武蔵野線・市川大野〜船橋法典間の計画駅「南大野」をご存知かい?

どうも、実は京葉線ユーザーかもしれない中沢です。

「武蔵野線の計画駅」というと、皆さんは何を思い浮かべますか?実は南浦和〜東浦和間や新松戸〜新八柱間など、武蔵野線には様々な新駅設置計画があります。その中でも”影の薄い計画駅”といえば、市川大野〜船橋法典間に計画されている「南大野」ではないでしょうか(中沢調べ)。

今回の「マツムシ車庫」は、そんな南大野のお話です。それでは、今回もよろしくお願いします!

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そもそも南大野ってどこ

まず、「南大野」という地区についての説明が必要ですね…

赤い点線で囲まれているところが南大野。出典:Googleマップ

南大野は千葉県市川市の北部に位置する町で、その名の通り「大野町おおのまち」の南側にあります。地域の北部を武蔵野線が通っており、地域内には住宅街が広がっています。

まち自体がどちらかというと市川大野側に寄っていますね。ちなみに、市川大野駅は元々南大野にできる予定だったとか…?

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「南大野駅」の予定地は南大野ではない

さて、南大野がどこの地域なのかはわかりました。ですが南大野駅の予定は南大野ではありません。ではどこなのでしょうか?

赤いピンが打たれているところが予定地。出典:Googleマップ

柏井町ってどこやねん!!

…そう思った方も多いでしょう。この柏井町かしわいまちも市川市のまちで、南大野地区の東に位置します。キャンプ場があったり、貝塚(しかも文化財!)があったり、地下1500mから湧き出ている温泉があったり。あとは市川市内で唯一船橋市と鎌ヶ谷市の両方に接しているまちだったりもします。

…そう。南大野駅は、南大野という名を冠していながら柏井町に所在する(予定)というあまりにも名前詐欺な駅なのです。

南大野駅さんの生い立ち

南大野駅の予定地がわかったところで、この駅がどのように生まれどのように空気化したのかを遡りながら見ていきましょう。

元は都営新宿線の延長線上に計画された駅だった

「南大野」という名の駅の計画が最初に出たのは2001年(平成13年)のこと。当時、市川市や鎌ヶ谷市などで構成される「東京10号線延伸新線協議会」にて、本八幡〜印旛日本医大間の未成線「県営北千葉線」を新鎌ヶ谷まで復活させる議論がなされており、その時に「武蔵野線と延伸新線が交わる所に駅を設置しよう」という案が出たのです。

東京10号線延伸新線の計画ルートにつきましては、県営鉄道北千葉線の免許時のルートを基本としており、新設予定の駅につきましても、当時の計画が基本となっております。設置予定の新駅としましては、都営本八幡駅側から(仮称)東菅野駅、柏井駅、中沢駅、新鎌ヶ谷駅となっておりましたが、平成13年度に実施しました事業化に関する調査より、JR武蔵野線との接続駅として南大野駅の設置について検討されております。

2010年6月15日 会議録 -市川市公式サイト

市内に新設予定の各駅についてですが、東菅野駅は本八幡駅からおよそ2キロの地点、JAいちかわ本店付近に予定され、地下式となっております。次の南大野駅につきましては、免許時には設定がございませんでしたが、平成13年度の調査で、JR武蔵野線との接続を想定した事業予測を行っており、武蔵野線との接続を図ることにより、需要増加が見込める結果となりましたことから、路線計画に設定されております。市内で最も北に位置する柏井駅につきましては、保健医療福祉センターの付近が予定されております。しかしながら、新駅予定の各駅に関しましては、ホームの位置は設定されておりますが、駅舎や駅前広場、取りつけ道路などの周辺施設については、現在のところ整備計画は策定されておりませんので、市といたしましては、今後の調査の中で検討を進める必要があるというふうに考えております。

2010年6月15日 会議録 -市川市公式サイト

このように、2010年時点では南大野駅に需要があるという結論が出ていたようです。

そして、市内の3駅案、これは私は大変大事にしているんです。確認しますが、JAいちかわの本店前で本八幡からそのまま入ってきて、地下式の東菅野駅、そして武蔵野線と今私どもの中山議員が述べていました武蔵野線と接続する付近、これは上下になると思うんですが、そこには南大野駅、そして保健医療福祉センター付近に設置される柏井駅、この3駅案は、北東部地域の交通不便地域の私ども住民にとって、これは長い年月待ちに待っている整備計画事業案件でもあります。大久保市長の本事業計画案に対するご指導とご活躍を私ども住民は常に期待を寄せ、見守っていますので、ぜひともこれを推進してください。よろしくお願い申し上げます。

2010年6月15日 会議録 -市川市公式サイト

「ぜひともこれを推進してください」という言葉から、議員の切実な思いが伝わります。南大野を含む延伸新線の3駅は、それほど市川市民に求められていたということですね。

延伸新線の計画は凍結。武蔵野線単独の駅計画へ

ですが、あんなに市川市民から望まれていた(らしい)延伸新線は2013年度の検討委員会解散をもって計画凍結となってしまったのです。

千葉県・市川市・鎌ケ谷市で構成する「東京10号線延伸新線促進検討委員会」 は、8月27日に開催した第24回委員会において、
・平成22年度に同委員会が実施した「東京10号線延伸新線可能性基礎調査」において、延伸の実現について厳しい結果(※)が示されており、実現の可能性がないこと。
※「基礎調査」で示された主な課題
・現時点では、沿線の人口増加が期待できない(少子高齢化、具体的な沿線の開発計画もない
・多額の事業費(約 1,400 億円)
・事業採算性の見通しが立たない
北総鉄道への影響(利用者の減少に伴う事業収入の減少)
・当該事業に係る過去の用地取得時に交付された国庫補助金の早期返還を、国から求められていること。
等から、平成25年度限りでの同委員会の解散について議題とし、本日、市川市・鎌ケ谷市の同意を得ましたので、 「東京10号線延伸新線計画」の検討を終了し、同委員会を解散することを決定いたしました。

「東京10号線延伸新線促進検討委員会」の解散について -鎌ヶ谷市ホームページ

「実現の可能性がない」…延伸新線に関しては市川市だけの問題ではないので、仕方ないところもありますが……やはり、あそこまで求められていたものが無に帰すというのは少し複雑な気持ちになるものです。

ですが、南大野はまだ無に帰してはいませんでした。武蔵野線単独の駅計画として残存していたのです。

南大野に暗雲が…多数の課題、早期解決は困難

ですが、そんな南大野に今度こそ危機が訪れました。

新駅設置に関するJR東日本との協議については、まちづくりの検討に応じて、平成25年より随時行ってまいりました。 平成29年には、これまでの鉄道事業上の技術的な課題に加え、新たに運行計画上の課題が提示され、この課題解消には多くの期間を要する旨の見解が示されました。 このことから、新駅設置とまちづくりの同時施行は、事業スケジュール上の観点から、困難と判断いたしました。

質問内容及び回答 (JR武蔵野線沿線まちづくり事業 サウンディング調査 ) -JR武蔵野線沿線まちづくり事業準備会事務局

「課題解消には多くの期間を要する」

そう、既存路線に新駅を作るのには様々な課題が出てくるものです。南大野の場合、その課題を早期に解決することはできないとの判断がなされたということですね…

なお、上記の文章からは「新駅設置とまちづくりを同時に進めることが難しい」としか言いきっておらず、それなら駅自体は作れるのでは?と思いますが…

新駅設置には、上記課題の解消が前提条件となることから、現時点での取組みは困難と考えております。 今後、新たなまちづくりの進捗及び課題への取組み状況等を見極めながら、随時、対応を検討していくものと考えております。

質問内容及び回答 (JR武蔵野線沿線まちづくり事業 サウンディング調査 ) -JR武蔵野線沿線まちづくり事業準備会事務局

どうやらそれも難しいようです。まあ時間を要するとのことなので、しばらく経てばまた南大野の話が出てくるとは思いますが…

そもそも計画まだ残ってる…?

あの質疑応答から8年、一切南大野の話が出てきません。

まだ計画が残っているのか心配になるレベルで、あれ以降の文献が何も出てきません。南大野は空気になってしまったのでしょうか、それとも我々の見えないところで計画が進んでいたりするのでしょうか…今後に期待です。

結論

南大野、俺はいつまでも待ってるからな!いつか日の目を浴びる時を待ってるからなー!!

参考文献

2010年6月15日 会議録|市川市公式Webサイト

2018年2月27日 代表質問(清風会:石原みさ子議員))|市川市公式Webサイト

「東京10号線延伸新線促進検討委員会」の解散について

質問内容及び回答 (JR武蔵野線沿線まちづくり事業 サウンディング調査 )

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この記事を書いた人

中沢 / Nakazawa
中沢 / Nakazawa
矢切ディスカッションの"社長"を務める19歳フリーター絵描き。時間だけは無限にあるが、体力がもたないカフェイン中毒おぢさん。
札沼線民歴6年、東豊線民歴12年、千原線民歴1年。鉄オタ歴は4年弱。

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