はじめに
はじめまして。17901と申します。

いきなりで恐縮ですが、「東横線 Qシート」と検索窓に打ち込んでみましょう。サジェストとして、それらのワードに続いて「失敗」とか「いらない」といったようなどこか不穏なワードが出てくるものと思います。
実際のところ、東横線のQ SEATと同様のサービスを東急の他路線に先駆けて展開している大井町線Q SEATでは、乗車率が好調であるとよく耳にします。特に大井町駅を18時台に発車する181・183号では、東横線では下り一番列車でしか達成できなかったと噂される座席指定券の完売が常態化しているとも聞きます。
過去の利用促進キャンペーンと制度改定を振り返ってみよう
以上に挙げた通り一定の成功を収めている大井町線のQ SEATとは対照的に、なんとも鳴かず飛ばずな空気感を漂わせている東横線のQ SEAT。東急にとってもこれはマズいと考えたのか、今日に至るまで複数回の利用促進キャンペーンを実施してきたり、利便性向上をにらんで細かく制度が改定されてきました。
以下に、東横線のQ SEATに対するそれらの履歴を表形式で示しましたので、ご覧ください。
実施年 | 開始日 | 終了日 | 種別 | 内容 | 備考 | リンク |
2023 | 11/13(月) | 12/29(金) | キャンペーン | 座席指定料金 | 1 | |
2024 | 1/9(火) | 1/31(水) | キャンペーン | 座席指定料金 | 2 | |
2024 | 2/5(月) | 2/29(木) | キャンペーン | ドリンク配布 | ・ドリンク配布は渋谷駅/中目黒駅からの乗車に限る ・もらえる飲料は曜日ごとに異なっていた | 3 |
2024 | 3/1(金) | 3/29(金) | キャンペーン | 抽選で無料クーポン配布 | 東急線アプリユーザー限定 | 4 |
2024 | 4/1(月) | 4/30(火) | キャンペーン | 座席指定料金 | ・菊名/横浜/横浜以遠で降車の場合は500円 | 5 |
2024 | 4/8(月) | 5/2(木) | キャンペーン | 抽選で無料クーポン配布 | 東急線アプリユーザー限定 | 6 |
2024 | 5/7(火) | ~継続中 | 制度改定 | 183号&191号設定(1日7本の運転へ) | 同時に5号車のみの営業へ変更(4号車はロングシートのまま) | 7 |
2024 | 12/17(火) | ~継続中 | 制度改定 | 座席指定券を車内および一部駅ホーム上で発券、飛び乗り可能へ | ・発券は空席がある場合に限る ・ホーム上での発券は渋谷駅/中目黒駅に限る | 8 |
以上のうち「座席指定料金半額キャンペーン」は、ある意味適正な価格設定へと変わったことなどや、「半額」というワードの強さからある程度の認知を得られたのではないかと私は考えています。

一方で「渋谷駅・中目黒駅から乗車するQ SEAT利用者に対するドリンク配布」に対しては、やり方として興味深い利用促進策だと思う反面、ユーザー獲得に四苦八苦しているのを浮き彫りにしているようにも見えます。
東急側の利用者獲得のためならなんでもするが、いまいち効果として顕在化しないがゆえの焦り、皆さまは感じていただけますでしょうか。
ところで、上記のドリンク配布キャンペーンの宣伝ポスターの内容を抜粋してみると「座席にドリンクホルダー付き!」とあります。しかし私は、当時からこのうたい文句はあまり適切ではないように感じてきました。1両あたり最大45席が供給されるQ SEATですが、ドリンクホルダーを使用できるのはそのうちの24席のみで、実に半数近くの座席がドリンクホルダーにアクセスできないからです。
またその当時から、駅窓口で座席指定券を購入する場合にはシートマップを参照できず、係員によって一意の座席が割り当てられる方式となっておりました。したがって特に要望を伝えない限り、そのドリンクホルダーがない座席に当たってしまうこともありました。こらそこ、当時はガラガラだったから座席の変更は自由に効いたんでしょとか言わないの
そんな状況下での「座席にドリンクホルダー付き!」といううたい文句は、今になっても疑問が残るばかりです。
“究極の”利用促進促進キャンペーン、爆誕す
昨年(2024年)12月の制度改定以来、約半年間音沙汰のなかった東横線Q SEAT。そんな中、今年(2024年)7月11日、我々のもとに衝撃的なニュースが舞い込んできました。
実施年 | 開始日 | 終了日 | 種別 | 内容 | 備考 | リンク |
2025 | 7/22(火) | ~継続中 | 制度改定 | 上りにもQ SEATを設定 (182号~204号の1日6本) | みなとみらい線内でのフリー区間の設定なし | 9 |
従前、元町・中華街駅に到着したQ SEAT車両は一般車両となって折り返していたところ、当記事公開のちょうど一か月前の7月22日より、上りのQ SEATとして折り返すこととなりました。これにより、数々の鉄道系YouTuberの皆さまが取り上げてこられた(座席形態的な意味での)乗り得な急行は消滅の憂き目に遭うことに。
そしてこれに際して、私は以下のような予想風の感想を残していましたので、ご査収ください。
みなとみらい線内から(横浜駅で多少乗客の入れ替わりがあるとはいえ)普通に車内が混み始めるのが事実なので…
(中略)
日本大通りの官公庁街、馬車道&みなとみらいのオフィス街から横浜以北に乗り通す需要はあると思います
加えて、上り1番列車は、私のようなオタクの皆さまも多く集まられるだろうと予想しておりましたが、これらの予想を見事的中できたでしょうか。
前置きが思いのほか長くなってしまいましたが、次章からレポートを書き連ねつつ、それらの答え合わせも行っていきたく思います。どうぞよろしくお願いいたします。
座席指定券を見てみよう


乗車前に、まずはQシートチケットレスサービスで購入した座席指定券を見てみましょう。
従来の券面から特にデザインは変わっていませんが、元町・中華街駅など、みなとみらい線の停車駅から乗車する場合、システム的には「横浜駅から乗車」という扱いになっているようです。今回のような場合、実際に乗車する駅と券面に記載の乗車駅が異なりますから、ぜひ注意が必要です。
これでは不親切だと東急側が考えたのか、座席指定券の上部や購入完了ページなどで、しきりに以下のような「発車時刻に関するご案内」がなされています。

入線前

元町・中華街駅からこんばんは。
元町・中華街駅18:21初の急行渋谷行きが、その日の最も早い東横線・みなとみらい線でのQ SEATが営業される列車となります。タイトル通り今日が営業初日ですから、早めにホームに降りて、ホーム上に何か変化が起きていないか確かめてみることとしましょう。

ホームに降りてみると、さっそく変化に気がついてしまいました。Q SEATの案内がホームドア筐体の側面に追加されています。これまでは下り(元町・中華街行き)のみの営業であった上、みなとみらい線内では営業を行ってきませんでしたから、このような案内をみなとみらい線内で見られるのは初めてのことです。

発車標については、S-Trainとは異なり特にQ SEATの存在をほのめかすような表示はなされなかったほか、自動の接近放送でもQ SEATの案内はなされませんでした。駅係員が都度肉声で案内する形となっていたため、今後の改善に期待したいところです。

上り一番列車が入線!

18:17ごろに元町・中華街止まりの急行が2番線に入線、あわただしく折り返しの作業が始まりました。それの少し前から、同業者と思しきスマートフォン、カメラを抱えた方々が集まりだし、ささやかなる盛り上がりを見せました。
なお、上り一番列車に充当されたのは4113Fでした。編成中のQ SEAT車たるサハ4413-デハ4513は2023年2月末の入籍で、東急5000系列の中で最も若い車両です。10


18:19ごろに座席形態がロングシート→クロスシートに変わり、乗客を受けいれる準備が整いました。
ちなみにこの日に同乗されていた東急の社員さんは4名で、乗車・降車ドアである1番ドア(5号車の最も上り方)付近に基本的にはおられました。
上り一番列車に乗車!渋谷まではあっという間でした
内装紹介

扉間のL/C座席は当然ながらクロスシートモードとなりましたが、座席が渋谷方に向いているため新鮮に感じられました。


L/C座席の座面幅は460mm(肘掛けを含めると専有面積はさらに増える)、座面高さは410mm、座面奥行は430mm、車端部のロングシートの座面幅は505mm、座面高さは420mm、座席奥行は550mm11(いずれもほぼ同一の車体寸法・座席の京王5000系(2代)の数値を引用しています)とされ、車端部のロングシートの奥行を除けばいずれも一般車の座席よりも数値上においてもゆったりしたものとなっています。なお京王5000系の5737F以降で見られる、リクライニングできる仕様の座席ではありません。
付帯設備として、全座席が使用できるものは電源コンセント(AC100V@60Hz,最大1A)とフリーWi-Fiサービス、一部座席が利用できるものはドリンクホルダーが挙がります。



最後に側窓を見てみましょう。
一般車とは違ってうっすらとくぼみが設けられており、一応は飲み物などの小物類を置けるように配慮されてはいます。しかし、JR東日本のセミクロスシート車などで見られるような下部がせり出す仕様にはなっておらず、中途半端に感じられます。L/C座席との兼ね合いによって生まれた仕様でしょうか。
また、日除けは一般車と同様に存在しません。Q SEAT車がクロスシートで運転されるのは、現状夕方~夜にかけてのみですから、そういう意味ではあまり問題はないのでしょう。

ちなみに私が指定した座席は15Eで、乗車ドアから最も後方に位置する車端のロングシートです。一般車と異なる点としては、コンセントがある点や背ずりが頭部のあたりまで高くなっている点くらいしか挙がりません。しかし座席指定制の列車ゆえ基本的に立席利用がないのを逆手にとって、脚を前方に投げ出すことができるのは、L/C座席にはない大きなメリットと言えるでしょう。
私の目の前にはついに乗客はやってきませんでしたので、ゆったり座りながら持参した不二家のネクターを味わうことができました。

車内の様子
一番列車にしては少ない……少なくない?同業者効果でそれなりに座席が埋まる予想でしたが、完全に読みが外れましたね
18:30に横浜駅を発車した時点では、シートマップ上で17名分の席が埋まっていましたが、実際はそれより2~3名少ない乗車でした。

手元のメモによると、菊名と日吉で各1名がさらに乗車、武蔵小杉と多摩川では乗降なし、田園調布で1名が降車とあるため、上り一番列車の乗車率が最も高くなったのは日吉~田園調布間と推定されました。その後、自由が丘と中目黒で若干名が降車しました。
19:02、定刻通りに渋谷駅に到着し、すぐに折り返し作業が始まりました。急行元町・中華街行き(191号)の発車時刻は19:05、たった3分の猶予しかありませんので、元町・中華街駅と同様慌ただしく作業が進みます。
折り返しのQ SEAT車には、私が乗ってきた元町・中華街駅発の列車とは対照的に乗客がぞろぞろと乗り込んでいきました。下りQ SEATの利用が定着しつつある証拠であれば、沿線民である私としても嬉しい限りです。
そしてこれは体感上の話ではありますが、やはり一番列車とだけあって元町・中華街から渋谷を乗り通す方が最も多かったようでした。

こちらは、私がおととし(2023年)8月10日に東横線Q SEATの下り一番列車の車内の様子を撮影したものです。
今回の上り一番列車とは打って変わって、実に車内は盛り上がっていたのです。
この時と比較して、今回の上り一番列車は圧倒的に注目度が低かったように感じられました。あちらは5:00の座席指定券の発売開始からすぐに全90席(当時)が完売しました(そんな中、私は運よく下り一番列車の座席指定券を購入することができました)が、今回は半分の45席になっても、当日12時ごろの時点で私のほかにたった5席しか埋まっていなかったのがその根拠です。この点からも、私の予想に大幅に反する形で厳しいスタートとなったと推察します。
車内にてフォロワー様とお会いしました

上り一番列車にて、私と長らくFFの関係でいらっしゃる雲波乃凡(@kumoha_noboN)さんと初めてお会いしました!
私と同じく5:00の座席指定券の発売開始時刻に合わせて準備をされていた方で、私以上に気合いを入れられていたように感じられました。
渋谷からの折り返しの電車内では、大変興味深いお話(氏が積極的に撮影されているステレオ写真etc)をいくつも聞くことができました。改めて、貴重な機会にご一緒できたことをたいへんうれしく思います。また機会がありましたら、この場をお借りしてどうぞよろしくお願いしたく存じます。
最後に(お願い)
いつもFreedomTrain/ふりとれ、並びに私17901の記事ををご覧くださり、まことにありがとうございます。
前回の記事投稿から実に半年以上も期間が空いてしまい、記事を心待ちにされている方にはたいへん申し訳ございませんでした。今後搭乗予定のわが地元路線のヌシ、東急5000系列のリニューアル車、それからこれまでに撮りだめたネタから記事を執筆する予定でおります。ネタは豊富にありますので、あとは私の気力と体力、日程調整力にご期待いただきたく存じます。
ところで、当記事公開を皮切りに、鉄道車両の内装関連で取り上げてほしい情報の募集を開始いたしました。当記事のコメント欄、または私のTwitter(旧:X)アカウントをメンションする形でお寄せくださいませ。南関東、特に神奈川県内の車両についてであれば、比較的早急に対応できるものと考えております。
また毎度のお願いではございますが、記事に関するご質問、訂正のご依頼や苦情は、お気軽にコメント欄にお寄せいただきますようお願いいたします。こちらにつきましても、筆者のTwitter(X)アカウントをメンションする形式でも受け付けております。
参考文献・資料
一部を除き、URLを直貼りしておりますが、どうぞご了承くださいませ。
- https://www.tokyu.co.jp/company/information/detail/52876.html
↩︎ - https://www.tokyu.co.jp/company/information/detail/53096.html ↩︎
- https://www.tokyu.co.jp/company/information/detail/53241.html ↩︎
- https://www.tokyu.co.jp/company/information/detail/53341.html ↩︎
- https://www.tokyu.co.jp/company/information/detail/53551.html ↩︎
- https://www.tokyu.co.jp/company/information/detail/53641.html ↩︎
- https://www.tokyu.co.jp/company/information/detail/53741.html ↩︎
- https://www.tokyu.co.jp/company/information/detail/55106.html ↩︎
- https://www.tokyu.co.jp/company/information/detail/58431.html ↩︎
- https://train.chokopy.net/carlists/cars5000-2nd/fiscalyear/2022/1 ↩︎
- 大川 晶. 車両紹介 新形式車両5000系の概要について. Subway = 日本地下鉄協会報. (215):2017.11,p.55-59,図巻末1p. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I028670297
車両技術 (通号255) 2018年3月, 日本鉄道車輌工業会, 2018. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000010684-i5548857 ↩︎
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【乗車レポ】東急東横線Q SEAT上り一番列車に乗ってきました © 2025 by 17901 is licensed under CC BY-ND 4.0

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はじめまして。17901と申します。ロングシートと通勤・近郊型電車が大好物です。
鉄道車両の内装(座席・照明・荷棚)をネタとしています。鉄道雑誌でいうところの鉄道ピクトリアルのような、深掘りした記事を目指しています。
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