象を受けます。後述する座席クッション・モケット更新の際は張り出しがさらに増えた節があるように感じており、正直褒められた座り心地ではありません。
2024年8月現在、5050系4104Fに組み込まれているこのグループ由来の単独電動車、デハ4604を除いて座席クッション・モケットが更新されており原型を留めません。
5000系列座席カウンター | 21+2 |
5000系列座席カウンター(Y500系含む) | 24+2 |
余談③一見同じ寸法でも・・・・・・
そして「寸法が「E231系(Sバネ入)タイプ・改」と同じなのだから、全く同じ見た目や座り心地になるのでは?」と思われた方も鋭いと思います。ただし画像を並べてみた限りでは、そうではないようです。E231系タイプでは座ぶとんが先端に向かうにつれて前傾するようになっていますが、E233系タイプではそのようなことはありません。これはフレーム構造の変更に由来するものと個人的には考えていますが、真相やいかに。
またカタログスペックと実際のスペックの乖離が珍しいことではないように、数値自体が同じでも体感が異なることは座席に対しても起こり得ます。この場合、根本の座面の高さがより高い(とされる)E231系タイプのほうが、座面がより高いと感じるかもしれせまん。
ではここで、座面高さの定義をおさらいしておきます。
床面から座面先端の上辺までの高さを測る
この中の“座面先端”という文言がミソで、今回のように座面先端より根本のほうが高い場合などでは、必ずしも正確に座席の実情を反映しているとは言えない点に注意しなければなりません。
ハイバックタイプ
幅・高さ(㎜) | |
座席幅 | 460(推定) |
座面高さ | 430(推定) |
座席奥行 | 550(推定) |
2013年製造車・2019年製造車
4110F(サハ4510・サハ4710)
5178F・4111F(デハ4611・サハ4711)
4110Fはその生い立ちから他の5050系4000番台とは一線を画した内外装をまとっているのが特徴であり、また当編成の内装の仕様については、以降製造された車両にも引き継がれているものがあります。4110Fで採用されたハイバックシートはそれの最たる例でしょう。
座席寸法は基本的に先述の「E233系タイプ・改」と変化がないうえ、座面クッションにおいてはそのタイプと取り付け互換性があるものと考えています。そんな座面とはうって変わって、背ずりは上方に延長されたのが目を引きます。これは単に座り心地向上を狙ったのみならず、加減速の際に身体がねじれるのを軽減するためだといいます6。また10mmほど座面が厚くなったらしいのですが、比較対象の記載がないため参考程度に留めておくべきでしょう7。
5178Fは、元住吉駅列車衝突事故で発生した事故廃車の補填用として2020年にデビューしました。東急5000系列の編成単位の増備は、この5178Fをもって終了しています。
後述する2015年-2017年製造車との違いは、51席/1両のうち過半数の27席に、ヘッドレストが装備されているかどうか程度の違いしかありません。なお、このグループは全車が座席に関しては原型を留めています。
5000系列座席カウンター | 23+4 |
5000系列座席カウンター(Y500系含む) | 26+4 |
余談④x020系列
幅・高さ(㎜) | |
座席幅9 | 460 |
座面高さ | 430 |
座席奥行 | 510 |
2020系(サハ2430-2450・サハ2530-2550・デハ2830-2850除く)・6020系(デハ6320形除く)・3020系
2020系(サハ2430-2450・サハ2530-2550・デハ2830-2850)
2018年・2019年に営業運転を開始した東急における最新系列x020系列を、余談④としてご紹介します。5000系列とは異なり線区ごとに内装のカラーコードの変更を行わなくなったほか、ハイバックタイプの背ずりが標準となったことや座席奥行のデフォルトが510mmとなったこと10(5000系列のハイバックタイプは全車が550mmであり、座り心地が両者で異なっている)が特筆すべき点です。
また、2130F以降の4、5、8号車は6人掛けとしたことで扉横の空間を捻出した仕様となっていて、混雑対策の一助となっています。
ハイバックタイプ(ヘッドレスト付き)
幅・高さ(㎜) | |
座席幅 | 460(推定) |
座面高さ | 430(推定) |
座席奥行 | 550(推定) |
2015-2017年製造車
5000系6ドア車代替車・5177F
長津田検車区に所属している5000系の大半の編成に組み込まれていた6ドア車を、ホームドア対応のため置き換えたのはこのグループです。また、5177Fは先述の5178Fと同じく、元住吉駅列車衝突事故で発生した事故廃車の補填用として登場したものです。ところで、わざわざ田園都市線向けに座席寸法を変えていた東急が、他路線と同じ寸法の座席を採用するように回帰したのは面白いですね。
先述の4110Fにおいて半ば試験的な意味合いで採用したハイバックシートを本格採用した形ですが、それに加えて一部の座席(27席/1両あたり51席)にヘッドレストを装備した点が特徴的11です。ロングシートにヘッドレストが設けられた事例は非常に珍しいです。ただし後続のx020系列や5178F、4111F用増結車ではヘッドレストが省略されました。
先述の「ハイバックタイプ」の背ずりと座ぶとんと、今回のそれは同一のものです。しかしヘッドレストは、たとえ分離していようが座席を構成するものとしてとらえられるため、今回の記事ではそれぞれを別のものとしてカウントする点をご理解くださいませ。
5000系列座席カウンター | 27+1 |
5000系列座席カウンター(Y500系含む) | 30+1 |
変わり種の座席たち
6ドア車
幅・高さ(㎜) | |
座席幅12 | 450 |
座面高さ | 430 |
座席奥行 | 550(座面430+背ずり120) |
田園都市線の5000系に6ドア車がかつて組み込まれていたのは有名なお話ですし、その顛末を解説されている方はたくさんいらっしゃるので、当記事では6ドア車の座席にフォーカスしていきます。
6ドア車の座席は折りたたみ式ではあったものの、座席寸法に関しては通常の4扉車と遜色ない数値です。編成によっては6ドア車のほうが座席奥行が広いということもあり、逆転現象が起きていたというのが面白いポイントです。末期は4扉車側の座席クッション・モケット更新に合わせて、モケットを更新した編成も現れました。
5000系列座席カウンター | 28+2 |
5000系列座席カウンター(Y500系含む) | 31+2 |
5176Fサハ5576
幅・高さ(㎜) | |
座席幅13 | 460 |
座面高さ | 420(沈み込み量考慮あり) |
座席奥行 | 510 |
総合車両製作所が誇る鉄道車両ブランド・sustinaの第一号として落成し、5176Fを組成するうちの1両たるサハ5576ですが、座席に関しても他の車両と仕様が異なっています。
座席奥行はなぜか510mmで、製造当初から5050系として製造された車両としては唯一の形態です。これまでかたくなに430mmの値を堅持してきたように見受けられる座面高さも、この車両ではあっさり420mmとなっているのが実に面白いポイントです14。クッションも全くの別物が採用されているのか座り心地も独特のものですが、個人的には在来車(「E233系タイプ」)のほうが好みな座り心地です。
5000系列座席カウンター | 30+1 |
5000系列座席カウンター(Y500系含む) | 33+1 |
5050系Q SEAT車
幅・高さ(㎜) | |
座席幅15 | 460 |
座面高さ | 410 |
座席奥行 | 698(座面430) |
車端部 | 幅・高さ(㎜) |
座席幅16 | 505 |
座面高さ | 420 |
座席奥行 | 550 |
いよいよ最後のグループとなりました。現状の東急5000系列の最新形態にして、唯一のL/C座席車となっています。座席指定車両(Q SEAT)の運用とその送り込みにおいてのみクロスシートモードが使用され、それ以外の運用においてはロングシートモードが使用されるのは関東私鉄他社と似たような様相です。
ちなみに東横線に先立ってQ SEATサービスが開始された大井町線で使用されている、6020系・6000系Q SEAT車の座席と比較すると、細部で若干の改良が行われているとのことです17。ただし、見た目からはその違いは分からないようです。
L/C座席・車端部ロングシートともに各所で寸法が変更されています。扉間のL/C座席に関しては座面高さや座席奥行が、長時間の着席を視野に入れたセッティングに変更されています。実際に座ってみると、たとえロングシートモード時であってもゆったり感は段違いだと感じられます。
もう一方の車端部の座席ですが、座面高さこそ下げられたものの座席奥行は据え置かれています。Q SEATサービス時には車端部にも座席番号が付与される関係で、背ずりが高めかつ分厚めのセッティングになっています。したがって、座面自体の奥行はむしろ一般の座席(座席奥行550mm・座面奥行430mm)よりも狭くなっている可能性があり、あまり長時間着席には向いていないと言わざるを得ません。
共通項として、Q SEATサービスが行われる際に乗客が使用可能となるコンセント(AC100V, 60Hz, 1A)が設置されていること、L/C座席に関しては、クロスシートモード時のみ使用できるドリンクホルダーが設置されています。
なお今回ご紹介した5050系Q SEAT車の座席の各種寸法ですが、ほぼ同形式の座席を載せていて、かつ車体寸法もほぼ同一である京王5000系(二代)の数値を掲載しています。また、L/C座席と車端部ロングシートとでそれぞれ別種類としてカウントいたしました。どうぞご容赦くださいませ。
5000系列座席カウンター | 31+2 |
5000系列座席カウンター(Y500系含む) | 34+2 |
さて、結果発表へとまいりましょう。
東急5000系列の座席は〇〇種類ある!
結果発表へすすむ(CLICK HERE!)
ここまでお読みくださり、大変おつかれさまでした。
- 3000系タイプ
- E231系(Sバネ入)タイプ
- E231系(Sバネ入)タイプ・改
- E233系タイプ
- E233系タイプ・改
- ハイバックタイプ
- ハイバックタイプ(ヘッドレスト付き)
- 6ドア車
- 5176Fサハ5576
- 5050系Q SEAT車
座席形態(座り心地)は以上の10種類、モケットのバリエーションも含めれば実に33種類(Y500系も含めると36種類)あることが分かりました。
おわりに
『【果てしない沼】東急5000系列の座席は何種類あるの?』はいかがでしたでしょうか。構想にかかった時間は3秒であるのに対して、記事作成にはなんだかんだで2か月もかかってしまいました。記事を書き終わったはいいものの、今度は参考文献や資料が散逸してしまい、それらの記載が非常に億劫に感じるようになってしまいました。もうちょっとやる気を出して最後まで書き上げてしまってくださいよ。
これまでご覧いただいた通り、東急5000系列は製造期間の長さゆえに非常に多くの形態差を有しています。今回は座席を題材としましたが、今後も天井や荷棚などをネタに、記事を皆さんにお届けできればうれしく存じます。
5050系がデビューしたとき、画一的な仕様と編成、8000系を引退に追い込む系列として趣味的な興味は正直薄くなると感じていた。そして今、これまでの動きを概観すると当時想像もしなかった変化とバリエーション展開に気づかされる。東横線だけで400両に達する勢いは、かつての8500系に迫るもので、誕生以来20年にして増備が続くことも、なにか近いものを感じる。
金子智治(2023). 「東急東横線の車両2023」5050系 時系列で追う導入の経緯と趣味的興味, 鉄道ピクトリアル, 電気車研究会 73巻4号(通算1010号), p112
この記事を作成するにあたって大いに参考にさせていただいた記事の締めくくりを、拙著『【果てしない沼】東急5000系列の座席は何種類あるの?』の締めくくりとして引用いたします。私は、この一文章にはウンウンとうなづくほかありませんでした。懐古的信条をお持ちの方が多いとされる鉄道ファンらにとって、親しまれてきた旧型車両を置き換える新型車両は、いつの時代も嫌われ役を買って出なければなりませんでした。
特にこの5000系列に関してはこれまでの東急の車両とは大きく毛色が異なる部分が少なからずありました。特に外観・車内はJR東日本の車とそっくりであったことから、当時のファンは多少なりとも落胆するところがあったのではないかと容易に想像できます。
しかしいざ蓋を開けてみると、内装のベースがE231系からE233系へと変更され、しまいには独自仕様のものへ変化していったり、編成組み換えによって出自の異なる車が平気で混在するようになったり、増結によって編成内での車齢差が最大で19年半(5181F)に達する事態となりと、書けばキリがないほどです。
また走行機器類やドアエンジン、座席や荷棚、空調などでは本家たるE231系とは全くの別物となっていることも、私含めた多くのファンの獲得につながっていると考えます。「E231系のようでE231系ではない車両」「知れば知るほど深みにハマる、いわばスルメ曲の鉄道車両版」これこそが、東急5000系列ではないでしょうか。
どうか彼らを「JRのコピー車両」などと形容する前に、彼らも面白さや奥深さに気づいていただけたなら、私としてもうれしい限りであります。
末筆ながら、今後の東急5000系列の末長い活躍をお祈りしつつ、この記事を締めくくります。
参考文献
- 今野雅夫(2003). 東京急行電鉄5000系列の概要, 鉄道ピクトリアル, 電気車研究会 53巻12号(通算740号), p42,46,47 ↩︎
- 上口英一(2003). 横浜高速鉄道Y500系, 鉄道ピクトリアル, 電気車研究会 53巻12号(通算740号), p56,57 ↩︎
- 神尾 純一. 東京急行電鉄東横線用5000系(5050系)デビュー. JREA. 47(5) 2004.5,p55. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I6934088 ↩︎
- 東急車輛製造株式会社車両事業部設計部. 東京急行電鉄 6000系 大井町線. Tokyu car technical review = 東急車輛技報 / 技報編集委員会 編. (58) 2008.12,p.76~81. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I9754090
望月 利明. 東京急行電鉄 新型通勤電車6000系の概要. 鉄道車両と技術 = Rolling stock & technology. 14(4) (通号 143) 2008.7,p.29~36. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I9623666 ↩︎ - 東急車輛製造株式会社車両事業部設計部. 東京急行電鉄 7000系 池上線・東急多摩川線. Tokyu car technical review = 東急車輛技報 / 技報編集委員会 編. (58) 2008.12,p.70~75. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I9754082 ↩︎
- 座ってもイライラ…通勤電車“座席改革”の現在. 読売新聞. 2019-01-07, 読売新聞オンライン. https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20181227-OYT8T50004/2/, (参照 2024-07-12). ↩︎
- 生産本部技術部. 東急電鉄5050系4000番台Shibuya Hikarie号. 総合車両製作所技報 = J-TREC technical review / 技報編集委員会 編. 2:2013.12,p.95. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I025104970 ↩︎
- 生産本部技術部. 東急電鉄5050系4000番台Shibuya Hikarie号. 総合車両製作所技報 = J-TREC technical review / 技報編集委員会 編. 2:2013.12,p.95. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I025104970 ↩︎
- 根本 直ほか. 東急電鉄2020系電車,3020系電車,6020系電車におけるsustinaコンセプトの適用. 総合車両製作所技報 = J-TREC technical review / 技報編集委員会 編. 7:2020.10,p.55. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I030775824
車両技術(256), 一般社団法人 日本鉄道車輌工業会, p115ほか,p118
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000010684-i5548996 ↩︎ - 根本 直ほか. 東急電鉄2020系電車,3020系電車,6020系電車におけるsustinaコンセプトの適用. 総合車両製作所技報 = J-TREC technical review / 技報編集委員会 編. 7:2020.10,p.55. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I030775824 ↩︎
- 生産本部技術部. 東急電鉄 5000系6扉車置換え4扉車. 総合車両製作所技報 = J-TREC technical review / 技報編集委員会 編. 6:2017.12,p.107. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I028828814 ↩︎
- 望月 利明. 東京急行電鉄 田園都市線5000系6ドア車両導入について. JREA. 48(9) 2005.9,p.31116(p.42). https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I7462412 ↩︎
- 東京急行電鉄 5050系5576号車 次世代ステンレス車両“sustina”, 車両技術(246), p16,19 一般社団法人 日本鉄道車輌工業会 https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000010684-i5547553 ↩︎
- 東京急行電鉄 5050系5576号車 次世代ステンレス車両“sustina”, 車両技術(246), p16,19 一般社団法人 日本鉄道車輌工業会 https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000010684-i5547553 ↩︎
- 佐藤 仁ほか. 京王電鉄5000系電車におけるsustinaコンセプトの適用. 総合車両製作所技報 = J-TREC technical review / 技報編集委員会 編. 7:2020.10,p.37. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I030775771
大川 晶. 車両紹介 新形式車両5000系の概要について. Subway = 日本地下鉄協会報. (215):2017.11,p.56,57, 図巻末1p. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I028670297
車両技術(255), 一般社団法人 日本鉄道車輌工業会, p66ほか, p69 https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I028670297
↩︎ - 佐藤 仁ほか. 京王電鉄5000系電車におけるsustinaコンセプトの適用. 総合車両製作所技報 = J-TREC technical review / 技報編集委員会 編. 7:2020.10,p.37. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I030775771
大川 晶. 車両紹介 新形式車両5000系の概要について. Subway = 日本地下鉄協会報. (215):2017.11,p.56,57, 図巻末1p. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I028670297
車両技術(255), 一般社団法人 日本鉄道車輌工業会, p66ほか, p69 https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I028670297 ↩︎ - 編集部. 東急電鉄5050系 東横線Q SEAT車, 鉄道ピクトリアル, 電気車研究会, 72巻10号(通算1003号), p108, https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I032331804 ↩︎
当記事は、筆者による個人研究に基づくものです。
更新履歴
- 2024-08-18 CCライセンスの付与
- 2024-08-19 参考文献欄において、参照ページの再確認・修正
- 2024-08-20 軽微な修正
- 2024-08-28 「5000系列の定義」の追加
- 2024-09-15 5114Fの座席モケットがx020系列風に変化したのを反映・ハイバックタイプ(ヘッドレスト付き)の参考画像の差し替え
- 2024-09-16 「座席に関する寸法各種」の一部文面変更・軽微な修正
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コメント
さっぱりわけがわからないよ(最大級の褒め言葉)
種類数を確実なものとするために、できれば「5000系列」の定義を頂けるとありがたいです。私は「6000系と3000増結車を含み7000系を除く」派ですが異教徒であることは認めます
この度はご覧いただきありがとうございました^_^
今回の記事における「5000系列」の定義ですが、5000系・5050系(4000番台含む)・5080系(元6000系車含む)までを5000系列としました。
なお記事内では、7次車以降の車両の座席寸法として6000系の寸法を引用しています。これは(調べられた範囲では)7次車の寸法図が一般に出回っていないため、7次車と仕様が似通っている6000系の寸法をもって代用したという経緯があっての措置です。