[風前の灯]台湾を走る客車急行”莒光號”の全運用について述べる

お久しぶりです。ひすいです。
受験のため少々お休みしていましたが、ぼちぼち執筆を再開しようかなと思います。
どうも解説文を書く際はレポートみたいな文語体の方がしっくりくるので、以降は口調が変わりますがご容赦を。
今回は、台湾を走る客車急行、”莒光號”について、”すべての列車”について解説してみます。
どうぞお付き合いくださいませ。歡迎搭乘。

スポンサーリンク

はじめに

台湾版鉄道の日(6月9日)からほとぼりが冷めるにちょうどいい時期に、台湾では毎年恒例のダイヤ改正が行われる。
今年のダイヤ改正は2025年6月26日であった。
台湾鉄道が国営企業化して2回目のダイヤ改正であったが、今回はそれに合わせて、台湾を走る現役の客車急行、”莒光號”について話そうと思う。

スポンサーリンク

莒光號のキホン

まずは歴史を以下に示そう。

  • 1970/2/3 台北~台中における新型急行車両として運行が開始される。運賃は普通列車の約3倍にあたる117元。
  • 1986年 冷房車の運行が開始。
  • 1995年 自動ドア、LED方向幕付きの車両の運行が開始。これまでは583系や12系と同形状の折り畳み型の手動ドア(自動戸閉装置なし)やサボを用いる車両であった。
  • 1996年 現在の主力種別である”自強號”の運行が開始。このころから莒光號の運行が徐々に減少する。
  • 2007~2012年 太魯閣(タロコ)/普悠瑪(プユマ)號の投入により、東側路線の運用が激減し、西部での運行がメインになる。
  • 2016/8/28~8/29 9/1のダイヤ改正に伴い、1979年より運行されていた西部地区の夜行列車が廃止される。
  • 2022/6/29 ダイヤ改正に伴い、手動ドア車両が引退。当日は総統乗車時や貸切列車のみ運行される展望客車が増結されたり、記念ボードやヘッドマークをつけて運行された。
  • 2022/10/31 旅行会社との契約の関係で、観光列車として毎日走っていた台北発台北行きの環状列車(後述する1/2次)が運休する。
  • 2023/1/19 上記の環状列車が新しい旅行会社と契約を結び、運行再開。
  • 2024/6/26 ダイヤ改正に伴い、東部での夜行列車が自強號に置き換わり、莒光號としての夜行列車が全廃。当該列車は唯一中部の山線(竹南~苗栗~豊原~台中~彰化)を走行していた列車でもあったため、同時に山線からも撤退することとなる。

莒光號の名前の由来であるが、蔣介石の訓示である四字熟語、「毋在忘”莒”」(昔の苦難を忘れず、国土を回復しなさいの意)「”光”復大陸」(共産党から中華民国を取り戻すの意)より来ている。

自強號の出てくる前までは一等車の扱いであり、車内に専属のアテンダントが配属され、無料のお茶や弁当が振る舞われた。今で言う所のグランクラス(A)に相当する。

車両は当初日本車輌や日立製作所のものを輸入したものであったが、途中より台湾の鉄工所である唐榮鐵工廠が製造を担当している。

台湾鉄道の運賃は列車種別によって変化し、特急券と乗車券は分かれていない。
2025/6/24より運賃値上げがあり、これまで1.75TWD/kmであったものが以下のように変化した。

  • 10.0~50.0km 2.61TWD/km
  • 50.1~100.0km 2.30TWD/km (12%割引)
  • 100.1~200.0km 2.17TWD/km (17%割引)
  • 200.1~300.0km 1.83TWD/km (30%割引)
  • 300.1km~    1.70TWD/km (35%割引)

となっている。
ちなみに、運賃計算についてだが、例えば350.0km区間の場合には350×1.70ではなく、(2.61×50)+(2.30×50)+(2.17×100)+(1.83×100)+(1.70×50)という計算式となる。

今回解説する列車は合計10列車とおまけの3列車である。最後までご覧いただければ幸いだ。
なお、oo次とは日本で言う所のoo号である。(例:莒光554次→急行莒光・554号)

554次

運行区間:潮州→台北→花蓮
営業キロ:606.2km
所用時間:11h55m
評定速度:44.66km/h
備  考:定期最長列車。荷物車連結。
主な時刻:

  • 潮州:12:58
  • 高雄:13:37
  • 新左營:13:48
  • 台南:14:29
  • 嘉義:15:22
  • 彰化:17:23
  • 新竹:19:22
  • 桃園:20:18
  • 台北:21:05
  • 宜蘭:23:08
  • 花蓮:0:53

莒光號の中では最長の列車。総乗車時間は脅威の11時間55分。
この列車は荷物列車が連結されており、郵便や小包の業務も兼ねているため、基本的に以降の708次までは運用が一巡するまで記載順に同一編成で運用される。
今の日本でこのような列車を今走らせたらとんでもない争奪戦になるかもしれないが、列車の遅さと相まって乗客はそこまで多くはない。かと言って高速バスよりは安いのと普通列車(區間車)よりは快適なので、ガラガラかと聞かれればそうでもない。
中部および北部から花蓮、台東方面へはこの列車と次の602次で輸送される。

602次

運行区間:花蓮→台東
営業キロ:150.9km
所用時間:2h54m
評定速度:52.03km/h
備  考:荷物車連結。
主な時刻:

  • 花蓮:6:53
  • 光復:7:35
  • 瑞穂:8:00
  • 玉里:8:22
  • 池上:8:57
  • 關山:9:11
  • 台東:9:47

554次の次の運用。花蓮で夜間停泊した後、そのまま台東に向かう運用。
花蓮県周辺では学生や通勤客の運用が見られる。次の653次のための送り込みを兼ねている。
玉里駅付近にある2連アーチ橋”玉里客城橋”を通る602次は撮り鉄の定番ネタとして知られる。
小さな町にも荷物を届けるため、停車駅が多い。また、台東線が単線であることや莒光號が客車列車であること、退避の都合上から、区間によっては區間車より遅い。

653次

運行区間:台東→台北→彰化
営業キロ:532.2km
所用時間:11h38m
評定速度:45.75km/h
備  考:荷物車連結
主な時刻:

  • 台東:11:22
  • 關山:12:12
  • 池上:12:38
  • 玉里:13:13
  • 瑞穂:13:34
  • 光復:14:07
  • 花蓮:15:13
  • 宜蘭:17:04
  • 台北:19:16
  • 桃園:20:05
  • 新竹:21:03
  • 彰化:23:00

653次の折り返し。東部地区から北部、中部方面に向かう。
走行距離、時間においては554次に次いで第2位になる。
この列車も荷物車を連結している都合上、評定速度が遅い。
宜蘭・台北方面から中部、南部方面に荷物を届ける場合にはこの列車と次の501次、727次と組み合わせて届けられる。

501次

運行区間:彰化→潮州
営業キロ:224.9km
所用時間:4h12分
評定速度:53.55km/h
備  考:荷物車連結
主な時刻:

  • 彰化:5:23
  • 嘉義:6:47
  • 台南:7:59
  • 新左營:8:47
  • 高雄:8:58
  • 潮州:9:35

653次の彰化での停泊明けの運用。西部地区を早朝から朝にかけて走行する列車。この列車にも荷物車が連結されている。
高雄北部の大湖、路竹はこの列車一本しか優等列車が止まらない。(昔はもっと止まっていたが、區間車や區間快車(快速)に置き換えられた。)

727次

運行区間:潮州→台東
営業キロ:123.4km
所用時間:2h55m
評定速度:42.31km/h
備  考:荷物車連結
主な時刻:

  • 潮州:11:55
  • 枋寮:12:29
  • 大武:13:24
  • 知本:14:34
  • 台東:14:50

実質的に501次からの通しの列車であるが、潮州にて荷物を取り扱う関係などから2時間ほど空き時間がある。
定期莒光號の中では評定速度が最も遅い。
この列車は南廻線の區間車のかわりも務めており、これまで區間車や普快車(※)しか止まらなかった3駅(加禄、内獅、枋山)にも停車しており、これら3駅にとっては初の停車となった。
(※普快車:非冷房の客車普通。SLぐんまとほぼ同じ形の旧客。2020年に定期運用より引退し現在は定期ツアーで運行。なんか匠の力であと10年くらい走らせるらしい。)
臺鐵版18きっぷである”TR Pass 學生版”(18きっぷと違い学生限定)では、自強號は乗れないものの莒光號は乗れるので、これと路線バスを組み合わせて駅巡りを攻略してみてはいかがだろうか。
ちなみに、内獅駅はこの列車のみ優等列車が停車する。ただし、将来は当駅から台湾最南端のリゾート地である恒春・墾丁方面に恒春線というものが分岐して開業する計画があるため、いずれ大化けする可能性がある。
今はある意味糠南駅みたいに”ほぼ何もない”駅なので、今のうちに行ってみてほしい。
(少なくとも電化で架線が出来てしまったので開業当時の面影は少し薄れているが。)

708次

運行区間:台東→新左營
営業キロ:167.9km
所用時間:3h29m
評定速度:48.2km/h
備  考:荷物車連結
主な時刻:

  • 台東:15:17
  • 知本:15:34
  • 大武:16:20
  • 枋寮:17:18
  • 潮州:17:55
  • 屏東:18:09
  • 高雄:18:36
  • 新左營:18:46

荷物車をつないでいる最後の列車。東部から南部の輸送を担当している。
先述の727次と違い、内獅駅を通過するほか、潮州より先に新幹線との接続駅である新左營まで直通している。
この列車も小さい駅から(まで)の旅客輸送を担当しているが、2時間後に同じく新左營まで直通する區間快車があるため、荷物輸送と回送の間合い輸送の面も大きい。
この列車が新左營まで到着した後、潮州まで回送されて荷物車の全行程が終了したこととなる。

510次

運行区間:新左營→七堵
営業キロ:385.1km
所用時間:6h34m
評定速度:58.64km/h
備  考:-
主な時刻:

  • 新左營:8:35
  • 台南:9:09
  • 嘉義:10:04
  • 彰化:11:21
  • 新竹:13:09
  • 桃園:13:57
  • 台北:14:39
  • 七堵:15:09

西部幹線を中心に走行する運用。当日中に折り返して新左營まで帰る。
新左營までは潮州から回送して来るが、なぜ新左營まで回送なのかは謎である。

521次

運行区間:七堵→潮州
営業キロ:429.6km
所用時間:7h46m
評定速度:55.31km/h
備  考:-
主な時刻:

  • 七堵:15:39
  • 台北:16:10
  • 桃園:16:48
  • 新竹:17:45
  • 彰化:19:41
  • 嘉義:21:04
  • 台南:22:04
  • 新左營:22:39
  • 高雄:22:50
  • 屏東:23:12
  • 潮州:23:25

他の西部幹線完結運用が高雄や新左營発着という中途半端な状況の中、この列車だけは車両基地のある潮州まで直通している。
中部や南部では時間帯の関係で通勤客でそこそこ利用客がいる。

516次

運行区間:高雄→七堵
営業キロ:393.7km
所用時間:6h37m
評定速度:59.5km/h
備  考:-
主な時刻:

  • 高雄:11:13
  • 新左營:11:24
  • 台南:12:00
  • 嘉義:12:50
  • 彰化:14:05
  • 新竹:15:57
  • 桃園:16:42
  • 台北:17:20
  • 七堵:17:50

高雄が起終点となる唯一の優等列車。この列車も510/521次と同じくなぜ潮州が起終点でないか謎である。
現行の定期莒光號の中ではこの列車が評定速度が最も早い列車である。

511次

運行区間:七堵→新左營
営業キロ:385.1km
所用時間:6h58m
評定速度:55.28km/h
備  考:-
主な時刻:

  • 七堵:8:43
  • 台北:9:15
  • 桃園:9:53
  • 新竹:10:50
  • 彰化:12:49
  • 嘉義:14:08
  • 台南:15:04
  • 新左營:15:41

中部にある白沙屯駅に停車する唯一の莒光號。昔はもっと停車本数が多かった。
この白沙屯には道教の媽祖という女神を奉る神社があり、参拝客で一定の乗降がある他、例大祭の時期には列車増発や優等列車の臨時停車が設けられる。
日本には東京、横浜、茨城に同じような風格の神社があり、日本でも媽祖へ参拝できる。

番外編①・1次/2次(環島之星)

YouTube

運行区間:台北~台北(台湾1周)
営業キロ:875.9km
所用時間:1次:13h07m、2次:13h32m
評定速度:1次:66.78km/h、2次:64.72km/h
備  考:観光列車。ICカードでの乗車は不可。
主な時刻:(←1次/2次→)

  • 台北:6:22/21:42
  • 桃園:6:53/21:10
  • 新竹:7:32/20:31
  • 台中:8:37/19:18
  • 彰化:8:54/19:00
  • 嘉義:9:54/17:55
  • 台南:10:38/17:11
  • 新左營:11:08/16:40
  • 高雄:11:18/16:28
  • 屏東:11:36/16:06
  • 枋寮:13:28/15:18
  • 知本:13:28/13:57
  • 台東:14:00/13:45
  • 池上:14:43/12:39
  • 玉里:15:11/12:18
  • 瑞穂:15:41/11:52
  • 花蓮:16:49/11:00
  • 礁渓:18:12/9:30
  • 台北:19:29/8:10

台北から台北まで1周する列車。
列番は1と2が割り当てられている。
環島之星という愛称がつけられている。(環島は台湾1周することの動詞。)
客車6両+機関車1~2機の編成で運行され、車両は専属の車両が充当される。
乗車するにはツアー会社での申し込みが必要となる。(日本からJTB、楽天トラベル、kkdayなどを通じて予約可能。)
デザインは数年に1度交換され、莒光號塗装、オリジナル萌えキャラ、ハローキティ、ディズニーの順にラッピングが施され、今はサンリオキャラのラッピングとなっている。
数年前までは客車6両のうち3両は定期莒光號の扱いで通常料金と同じ料金で停車駅の少ない莒光號に乗車することができた。(制度現存せず。復活するかは不明。)

番外編②・鳴日號

2020年12月31日より運行を開始した列車。
デザインや美観を非常に重視した列車であり、日本で言えば雪月花や52席の至福に近い存在。
牽引する機関車も含めて特別なデザインとなっている。
先述の1/2次よりもさらに高級で、コースや区間にもよるが乗車するには日本円にして約5万円ほどは最低でも要する。
その分車内サービスも高級であり、クラシックの生演奏を楽しみながら一流シェフの食事を楽しめる。
デビュー前の10月10日には日本のグッドデザイン賞を受賞した他、2024年には52席の至福と姉妹車両協定を締結した。
2022年3月2日には食事を楽しむことが専門の列車、”鳴日廚房”(鳴日キッチン)が新たに運行開始された。
尚、區間車用EMU500系を改造した海風號、山嵐號も鳴日號シリーズとして計上される。

まとめ

以上が、現在の莒光號(+α)の運用のすべてである。
臺鐵は今、莒光號の車両の廃車を進め、區間車や區間快車に置き換える政策を行っており、まさに風前の灯と言えるだろう。
海外、と聞くとハードルが高いように聞こえるが、台湾の鉄道は日本人にもわかりやすい設計であるため、資金に余裕がある人はぜひ台湾に行ってみてほしい。
今回紹介した他にも、台湾には様々な鉄道が存在する。各々の好みの路線や車両と巡り合えることを願ってやまない。

参考資料

以下に筆者が作成してみた莒光號の運行表を掲載する。あくまで予想なので突発的な変更が発生した際には以下の通りにならない可能性があることはご容赦願いたい。
尚、赤文字で示してある廻xxA/廻xxB次に関しては回送列車である。A,Bの付与法則は忘れたので”勘”である。
そもそも素人作品なのである程度はお目こぼしを頂ければ幸いだ。

参考画像

  • ディーゼル機関車牽引による莒光號(本線の全線電化により運用消滅)。
    ディーゼル機関車牽引時は電力供給の関係で必ず電源車が連結されていた。
  • 手動ドア車ラストランの様子
    特別なヘッドマークが付けられて運行された。

参考リンク

画像引用元リンク

この記事を書いた人
ひすい
ひすい
帰国子女高専生という超珍しい属性の人間です。
台湾滞在歴7年。なので台湾の鉄道にも触れます。
駅メモというゲームをやっており、将来の夢は駅メモを台湾に導入することです。
LEDの方向幕なんかも自作したりします。
最近は耐久乗車や全線下車にはまってます。
どうぞよろしくお願い致します!

コメント  ご意見やご感想等お気軽にどうぞ。

タイトルとURLをコピーしました