【アクセス向上】福岡市地下鉄 国際空港延伸の可能性はあるのか

ご無沙汰してます。ふぺです。

数ある福岡市地下鉄の延伸計画のうち、前回紹介した長者原延伸と共に有力とされているのが「国際空港延伸案」というもの。もしこの計画が採用された場合、博多駅から福岡国際空港へのアクセスは格段に向上するわけですが、実際に採用される可能性はあるのでしょうか?

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既存の福岡国際空港アクセス

まず福岡市中心部から福岡空港までの主なアクセス手段として挙げられるのが連絡バスと地下鉄の2つ。このうち後者の地下鉄空港線は博多駅から約5分ほどで空港駅に着けるという利便性の良さから、訪日外国人観光客やビジネスマンを中心に日々多くの人が利用するようになっています。

こう見ると福岡空港は非常にアクセスの良いように見えますが、国際空港となると話が変わってきます。

Wikipediaより

福岡空港は国内線と国際線で旅客ターミナルビルの位置が大きく異なっており、国際空港のターミナルビルは国内空港から滑走路を挟んだ反対側に設置されています。それに対し現状で地下鉄が乗り入れているのは国内線発着の福岡空港で、国際線発着の福岡空港側には乗り入れていないのです。この結果国際空港へのアクセス手段はバスに限られることになり、地下鉄を利用して国際空港へ向かう場合は福岡空港駅から国際空港行きの連絡バスに乗り換える必要があります。

この福岡国際空港へ向かうバスは大きく分けて2種類あり、博多駅などの都心部から国際空港を結ぶ直行便と、国内線ターミナルと国際線ターミナルを結ぶ連絡便があります。

区間本数所要時間
博多駅筑紫口↔︎福岡空港国際線毎時3〜4本約18分(空港方面)・28分(博多方面)
国際線旅客タ↔︎国内線旅客タ毎時5〜6本約10〜15分

しかし博多駅から国際線ターミナルへ向かう直行バスは12〜20分に1本と少なく、国際線ターミナルと国内線ターミナルを結ぶ連絡バスも最短10分となっており、あまり利便性が高いとはいえません。

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地下鉄が「国際空港」へ!?

そして2022年の福岡市長会見で明らかになったのが、この福岡国際空港へ地下鉄を延伸するというもの。

地下鉄が国際空港へ延伸することによって、博多や天神から国際空港へのアクセスが向上するほか、国内線↔︎国際線ターミナルをより効率的に移動できるようになり、インバウンド需要や”アジアの玄関口”として国際金融都市を目指す福岡市にとって大きなメリットがあります。

この延伸計画は前回解説した地下鉄空港線長者原延伸案(仮称)と同じように、“たくさんある検討案の一つ”という立ち位置に留まっていますが、翌年の市長会見では「あまり優先的に延伸するものではない、市全体の今後のネットワーク形成を踏まえた上で必要性を検討する」との発表がなされているほか、福岡市地下鉄公式の2036年までの長期ビジョンにも詳細が記載されていない・22年の会見まで福岡市交通局の関係者も知らなかった…といった点から、この国際空港延伸については正直今後の動きは不透明なところが多々あります


七隈線 国際空港延伸ルート(国土地理院地図を加工)

この国際空港延伸のルートとして有力視されているのが七隈線を山王経由で国際空港へ繋ぐというもの。七隈線は2023年に天神南駅から博多駅への延伸区間が開業し、これにプラスで約3.5kmの国際空港への線路が繋がれば、福岡市西部や博多駅から国際空港へのアクセスが飛躍的に向上するほか、山王地区の鉄道空白地帯の解消に繋がることができます。

この部分のみ見ると非常にメリットの高い延伸計画のように見えますが、実は七隈線には大きな問題点が2つあるのです

七隈線は空港延伸に適していない!?

七隈線の国際空港延伸が抱える2つ大きな問題点…まず1つ目が混雑です。

七隈線は2006年の開業時点では予想乗車人員の半分にも満たない…いわば赤字路線のような立場でしたが、2023年に博多駅へ線路が繋がり利便性が大幅に向上すると、七隈線の乗車率は大幅に増加。中村学園大学や福岡大学といった沿線の通学利用や通勤利用者が大幅に増えたことにより、七隈線は1日平均利用者が約8万人から約12万3000人まで増加しました。

この混雑は延伸開業から2年が経った今なお問題となっており、予備車両を活用するなどして増発が行われていますが、それでもなお慢性的な混雑の打開には繋がっておらず、夕ラッシュ時は博多駅出発時点で立ち客多数・天神南駅でほぼ満員…といった状況になっています。

そしてこれにプラスで国際空港から来る大量の外国人観光客を捌く…というのは正直現状の設備ではほぼ不可能に近いように感じます。来年度より新たに4編成の車両が新造されて増発・混雑緩和に期待できるとはいえ、これ以上の混雑を捌くというなら増発にプラスで車両の増結など対策を講じなければ、博多駅や天神南駅といった中心駅で積み残し・遅延が発生するのは目に見えています


次に2つ目の問題点が案内

もし七隈線を国際空港へと延伸した場合、既存の地下鉄空港線との混合が起きてしまいます

この問題は非常に大きく、もし七隈線が国際空港まで延伸した際は福岡”国内”空港へ向かうのは”空港線”福岡”国際”空港へ向かうのは”七隈線”と非常にややこしい状態になってしまうわけです。

この混合は特に外国人観光客が影響を受けやすく「Airport Line」に乗ったつもりが着いたのは国内線ターミナルだった…ということが起きやすくなると予測できます。これを解決するべく路線愛称の「空港線」を「中央線」などに名称を変更したとしても「向かうターミナルによって乗る路線が違う」という問題を解決するのは難しく、混合による混乱はほぼほぼ避けられないでしょう。

もし国際空港へ向かう際に間違えて空港線へ乗ったとしても、前述の連絡バスを利用すれば国内線ターミナルから国際線ターミナルへ移動することができますが、それで済んでしまうのであれば、結果として「七隈線の国際空港延伸は不要」という結論になってしまいます

空港線を国際空港へ延伸する案

それでは既に国内線ターミナルへ繋がっている空港線を国際線ターミナルへ延伸するのはどうでしょうか?

空港線 国際空港延伸ルート(国土地理院地図を加工)

恐らく空港線を延伸した場合では、既存の福岡空港駅から急カーブを通ったのちに滑走路を横切って国際線ターミナルへ繋ぐルートになると思われます。

このような両ターミナルにアクセスする路線は他にも京急空港線・成田空港高速鉄道線・東京モノレールなどが該当し、もし延伸開業した場合は博多駅から同じ路線で国内線・国際線の両方のターミナルへ向かうことができるようになるほか、滑走路を地下で横切ることにより、既存の空港内の連絡バスに比べて大幅な所要時間短縮が見込めます。さらに両空港に行くという面から案内もしやすく、七隈線より両数が多いという輸送力の観点からも、メリットは空港線延伸のほうが多いように感じます。

しかしこの空港線の国際空港延伸案、実は福岡市公式から明確な発表がされていないのです。

空港線 長者原延伸との問題

この空港線の国際空港延伸計画が福岡市公式より出されていない理由…それは空港線のもう一つの延伸計画である「長者原延伸」が関係しています。

この長者原延伸計画は国際空港延伸計画と共に、福岡市の”たくさんある検討案のひとつ”という立ち位置に留まってはいますが、地下鉄空港線はこちらの延伸計画のほうがやや有力視されています。しかしこの長者原延伸案は、検討されている4つのルートの全てが赤字になると予想されているほか、長者原から先JRとの直通運転の問題などで、あまり計画が進んでいないのが現状です。

これに比べると長者原延伸より採算の取れそうな国際空港へ延伸したほうが良いような気がしますが、もし福岡市が空港線の延伸を国際空港に決定してしまうと、実質的に地下鉄の長者原延伸は諦める…ということになり、粕屋町や志免町といった長者原延伸ルートの沿線住民から不満が出る可能性があります。このため空港線を国際空港へ伸ばして長者原延伸を諦めるより、七隈線を博多駅から山王地区を経由して国際空港へ伸ばしたほうが良いのでは…という考えが出ているのでは?と思われます。

このほかにも国内線↔︎国際線ターミナルの移動には無料の連絡バスが多数運行されているという観点からも、空港線の国際空港延伸も厳しい面が多いと考えられます。

そして福岡市はこの問題の調整などを含めて「市全体の今後のネットワーク形成を踏まえた上で必要性を検討する」という発表に留まっていると考えられ、今後の市全体の動き次第で空港線の延伸先が決まると予想されます。

延伸しても採算が取れない!?

ぱくたそより

どちらも複雑な問題を抱えている国際空港延伸ですが、もし延伸したとしても採算は取れるのでしょうか?

概算事業費約1,490億円
想定利用者数2万9000人
単年度収支5億円
費用対効果(B/C)0.3
概算事業費の償還年数298年

これは七隈線の国際空港延伸ルート(博多〜福岡国際空港)の概略試算で、概算事業費は約1,490億円なのに対して償還年数が298年・費用対効果(B/C)が0.3とされており、B/Cの目安が1以上であることを考慮すると、この延伸計画の投資回収は困難と言えるでしょう。また費用対効果が薄いと国からの支援も受けにくく、結果として市の負担が大きくなってしまいます。


概算事業費約1050億円
想定利用者数約1万6000人
単年度収支約1億円
費用対効果(B/C)0.2
概算事業費の償還年数1050年

次に空港線の国際空港延伸ルート(福岡空港〜福岡国際空港)の概略試算で、こちらは概算事業費が約1050億円七隈線に比べてやや低いですが、想定利用者数が1.6万人・事業費の償還年数が1050年・費用対効果が0.2と正直かなり厳しい結果となっています。

どちらにせよ、これでは国際空港延伸の採算性はかなり厳しいと言えてしまいます。

延伸計画の今後

福岡市は今年度7月に福岡市都市交通基本計画の改訂を行なっており、この改訂で国際空港延伸計画の詳細が記載されることが期待されていましたが、残念ながら空港線の長者原延伸計画のみ記載されており、現在改訂中の福岡市都市計画マスタープランの懇話会資料からも国際空港延伸の話題が出てきていないことから、国際空港延伸についてはまだまだ先が不透明な状態が続くことが予測されます。

福岡市 「福岡市都市交通基本計画」
福岡市 福岡市都市計画マスタープラン

しかし近年の福岡国際空港はインバウンド需要も相まって利用者数が大幅に増加しており、2024年度の利用者数は国内線・国際線合わせて2712万人過去最高を記録しています。さらに今年から第2滑走路の運用が開始されて福岡空港を発着する便数も増える点から、国内線含む福岡空港の利用者数はさらに増えていくと思われます。

また近年ではバス運転士の減少が問題となっており、今後の運転士不足による減便が発生する可能性や空港利用者数の増加による混雑などを考慮する必要がある…といった点から、これから先国際空港延伸が本格的に検討される可能性はあると考えています。

おわりに

長者原延伸計画と同じく、正直あまり良い方向に進んでいるとは言えない国際空港延伸計画。今後のバス運転士不足や都市の発展具合の現状を見つつ、延伸について市が今後どう動いていくのか注目していきたいですね。

この記事を書いた人
ふぺ
ふぺ
よく奇行に走ります
icon @Bashamichi_mm04

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