
9往復しか無くても、本線なんです。
こんばんは。今日も1日お疲れさまでした。
明日からお盆。お盆と言えばそうです、「諏訪湖祭湖上花火大会」です。諏訪湖の周りを彩る花火、すごい圧巻です。なんだかんだ毎年見させてもらっているので今年もせっかくなら出かけようかな、と思っていた時、臨時列車の発表がありました。まあ流石諏訪湖って感じですね…。
ところで、JR東日本が管轄する中央本線の中で、唯一臨時列車が出ない区間があるのをご存じでしょうか?
「辰野線」。辰野支線のうち、「塩尻駅 – 小野駅 – 信濃川島駅 – 辰野駅」の4駅 18.2kmの区間の愛称です。この路線、昔は特急や急行がバンバン走っていたのに、今では日中時間帯の運行が1本しかないような貧弱路線。もはや1年のうちほぼすべてを「影」として走っている路線でもあります。
そんな路線にもたまには光を当ててみると、思わぬところが輝いているかもしれない…!今回は、そんな辰野線を見てみましょう。
辰野線って何じゃい

辰野線は先ほどもご紹介した通り、4駅 18.2 kmの短い区間です。ドル箱路線と言われる中央本線のなかで一番の赤字区間であり、2023年度の営業係数は「1,802」という数字をたたき出しました。100円稼ぐのに1,802円投資しないといけない、ということですね…。
辰野線は、別名を「大八廻り(だいはちまわり)」と呼び、中央本線の旧線に当たる路線です。昔は辰野駅を特急あずさ号や急行アルプス号が通っていたんですよ!
当時、中央本線のルートは「伊那谷経由」「木曽谷経由」の2ルートが考案されており、国鉄内で議論されていました。結果的には現在の木曽谷経由のルートが採用され、中央「西線」に当たるルートが建設されることになります。
一方の中央東線側では、塩尻峠を峠とする「塩嶺」にトンネルを掘る「塩嶺ルート」という案が構想されていました。
しかし、当時の技術では、「峠を通過するためのトンネルが掘れなかったこと」が問題として挙がっていました。この「塩尻峠」、糸魚川静岡構造線を跨いでいること、長さが6 kmと当時日本最長だった”笹子トンネル(4 km)”を優に上回ること、などからとてつもない難工事となることが容易にわかっていました。
そこで、当時の鉄道局長、「伊藤大八」が、故郷の伊那谷を経由するルートを提案。これが、「大八廻り」と言われるゆえん。2つの河川に沿って建設され、天竜川(てんりゅうがわ)沿いが「東側」の”飯田線が直通してくるエリア”、横川川(よこかわかわ)沿いが「西側」の”辰野線”と呼ばれるエリアです。

大八廻りは開業当初、急行アルプス号や特急あずさ号などが発着し、伊那エリア最大の駅として栄えました。現在でも12両の停止目標があるのはこの影響。
しかし、やはり辰野周りはカーブが多いこと、距離が長いことなどから時間がかかってしまいます。そこで「塩嶺トンネル」の建築が再議論されることに。結局技術的にも行けるということになり、1983年に「塩嶺トンネル」が開業。特急はすべて新線(塩嶺経由)となり、辰野駅を発着する特急の運行は終了。以降も急行の一部は辰野周りとなっていましたが、1986年に飯田線直通の「急行天竜号」が新線・川岸経由に変更、2002年に中央本線夜行の「急行アルプス号」が廃止され、辰野線を通る(急行以上の)定期の”優等列車”は消滅することになりました。
以降も辰野線を通る急行以上の優等列車は存在せず、現在まで至っています。
そんな辰野線ですが、「JR中央線」の中では4番目に「定期列車VVVF率100%」を達成した線区でもあります。
「中央線快速電車(立川 – 東京)→中央線各駅停車(全線)→中央線名古屋口(名古屋 – 中津川)→辰野線」の順。意外なところがVVVF100%になりました。
辰野線の今の様子

辰野線の現在の運行本数、運行形態について見てみましょう。
運行本数
塩尻→辰野の「上り列車」が9本、辰野→塩尻の「下り列車」が9本…。
“たった9往復しかない路線”
なんです。
ってわけで全部の列車をさらうことができますね、何この路線。
辰野支線は「小野経由」という案内がされることが多く、駅や時刻表などでもこの文字を見ることができます。小野経由の飯田線直通列車は存在せず、全て岡谷(塩嶺)経由です。
一応「東京近郊区間」内なのですが、ICカードは使えず、列車の本数はこれ…。長野版小規模大回りはできなさそうですね…苦笑
上り(塩尻→辰野)

辰野方面にいく「上り列車」のご紹介です。
時刻 | 発車時刻 |
6時 | 10 辰 |
7時 | 21 辰 [始] |
8時 | |
9時 | |
10時 | 00 辰 [始] |
11時 | |
12時 | |
13時 | 00 辰 [始] |
14時 | |
15時 | |
16時 | 00 辰 [始] |
17時 | 43 辰 [始] |
18時 | |
19時 | 01 辰 [始] |
20時 | 22 辰 [始] |
21時 | 57 岡 [始] |
行き先:辰…辰野 岡…岡谷|[始]…始発
以上の本数。少ないですね…。
朝の始発のみ松本始発、それ以外はすべて辰野始発なのですが、10時ちょうど・13時ちょうどは長野からの直通便です。優遇されているんだかされていないんだか…
最終便だけ岡谷に行く「辰野支線通し運転列車」です。昔は211系が使われていましたね。
なお、「辰野ほたる祭り」という日本最大級のほたる観賞会があるんですが、その時の臨時も1本だけらしいです。
下り(辰野→塩尻)

塩尻方面にいく「下り列車」のご紹介です。
時刻 | 発車時刻 |
6時 | 51 塩 [始] |
7時 | 50 塩 [始] |
8時 | 51 松 [南] |
9時 | |
10時 | |
11時 | 00 塩 [始] |
12時 | |
13時 | |
14時 | 00 塩 [始] |
15時 | |
16時 | |
17時 | 00 塩 [始] |
18時 | 22 塩 [始] |
19時 | 30 塩 [始] |
20時 | 53 塩 [始] |
行き先:塩…塩尻 松…松本
[始]…始発 [南]…南小谷直通
以上の本数。まぁ、そうですよね…。
朝の3本目のみ岡谷始発松本行、それ以外はすべて辰野始発です。なお、3本目の「松本行」列車はそのまま大糸線に直通し、南小谷まで行きます。あらすごい…。
この列車、昔はそのまま「南小谷行」と案内されていたのですが、今では松本で列車番号を変えるため、松本行と案内されることになっています。
このように「列車番号を変えて直通する列車」が多く、9本中ほぼ半数の4本が塩尻以北にそのまま直通します。
こちらは、「辰野ほたる祭り」時の臨時が2本運転されました。
ところで辰野以東はどうなんだい

では、ここで問題です。「辰野以東の辰野支線はどうなんだ」。
というわけでこちらも時刻表を見てみましょう。
岡谷→辰野
時刻 | 発車時刻 |
6時 | 37 天 [始] |
7時 | 05 福 [上] 29 駒 [始] |
8時 | 11 松 [始] 24 辰 [茅] 44 飯 [長] |
9時 | 45 豊 [上] |
10時 | 42 天 [始] |
11時 | |
12時 | 29 天 [始] |
13時 | 30 飯 [松] |
14時 | 50 天 [始] |
15時 | 46 豊 [始] |
16時 | 38 豊 [上] |
17時 | 09 飯 [み] 52 平 [茅] |
18時 | 43 駒 [始] |
19時 | 12 天 [始] 33 駒 [始] |
20時 | 36 天 [始] |
21時 | 40 飯 [始] |
22時 | 32 駒 [始] 44 辰 [始] |
青字が辰野支線、橙字が飯田線直通、桃字は快速
行き先:駒…駒ヶ根 天…天竜峡 飯…飯田 豊…豊橋
平…平岡 福…伊那福岡
辰…辰野 松…松本[辰野経由]
始発駅:[始]…岡谷 [松]…松本
[上]…上諏訪 [茅]…茅野
[長]…長野 [み]…みすず 松本
ご覧の通り、列車のほぼすべてが辰野支線から飯田線に直通します。そりゃ本数多いですよね。
岡谷駅で特急あずさに乗り換えて東京に行く…という交通網が昔から整備されており、それの名残、とも言われています。(まあ実際は辰野で止めてもあんな閑散区間じゃ、ってことなんでしょうが…。)
辰野支線から飯田線の列車番号になっているため、「下り列車の偶数列番」、というありえない状況が起きています。
辰野→岡谷
時刻 | 発車時刻 |
6時 | 02 岡 [快] 36 岡 |
7時 | 16 茅 27 岡 [始] 47 長 [み] |
8時 | 22 上 55 松 |
9時 | 30 岡 |
10時 | 54 岡 |
11時 | 48 上 |
12時 | |
13時 | 44 岡 |
14時 | 47 岡 |
15時 | 42 茅 |
16時 | 49 岡 |
17時 | 21 岡 |
18時 | 20 上 |
19時 | 11 岡 51 岡 |
20時 | 48 岡 |
21時 | 26 岡 |
22時 | 20 岡 43 上 |
青字が辰野支線、橙字が飯田線から直通、桃字は快速(各駅に停車)
行き先:岡…岡谷 上…上諏訪
茅…茅野 松…松本 長…長野
列車名:[み]…みすず
こちらも、朝の1本を除き全列車が飯田線からの直通列車です。調べたところ、飯田線自体が終電以外はすべて岡谷まで直通するらしく…。
こちらも辰野支線内も基本的に列車番号は変えないので、「上り列車の奇数列番」、というありえない状況が起きています。上諏訪に来る奇数列番の上り列車、「233M」の異様さ…。(211系使用なので、列番が表示されます。)
快速列車、JR東日本管内では各駅に停車するので、「快速」と案内されていても普通列車と何も変わりません。
どちらとも「辰野駅」で乗務員交代を行っているそうです。岡谷まで特例で…とかにしなかったんですね。
通過人員比較

辰野を境に東側のエリアは「飯田線」が直通してくるため通過人員は日に2,700人ほど(2023年度)なのですが、「辰野線」は何も直通してこないため490人。この差は何でしょうか…。
比較までに他の中央本線系統、比較になりそうな「東京アドベンチャーライン」と「大糸南線末端区間」も載せておきましょう。
辰野線(辰野 – 塩尻) | 490 |
中央本線(岡谷 – 辰野) | 2,722 |
大糸線(白馬 – 南小谷) | 189 |
中央本線(高尾 – 大月) | 40,683 |
中央本線(大月 – 甲府) | 26,707 |
中央本線(甲府 – 小淵沢) | 15,347 |
中央本線 (小淵沢 – 新線経由塩尻) | 13,043 |
篠ノ井線(塩尻 – 松本) | 23,146 |
篠ノ井線(松本 – 篠ノ井) | 8,299 |
信越本線(篠ノ井 – 長野) | 24,506 |
青梅線(青梅 – 奥多摩) | 3,605 |
岡谷 – 辰野は飯田線が直通してくるため、日に2,722人の方が平均で通過しているという計算になります。一方の「辰野線」では、先ほども申したように列車の本数が少ないこと、代替バスがあることなどから日に490人の方しか通過していないという計算になります。辰野ほたるとかも含まれていそうな数ですね…苦笑
東京アドベンチャーライン、思ったよりも利用客がいる…ということよりも、大糸線のこの数は何ですか。そりゃあずさも白馬止まりになりますよね…。
大糸線、調べたところJR東海の名松線レベルらしく…うーん…。
幻の臨時駅

小野駅と塩尻駅の間に「善知鳥峠(うとうとうげ)」という峠があります。当時、今のような閑散線区ではなく、一流の特急街道。現在の篠ノ井線の「桑ノ原信号場」のような形の信号場が開設されることになります。その名も「東塩尻信号場」。
お察しの方も多いと思いますが、国鉄にはなにかと難癖が付くのがお約束。東塩尻も例にもれず、「地域住民の利便性向上」という形で、退避する列車を旅客扱いすることになります。そのため、「東塩尻信号場」から「東塩尻仮乗降場」もしくは「(臨)東塩尻駅」という形になります。
なお、この仮乗降場は1両分しかなかったとか。ですが、ドアカットなんて言う技術は当時なかったようで、全ての車両のドアを開けていたそうです。
そのため、ホームが設置されていないところから降りる場合は飛び降りていたとか。時代を感じます。
また、臨時駅の扱いのため切符は「東塩尻」ではなく、「小野→塩尻」「塩尻→小野」のどちらかだったそう。
そんな東塩尻駅ですが、1983年の新線開業時に新線側に「みどり湖駅」が設置されたため、そちら側に移設という形で同年7月に営業休止。10月に信号場自体が廃止となりました。
みどり湖駅と東塩尻駅は1 kmほどしか離れていないので、利便性向上のためにもそちら側に…という判断になったのでしょう。
そんなみどり湖駅の由来となった「みどり湖」は、近くにあるダム湖。ヘラブナ釣りのメッカ、としても知られているようです。
まとめ

今回は「辰野支線」でも、忘れられがちな「辰野 – 塩尻」、通称”辰野線”についてザックリとですが見ていきました。辰野線、沿線には横川の蛇石、旧小野宿場町など観光スポットがいくつかあるそうです。辰野町も沿線を盛り上げる一つの手段として取り上げているようなので、ほたる祭りのついでや飯田線からの帰りに、列車があるようでしたら寄ってみたらいかがでしょうか…。
今回も最後までご覧いただき、ありがとうございました。良いお盆休みをお過ごしください。学生の皆さん、課題頑張りましょうね!!!
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