みなさんこんにちは、ホームドアです。今回は常磐線の水戸地区を中心にひっそりと活躍する車両、E501系についてご紹介したいと思います。
E501系の概要
まずE501系の概要をおさらいしておきましょう。
製造概要
製造は川崎重工業(現:川崎車両)と東急車輛(現:総合車両製作所)の2箇所です。
基本10両編成4本と付属5両編成4本の計8編成60両が製造され、そのうち5編成が川崎製、残りの3編成が東急製となっており、1995年から1997年にかけ製造されました。
同期にはJR東海373系や京王1000形のほか、阪神5500系など現在でも第一線で活躍する車両が多くいますね。
209系を基本として設計しているので勿論ステンレス製になっており、パッと見は顔立ちも209系そっくりです。
車両概要
常磐線(水戸線)で活躍することが多いE501系は415系よろしく勿論交直流車両です。取手〜藤代間や小田林〜小山間にある交流-直流のデッドセクションに対応するための策ですね。
速度面でも見てみましょう。運転/設計ともに120km/hとなっており、100km/hであった415系と比べると大幅にアップしましたが常磐線は留まるところを知りません。後のE531系は130km/hとなるのは有名な話です。
起動加速度は2.0km/h/sとなっており、1.6km/h/sであった415系とは大幅に進化しているのは一目瞭然です。
制御機器はどうでしょう。実はこのE501系、登場時〜2012年頃までは“あの”シーメンスGTO-VVVFインバータを搭載していたのです。京急ではお馴染みシーメンス製のGTO-VVVF、主に1000形で加速時に特徴的な音を奏でるが故に“ドレミファインバータ”などと親しまれていました、が?
E501系では減速時にも特徴的な音が鳴ったのです。どう名付ければいいのだろうか、と考えた結果“ファミレドインバータ”だな!と個人的には思いました…汗
減速時には加速時と正反対で、音階が下がっていきます。
しかしながらそのインバータも2012年頃の機器更新でJRお馴染み東芝IGBTインバータへ。筆者の私も一度生で聴いてみたかったものです。
さて、ここまでE501系の概要をご紹介しました。ではそんなE501系、どのような経緯で水戸地区で細々と走るようになったのでしょうか…?
華々しい…?デビュー。
実はE501系のデビューは“車両の刷新”や“イメージアップ”ではなく“混雑緩和”という観点から導入された経緯があります。
茨城県南部、主に牛久市や土浦市では高度経済成長期から平成初期まで、住宅の郊外化という点も大きく影響し毎年のように1万人近い人口の増加がみられていました。当時中距離電車(常磐線の“青い快速”)で使用されていた415系は全車両が3扉セミクロスシートとなっており、ラッシュ時の混雑悪化が問題となっていました。
そこで、取手以南で当時使用されていた103系のようなオールロングシートの車両を導入しない限り根本的な混雑は解消しないとのような結論に落ち着いた沿線住民とJR東日本。
しかしながら石岡市にある気象庁地磁気観測所の影響もあり、取手以南の“緑の快速”を土浦方面に延伸するのは厳しい。さて、ここで投入されたのがこのE501系なのです。
あくまで当時は“緑の快速”の延長線として導入されたという経歴を持っていたのです。
1995年12月1日、ついに待望のオールロングシート車両、E501系がデビューしました。
怪しい雲行き
さて、沿線住民から期待されていたオールロングシート車両がデビューしました、が。“運の悪さ”と“少しばかりの設計の欠け”が仇になってしまうのです。
“アレ”がなかった
先ほどから強調している通り、オールロングシート15両編成で“乗客を詰めこむ”という形としては良かったのですがまずはこの電車、トイレが設置されていないのです。上野〜土浦は66kmと少し長め。
通勤時間帯ということもあり心理的には一刻も早く目的地に到着したい気持ちなのですが、この距離でトイレ無しですとやはり通勤時間においての弊害は生まれてしまいそうです。トイレさえ最初からあれば、何かが違っていたかもしれません…
それにE501系は通勤時間帯専用であるわけがありません。閑散時間帯や土休日の行楽客にも勿論利用されるわけです。そんな中トイレがない車両が来た時、少しガッカリですよね。
ダイヤと住民とE501系
さらにこのE501系の“運の悪さ”もついてきます。それは“増備途中での運用体系見直し”が発生してしまったこと。
1997年、E501系の投入のほか、遠距離からの通勤用特急としての側面が強かった特急“フレッシュひたち”のデビューも相まり、土浦以南への通勤列車への力が入りまくったJR東日本、なんとダイヤ改正によって土浦で系統を分割してしまうのです。ゆえに当時の土浦以北、主に石岡市民や水戸市民はそれに猛反発することとなります。
結局翌年1998年には急遽ダイヤを修正。土浦以南を完全にターゲットとしていたE501系にとっては予想外の痛手だったのでしょう。この時点で増備を打ち切ることとなりました。
上野から去ったE501系。
結局編成数は8編成に留まりながらも上野へ向けて日々走るE501系。のちの2005年に415系を完全淘汰する目的で登場したE531系と共に、ラッシュ時はその威力を遺憾なく発揮しました。しかしながらこのE531系、あまりにも“よく出来た”車両だったのです。
完璧な後輩
E501系やE231系の反省点を活かし、設備面では一部車両セミクロスシート設置のほかトイレも完備。行楽需要にも対応するため4号車と5号車には2階建てグリーン車も組み込まれました。通勤面完全特化であったE501系に対し、E531系は通勤行楽のどちらにも対応ができるようになっていたのです。
また、当時開業寸前であったつくばエクスプレスに対抗する観点から、E501系より更に高速化した130km/hでの走行も可能となっており、2024年現在でも130km/h運転を龍ケ崎市〜牛久・土浦〜神立・内原〜赤塚と常磐線の各所で行っています。
性能面でも設備面でもE501系と比較にならないほど飛躍的向上を見せたE531系。そんな“完璧な後輩”が現れた時、E501系は遂に活躍の場を移します。
土浦、その先へ
もともと土浦以南で運用されていたE501系は、完全に土浦以北へと運用の範囲が移り変わります。
2007年3月のダイヤ改正で、E531系のグリーン車供用開始と共にE501系は
10両編成…常磐線(土浦〜草野)
5両編成…常磐線(土浦〜いわき)・水戸線(友部〜小山)
という運用範囲へと変更されました。
この際、土浦以北でのホーム有効長の関係から10両編成と5両編成を併結した15両編成運用は廃止。完全に個々が1つの編成として動き出すようになります。また、同じくして2007年から2009年にかけて上野口から撤退しながらも残存した415系の一部の編成と共に水戸地区の輸送を担うようになります。
またこの際には黒地に白文字であった行先表示器は刷新され、青地に白文字となります。
そして現在、未来へ
さて、運用範囲が変わると設備面にも変化が生まれます。
機器・設備の更新
まずは2006年から2007年にかけ、遂にトイレの設置工事を実施。さすがに長距離利用も見込まれる運用範囲、トイレの設置は不可避といったところだったのでしょうか。
そして2012年、床下機器更新がやってきます。先述のとおり登場時からシーメンス製の音を奏でるGTO-VVVFインバータを搭載していました。しかしながら先述のとおり東芝IGBT-VVVFに更新。特徴的な“音”もここでおしまいです。
2014年にはパンタグラフのシングルアーム化、2019年には一部編成の行先表示器が3色LEDに更新されました。
運用範囲の変更と経年はE501系の仕様を大きく変えるものとなっているようです。
相次ぐ故障、相次ぐ運用範囲の変遷
登場から20年の経った2016年、春のダイヤ改正の時点では5両編成の運用範囲から常磐線の土浦〜友部・勝田〜いわきが除外され、水戸線内と友部〜勝田のみの運用となりました。
しかしながらダイヤ改正後、同年9月までにかけて水戸線にある小山〜小田林間の交直デッドセクションにおいてE501系の故障が頻発、9月5日には足早に水戸線から完全撤退し、運用範囲が再び変わります。
常磐線からは姿を消したと思われていた5両編成はまさかの常磐線に即復帰。水戸線がE531系になる反面、常磐線水戸以北の運用がE501系へと変わります。その上、草野より先、富岡までの運用も開始。
なんでしょうか、運用の変遷が激しすぎますね、この車両…
しかしながらその後2019年、5両編成はいわき〜富岡間での運用を終了。半自動ボタンが設置されていない等の理由から、2020年の全線復旧後も引き続き土浦〜いわき間のみで運転されていました。
そして2024年3月、遂に5両編成の運用が消滅。2024年12月現在、E501系は10両編成のみが運用に就いています。
以上から、通常運用での範囲は以下のようになります。
運用年月 | 常磐線 | 水戸線 | ||
両数 | 10両編成 | 5両編成 | 10両編成 | 5両編成 |
2007/3〜2016/3 | 土浦〜草野 | 土浦〜いわき | なし | 友部〜小山 |
2016/3〜2016/9 | 土浦〜草野 | 友部〜勝田 | なし | 友部〜小山 |
2016/9〜2019/3 | 土浦〜草野 | 土浦〜富岡 | なし | なし |
2019/3〜2024/3 | 土浦〜草野 | 土浦〜いわき | なし | なし |
2024/3〜 | 土浦〜草野 | なし | なし | なし |
“SAKIGAKE”
時は遡り2023年10月、E501系5両編成を改造しイベント列車へと改造する旨のプレスリリースがJR東日本より発表されていました。その名は“E501 SAKIGAKE”
デザインは現行のエメラルド×白と異なり、偕楽園の紅梅と白梅をイメージしたピンク×白の帯へと生まれ変わりました。
また、オールロングシートでのイベント列車ということもあり、車内では手すり付近にミニテーブルも新たに設置されることとなりました。車内では冷たい飲み物を提供する、という観点から冷蔵庫も設置されました。
SAKIGAKEの初運用は2023年11月23日、“水戸線地酒列車”として水戸〜結城間で運転されました。また、直近の2024年12月15日には“SAKIGA CAKE号”として水戸〜下館間で運転されています。
SAKIGAKE改造後、かつて乗り入れていた地に再び、団体列車として乗り入れることとなりました。
E501系の行方は…?
2024年のダイヤ改正を機に運用の無くなった5両編成。そのうちのK751編成が2024年8月、郡山車両センターに廃車回送されました。確かに紆余曲折はありながらも、JR東日本の中では比較的平均に近い29年という車生を全うしたのではないかと思います。(2024年12月現在、同車両センターで解体工事中)
現在は先述のSAKIGAKEとK751編成を除いた2本は勝田に留置されており、今後の動向が気になる2編成ではあります。
一方で10両編成はワンマン運転が不可能という観点もあり、ラッシュ時間帯のみの運用となっています。
しかしながら、7時台の水戸発いわき行きの下り列車に実際に乗車してみたところ、10両編成ながらも地元の学生の通学の他、日立地区へ通勤する人などで立客も多く出るなど、混み合っている様子が見受けられました。
10両編成は活躍の機会が狭まりながらも日々奮闘している様子です。
ただ、先述の通りE501系も2025年で30年。機器更新を経ながらも経年による劣化は否めない地点まで来ているのではないでしょうか。
さて、ここでソックリさんである209系の動向も見てみましょう。
ほぼ同期である209系0番台は房総地区転用の上209系2100番台へと改番。さらに2022年には房総地区へのE131系の投入に伴う余剰発生により第3の地、伊豆急行に3000系となって再転用されました。今後も同形式は伊豆急行へ転用される予定であり、さらなる活躍も期待されています。
個人的にはE501系にはオールロングシートという転用にあたってのハンデもありながら、10両・5両どちらもこの先、何らかの形にて譲渡などさらなる活躍が見込めるとは考えます。
茨城に馴染みがある筆者である私もE501系は大好きな車両ですし、この先もより長い活躍を期待しています。
さいごに
以上、常磐線の少数派であるE501系について解説しましたがいかがだったでしょうか。
先述したとおりですが、2025年で30年を迎えるE501系。これからのより一層の活躍も期待しています…
この記事を書いた人
- ホームドアです。都心&常磐線がメインになるかと思います。よろしくお願いします
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コメント ご意見やご感想等お気軽にどうぞ。
ワンマンでHB-E220系で置き換え。
個人的にはE531系増備だと思います。その方が他のE531系と運用を共通にできて楽ですし、
北陸3県各社の車両不足に出向いて欲しいですね。
金沢辺りで重宝されそう。
元々首都圏様に製造された車両だから、無理なく都心部使い道ありませんかね
E501は209-1000と共に仙石線で再活用してほしかったです(それでも不足する先頭車は209-2100も活用)。仙石東北ラインの連絡線を電化、デッドセクションを付けることができれば、仙石東北ラインとしても活躍できるし、検査で郡山にも自走できるし、209もE501でサンドイッチすれば、郡山へ回送もできたのではないかと妄想しておりました。
(その前に仙石東北ラインが開業する時点で、E501を仙台へ持ってきて、勝田はE531で統一するというやり方もあったのではないかと。ちなみにHB-E210は16両あるので、5両編成の1両を抜けば、ちょうど4編成16両になる)
ドアボタンを付ける必要もありますが・・
東北で運用してほしい