【ATO関連】BEC819系試運転の意図とJR九州の今後の展望

ご無沙汰してます。ふぺです。

2023年度より定期的に行われているBEC819系と813系の併結試運転。この両形式は定期での併結運用を持たず、主に運行する路線も違う形式となっていますが、なぜ最近になって併結しての試運転が行われるようになったのでしょうか?

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BEC819系について

まず本題へ入る前に基礎知識としてBEC819系の解説をしておきたいと思います。

BEC819系「DENCHA」とは、香椎線や若松線といった福岡都市圏の非電化区間の国鉄型気動車を置き換えるべく開発された蓄電池電車です。

全車が山口県にある日立製作所笠戸事業所によって製造・直方車両センターに所属しており、香椎線(西戸崎〜宇美)・福北ゆたか線(博多〜若松)・鹿児島本線(折尾〜二日市)での定期運用を持ちます。また非電化区間での運用のやり方としては、車両情報制御装置「Synaptra」「パンタグラフインターロックシステム」を利用し、香椎駅や折尾駅に設置されている電化設備からクハBEC818に搭載されている蓄電池に電気を充電し、その電気を利用して非電化区間でも走行するような形になっています。

また2020年からBEC819系の100・300番台に順次、JR九州独自のATSであるATS-DKをベースに開発された自動運転装置を追設する改造が行われ、番台も5100・5300番台へ改められました。そして一部列車で実証実験が行われたのち、2024年より香椎線にて”GOA2.5自動運転”が開始され、同時に鹿児島本線の折尾〜二日市でも自動運転の実証実験が行われるようになりました。

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近年増えたBEC819系の試運転

そんなBEC819系ですが、近年になって自動運転装置関係の試運転が増えるようになりました。

https://www.jrkyushu.co.jp/news/__icsFiles/afieldfile/2023/03/29/20230329_jido_unten_sien.pdf

2023年3月にJR九州が発表したプラスリリースでは「2020年12月よりGOA2.5自動運転を目指した香椎線における自動列車運転装置実証実験の知見を基に、運転士操縦支援を目的とした『自動列車運転支援装置』を新たに開発し、これを使用した列車の走行試験を鹿児島本線で実施します。」との発表がなされており、同月よりBEC819系を使用した走行試験が赤間〜久留米にて定期的に行われるようになりました

811系の側面に記されている「 ATS-DK」「 ATS-SK」の文字

この自動列車運転支援装置の開発によって、地上設備増設の原則不要・車上設備簡素化・消費電力削減・乗り心地の向上といったメリットが期待でき、安全性の向上に繋がることができます。

そしてこの「自動列車運転支援装置」は昨年3月16日より 鹿児島本線の営業列車にて実証実験を開始する旨が発表されており、以下5本の列車で実験が行われています。

1727C (快速博多行き)香椎⇨博多
2134M (普通折尾行き)博多⇨折尾
2143M (普通二日市行き)折尾⇨二日市
2150M (普通折尾行き)二日市⇨折尾
2161M (普通博多行き)折尾⇨博多

またこの実証実験に伴い鹿児島本線の自動列車運転支援装置の対応区間が門司港〜荒尾の151.6kmに延長されており、同一路線におけるGoA2対応区間としては日本最長を誇っています。

GoA2・GoA2.5・GoA3とは

前述のGoA(Grade of Automation)とは、鉄道の自動化レベルを表す国際基準(IEC 62290-1)に基づく分類です。

項目GoA2GoA2.5GoA3
定義運転操作が自動化・運転士が乗務運転操作が自動化・運転士以外の係員が乗務運転操作が自動化・乗務員なし
運転操作自動(ATOで加速・減速・停車)自動(ATOで加速・減速・停車)自動(ATOで加速・減速・停車)
乗務員の役割運転士:監視、ドア操作、緊急対応係員:ドア操作、監視、初動対応なし(遠隔監視または自動対応)
ドア操作運転士または自動係員または自動自動
緊急対応運転士が手動介入係員が初動対応(簡易操作または遠隔支援)自動または遠隔支援
導入路線東京メトロ丸ノ内線・JR山手線・首都圏新都市高速鉄道(つくばエクスプレス)JR香椎線(実証実験中)・大阪メトロ中央線(実証実験)・長野電鉄(試験中)舞浜リゾートライン
目的運転士の負担軽減、定時性向上運転士不要化、コスト削減、効率化完全自動化、人件費削減

このGoA2〜3のうち、BEC819系が香椎線にて現在実証運転しているのは表中央のGoA2.5で、鉄道運転士の免許を持たない係員でも乗務できる…というものになっており、このGoA2.5の実証運転は香椎線の31本/173本の列車で行われています。そしてこの実証実験に該当する列車は、基本的に5000番台(自動運転対応改造)の13本が使用されています。

また前述の通り、鹿児島本線でもGoA2の実証実験が行われていますが、この鹿児島本線のGoA2に対応しているBEC819系は3編成(ZG5106・ZG5307・ZG5311)のみしかおらず、このため実証実験や前述の自動列車運転支援装置の試運転もこの3編成のみが入るようになっています。

ほか、この前述の営業列車での実証実験のほかにも、2023年より鹿児島本線にてBEC819系単独でのATO試運転が門司港〜竹下(小)福間〜箱崎香椎〜羽犬塚〜竹下(小)、小倉〜中津といった区間で行われています。

続く813系併結での試運転

試9155Mにて車両基地に返却されるBEC819系2B×813系6B

これまで自動運転関連の試運転はBEC819系単独でのものが続いていましたが、2023年11月20日にBEC819系の後方に813系6両を併結した試運転が初めて行われました。

BEC819系と813系2編成が併結試運転
昨日の鹿児島本線において、BEC819系5300番台「DENCHA(デンチャ)」のチクZG5303編成と、813系2200番台のミフRM2222編成・ミフRM2219編成が併結した8両編成の試運転が実施されました。前者は自動運転に対応する車

この試運転ではBEC819系側ではZG5303編成、813系側はRM2222編成・RM2219編成が使用され、門司港↔︎竹下(小)を1往復しました。またこの試運転では往路復路どちらもBEC819系が先頭になるよう組まれており、門司港駅構内の留置線で編成を組み替えたのち、竹下(小)へ向かっています。

この試運転は同月27日にも同様の内容で行われたほか、今年4月上旬からは日豊本線の小倉〜宇佐にてBEC819系+813系の試運転が久々に行われており、この時の編成は小倉方よりZG5309編成+RM004編成の5両となっていました。またこの試運転では、前回と同じようにBEC819系側が先頭になるように組み替えるようなことはせず、小倉⇨宇佐での往路試運転では813系側が先頭となって走行しました。

また同年5月下旬にも同様の試運転が行われ、BEC819系ZG5106編成+813系RM007・003編成の8両組成で試験が行われたほか、同年7月末にはBEC819系ZG5309編成+813系3107・3113編成(両編成ワンマン対応)の8両組成で試運転が行われています。

BEC819系試運転から見る今後

ではこのBEC819系の試運転の目的は何でしょうか?

この考察をするにあたって鍵となるのが、試運転に使用されている編成。上記に記載しているBEC819系の試運転はいずれも5000番台…つまり自動運転に対応した編成が使用されています。

BEC819系+813系の併結試運転も、協調運転が可能かどうかという面で試運転をするのであれば、使用するBEC819系を5000番台のみに限らず、自動運転に対応していない0番台を使用しても問題ないはずなのです。しかしわざわざ自動運転に対応している5000番台を使用している点を考えると、最近のBEC819系の試運転は自動運転関連の試運転と見て良いでしょう。さらに前述の通りJR九州では、鹿児島本線や香椎線にて自動列車運転支援装置の実証実験を行っており、この2つの点からBEC819系の試運転は鹿児島本線や日豊本線への自動列車運転支援装置の本格導入に向けた動きと思われます。

そして最近よく行われているBEC819系+813系の試運転もおそらくこの自動列車運転支援装置を使用した運転に813系が性能的な面で対応できるかについてのものと思われるほか、日豊本線では既にGoA2.5を採用している香椎線で走るBEC819系と同じワンマン運転対応2両の815系が走っており、今後815系に自動列車運転支援装置が搭載され、日豊本線でGoA2.5の運転が始まる可能性もあると言えるでしょう。

またこの自動列車運転支援装置というのは今後さらに人材不足が深刻化していく鉄道業界にて、運転士に必須な動力車操縦者運転免許を持たない係員が乗っても運行に問題ないというのは非常に大きいメリットであり、今後山陽本線(門司〜下関)や若松線など多くの路線で普及していくと思われます。

おわりに

いかがだったでしょうか?

BEC819系の自動運転関連の試運転…まだまだ不透明な部分は多いですが、今後を注視すべき話題の1つだと思います。そしてこれがJR九州のこれからにどう響いていくのか…自動列車運転支援装置の成果も含めて期待していきたいと思います。

この記事を書いた人
ふぺ
ふぺ
よく奇行に走ります
icon @Bashamichi_mm04

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