
ご無沙汰してます。ふぺです。
JR北海道が運行する札幌と新千歳空港を結ぶ「快速エアポート」。この快速エアポートは北海道のターミナルである新千歳空港と北海道最大の都市である札幌を結ぶ非常に重要な列車ですが、6両編成の4号車には指定席車両「Uシート」が連結されています。しかしこの「Uシート」は設定当初に比べて料金が非常に値上げされていますが、利用者は非常に多く、券売機では行列が続き、発車時刻に近い列車はどれも満席となっています。
ではなぜ、この「Uシート」は大幅な値上げをしてもなお、利用者が多いのでしょうか?
「Uシート」値上げの歴史
本題に入る前に、まずは「Uシート」の歴史について軽く浚っておきましょう。

「Uシート」の歴史は新千歳空港駅が開業する1992年にまで遡り、当時「快速エアポート」で使用されていた721系や781系の一部号車に指定席を設置したのが始まりとされています。しかし指定席を設置したところで、車内の設備は他の自由席車両と変わりがなかったことなどから利用者数は低迷していました。
このように「指定席車と自由席車の設備が同じ」が原因で利用者が低迷して結局廃止…という流れは別会社であるJR西日本が「関空特快ウイング」で経験しており、「快速エアポート」にも同じ末路を辿らせないべく、JR北海道はとある手段に出ます。

それは「指定席の座席を特急並みの座席にグレードアップ」するということ。こうすることで自由席車両と指定席車両と設備の差別化が可能になるほか、高い快適性をアピールすることで指定席に旅客を誘導することができます。
このようにグレードアップした指定席を「Uシート」として名付け、後年の781系の設置改造や721系の編成組み替えを経て、「快速エアポート」全列車にUシートが連結されるようになりました。

この「Uシート」は初めて設定された2000年では310円という格安の値段で乗車することができましたが、2016年を境に520円⇨530円…と値上げしていき、2025年現在では840円という設定当初に比べて2倍近くも値段が跳ね上がってしまいました。しかし依然として「Uシート」の利用者は多く、発車時刻に近い列車はどれも満席という状況となっています。
ここまで値上げしてもなお、なぜ「Uシート」は満席になるほど利用者が多いのでしょうか?
利用者が多い理由①
「Uシート」の利用者が多い理由の1つとして、“まず新千歳空港の利用者数が多い”というのが挙げられるでしょう。
新千歳空港は福岡空港に次ぐ全国5位の利用者数を誇り、国内空港+国際空港を合わせると、2024年度には2483万人もの人が新千歳空港を利用していることになります。そして札幌・すすきのから新千歳空港への交通手段として挙げられるのが”鉄道”と”バス”になるのですが、鉄道はバスに比べて1回ごとの輸送可能人員が大きく、バスに比べて定時性も高いことから、すすきの等に直接アクセスする人以外はほぼ鉄道を利用しています。

これほど鉄道の利用者が多いと必然的に列車は混むようになり、一部の空港利用者の中には「追加で料金を払ってでも座って快適に移動したい」と思う人も出てきます。そのような人にとって「Uシート」は非常に有難いサービスであり、多少値段が高くても乗りたいと思えるのでしょう。
利用者が多い理由②
しかし新千歳空港駅から1つ先の南千歳駅では、室蘭本線や石勝線から来た「北斗」「とかち」「おおぞら」といった多くの特急列車が札幌方面に向けて発着しているため、新千歳空港からバスで南千歳駅まで行き、南千歳から特急に乗り換えたほうがいいのでは?と思う方もいると思います。

しかし空港利用者はいずれもキャリーケースといった大型の荷物を持っている人が多く、そのような方にとって一々荷物を持って移動しないといけない「乗り換え」というものは非常にハードなものといえます。そのため途中で特急に乗り換えるより、新千歳空港から札幌まで直接アクセスできる「快速エアポート」のほうが便利であり、実質的にこの「快速エアポート」と「Uシート」が新千歳空港〜札幌・小樽のアクセス特急としての立場を担っている…というのも「Uシート」の利用者が多い理由といえるでしょう。
このほか最近登場した733系4000番台の「Uシート」では新たにコンセントが設置されるなど、旅客が「乗りたい」と思えるサービスを提供しているといった点も利用者が多い理由といえるでしょう。
「Uシート」値上げの裏側
「Uシート」の利用者が多い理由はある程度理解できたと思いますが、ではなぜ「Uシート」は2倍近い値上げを行なったでしょうか?

これは主な理由が2つあり、まず第一に「快速エアポート」の運行会社であるJR北海道の経営状況にあります。
JR北海道は道内に多くの赤字路線を抱えており、廃駅や減便など非常に苦しい経営状況が続いています。そんなJR北海道にとって毎日多くの人が利用する「Uシート」というのは非常に強く、値上げで獲得した資金で道内各地の赤字路線を支えているといっても過言ではありません。
そして第二に、沿線の通勤客の乗車を防ぐというものがあります。

「Uシート」設定当初は310円という格安な値段であったためか、千歳や恵庭といった途中駅から「ライナー列車」と同じような感覚で「Uシート」に乗る通勤客が増えるようになり、新千歳空港から札幌まで「Uシート」を利用したい空港利用者が乗れなくなってしまう…という現象が起こるようになりました。
この件についてJR北海道に対して苦情が寄せられることが多くなったほか、JR北海道としても千歳線沿線民は室蘭方面から来る特急「すずらん」を利用してほしい…という意図があったために値上げされたとも言われています。
このほかJR東日本・JR北海道のネット予約アプリである「えきねっと」から予約できるようにするためや、チケットレスサービスを導入するために値上げがされたとも言われています。
小樽〜札幌でも利用者は多い!?
一部の「快速エアポート」は札幌を超えて小樽まで直通するのですが、この小樽〜札幌の間のみでも多くの利用者が存在しました。

私が乗ったのは南小樽から札幌までの間だったのですが、札幌までの間でもほぼ満席の状態となっていたほか、自分の乗っている車両が「Uシート」と知らず検札に来た車掌に追い出される人もいなかったので、全ての人がしっかり追加料金を払って乗車しているということが分かりました。また隣の人のチケットホルダーをチラッと確認したところ「小樽⇨新千歳空港」はもちろん「小樽⇨札幌」の区間のみでも利用していた人が何人かおり非常に驚きました。
この小樽〜札幌の区間は小樽へのアクセス手段として、昼の時点で立ち席が発生するほど多くの人が利用していますが、2025年現在では特急列車が走っておらず、実質的に「快速エアポート」と「Uシート」が特急列車の役割を担っている状況で、このような点から小樽〜札幌という短い間でも「Uシート」を利用して快適に移動したい…という人が一定数いるのでしょう。
まとめ

いかがだったでしようか?
「Uシート」の歴史とどうして値上げしたかの理由について理解していただけたかと思います。これでも840円という料金はやや割高に捉えてしまいがちですが、840円を払う価値のある快適性を手に入れることはできると思いますので、北海道に来た際はぜひ乗ってみてはいかがでしょうか?

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