
ご無沙汰してます。ふぺです。
九州一の都市である福岡。そんな毎日多くの人が行き交う福岡の交通を支える鉄道会社は大きく分けて「JR九州(九州旅客鉄道株式会社)」「西日本鉄道」そして「福岡市交通局」の3つがあります。このうち3つめの福岡市交通局が運営する福岡市地下鉄は西鉄バスと同じく福岡市の交通を支える非常に重要な機関となっています。
最近では七隈線が博多駅まで延伸、さらに空港線等の既存路線を大きく増発をするなど福岡市の人口増加に対する対策を取っている福岡市地下鉄。そんな福岡市地下鉄の数多くある”延伸案”の一つである「長者原延伸」について今回話していこうと思います。
まず最初に①:福岡市地下鉄とは
福岡市地下鉄とは福岡市内の各地区と天神・博多地区等の中心部を結ぶ公共交通機関で、運営は福岡市交通局という地方公営企業が担っています。

福岡市地下鉄は、西区の姪浜駅からみずほpaypayドーム最寄りの唐人町駅、九州最大の繁華街にある天神駅、JR乗り換えの博多駅を結びながら福岡空港へのアクセスを担う空港線、空港線の中洲川端駅から県庁最寄りの千代県庁口や住宅地を通りながら西鉄貝塚線との乗り換え駅である貝塚駅までを結ぶ箱崎線、博多駅から西鉄天神大牟田線との乗り換え駅である薬院駅や福岡市動植物園最寄りの薬院大通駅、福岡大学最寄りの福大前駅を通りながらベッドタウンの橋本駅までを結ぶ七隈線の3路線で構成されています。
また空港線は姪浜駅からJR筑肥線と相互直通運転を行なっており、朝夕には佐賀県の唐津から福岡空港を結ぶ快速列車が運行されています。

また福岡市地下鉄には各路線にナンバリングが設けられており、空港線はK、箱崎線はH、七隈線はNと付けられているほか全ての駅に全国の地下鉄で初のシンボルマークが設けられているのも特徴です。

そんな福岡市地下鉄が所有する車両は主に5種類あり、1号線(空港線)開業時から活躍する1000N系、福岡空港延伸・増発に合わせ製造された2000N系、老朽化した1000N系を置き換えるため登場した4000系、七隈線開業に合わせ製造された3000系、七隈線博多駅延伸・増発に合わせ製造された3000A系があります。このうち1000N系〜4000系は姪浜工場所属、運行区間は空港・箱崎線の全線とJR筑肥線の姪浜〜筑前前原となっています。そして3000系と3000A系は橋本工場所属、運行区間は七隈線の全線となっています。
またこれ以外にもJR筑肥線から唐津車両センター(本カラ)所属の303系、305系が直通してきます。この2形式の運行区間はJR筑肥線の唐津〜姪浜と空港線の全線のみで箱崎線には入りません。また検査は唐津ではなく姪浜で行われます。
まず最初に②:長者原ってどこ?

長者原駅とは福岡県粕屋町にあるJR九州が管轄する駅で福北ゆたか線(篠栗線)、香椎線の乗り換え駅となっています。大回りで当駅を使ったことのある人も多いのではないでしょうか。この2路線は路線が開業した当時から交わっていましたがかつては福北ゆたか線(篠栗線)側の線路が九州鉄道、香椎線側の線路が博多湾鉄道の所有であり、どちらも石炭を港に輸送するのが目的の路線でしたが異なる会社が異なる港へ輸送することを目的としていたため、1988年の開業まで駅は設けられませんでした。
なお現在長者原駅は福北ゆたか線が1面2線、香椎線が1面1線となっていますがかつては両方とも1面1線で、2001年に篠栗線(福北ゆたか線)の電化工事が始まった際に列車交換ができるようホームを1面2線に増加しました。
福岡市地下鉄 長者原延伸とは
福岡市地下鉄と長者原駅の2つについてあらかた理解して頂けたと思うので本題の延伸計画の概要について解説していこうと思います。

この延伸計画は長者原駅が属する福岡県粕屋町が2017年に出したもので、福岡空港駅止まりとなっている空港線を長者原駅まで延伸するというものです。2025年現在、長者原駅から福岡空港駅に向かうには福北ゆたか線に乗って博多駅まで出る必要がありこの経路の所要時間は約30分となっていますが延伸すると所要時間は15〜23分短縮と大幅に短くなります。開業時期は不明ですが、準備期間を約9年、建設期間を約10年とし、2040年度に開業を目指す…とのことです。また接続駅は新設せず、既存のJR線ホームに乗り入れる形になるようです。
それでは次に主な延伸ルート案について見ていきましょう。
延伸ルート①

まずは案1。Aルートと呼ばれるものになります。こちらは福岡空港駅から長者原駅までを最短距離3.7kmで結ぶというもので、所要時間は7分程度となります。事業費は870億円、需要予測は1日最大16,500人となっています。
延伸ルート②

次に案2。Bルートと呼ばれるものになります。こちらはAルートとは違い最短距離で結ぶのではなく、迂回して途中2駅設置(東平尾公園・志免町役場付近)しながら計6.3kmを約11分で結ぶものになります。この案での福岡空港駅〜長者原駅の所要時間は11分、事業費は1,480億円とAルートのほぼ2倍になっていますが需要予測は1日最大17,000人と1000人ほど増えています。
延伸ルート③

次に案3。Cルートと呼ばれるものになります。こちらはAルートと同じく最短距離で結ぶものですが、長者原駅でなく1つ手前の原町駅を終点とするものになっています。こちらの総距離は3.2km、所要時間は7分で事業費720億円、需要予測は1日最大15,700人となっています。
延伸ルート④

最後に案4。Dルートと呼ばれるものになります。こちらはBルートと同じく最短距離で結ぶのではなく迂回し途中2駅設置しながらも、Cルートと同じく原町駅を終点とするルートとなっています。こちらの総距離は6.4km、所要時間は12分で事業費は1,420億円、需要予測は1日最大16,700人となっています。
福北ゆたか線との直通運転案
延伸案では長者原駅(原町駅)にて既存のJR線ホームに乗り入れると述べましたが、さらにそこから先JR福北ゆたか線との直通運転も想定しているとのことです。これにより直方や飯塚などの筑豊地域から直接福岡空港や天神方面に行くことができるようになります。

それでは県が出した資料をもとに直通運転時のダイヤを見ていきましょう。
まずはケース1。こちらは地下鉄線の姪浜駅〜福岡空港駅、JR線の博多駅〜直方駅の本数は維持しつつ、地下鉄線からやってきた直通列車をJR線の線路容量の範囲で乗り入れるものになっています。これにより長者原駅〜直方駅は現在の本数の2倍以上に増えることになります。しかし現在の2倍以上に本数が増えてしまうと長者原駅〜直方駅での輸送力が過剰になってしまう可能性があるほか、現在ラッシュ時に過密ダイヤとなっている空港線にどのようにして75本もの直通列車を走らせるか、も問題点になってきます。
次にケース2。こちらは地下鉄線とJR線の本数は現在と同じにして地下鉄からの直通列車を乗り入れさせるものとなっています。これにより空港線に無理やり直通列車のダイヤをねじ込む必要がなくなるほか、長者原駅〜直方駅の輸送力過剰の可能性も減りますが2線しかない原町駅と長者原駅でどのようにして博多方面の折り返し列車を捌くか、も問題点となってきます。
さらに読者の方々なら薄々気付いておられるかもしれませんが福岡市地下鉄は直流電化なのに対しJR線は交流電化となっています。そのため長者原駅を越えて直通列車を走らせる際は新たに交直流車両を新造するのが必須となってきます。

交直流電源に対応した地下鉄直通可能な6両編成の電車といえばTX-3000系が存在しますが、このTX-3000系の製造費は約14億円(1両約2.3億円)とされており、さらに製造年が2019-2020年とやや昔であり物価高が高騰している現在ではさらに製造費は膨れ上がるでしょう。そんな超高級電車をJR九州と福岡市が「よし、導入しよう」なんぞできるはずありません。
長者原延伸 黒字化できる?

これまで延伸の概要について話してきましたが果たして黒字化できるのでしょうか?まずは前述の4つの延伸ルート案それぞれの最低の収支採算性を見ていきましょう。
Aルート…-200億円(赤字) (事業費870億円)
Bルート…-680億円(赤字) (事業費1,480億円)
Cルート…-150億円(赤字) (事業費720億円)
Dルート…-660億円(赤字) (事業費1420億円)
と、このように全て赤字となっています。この中で最も採算性が取れると予測されているCルートも4つの案の中で最も需要予測が低くなっています。またCルートで前述のケース2にて運行するとなった場合1日の利用者数は最低で12,100人になると予測されています。
さらにCルートは福岡空港駅と原町駅を最短距離で結ぶルートとなっているため新駅は設置されず、延伸の波及効果が少ないという問題点があります。
長者原延伸 誰が費用を負担するのか
次に延伸区間の費用負担についてです。

延伸区間の福岡空港駅〜長者原駅は福岡市(福岡空港駅、東平尾公園)、志免町(志免町役場)、粕屋町(原町駅、長者原駅)の3つの市町村を経由しており、仮にCルートが採用されるとすれば志免町、福岡市には新駅は設置されずそのまま通過となってしまうため費用負担に応じる可能性はかなり低くなり、結果的に粕屋町のみが費用を負担することになってしまいます。
かといって新駅を経由するB・D案を採用すると建設費がかなり高騰するほか、完成しても600億円を超える赤字をどうするかが問題となってきます。
沿線民の反応
長者原延伸についてどう思うのか、福北ゆたか線と空港線の両路線を最寄りとする方に聞いてみました。

変電所や用地買収等で莫大な費用がかかりそうなんで、実現する可能性は低いかも…

計画のうちの福北ゆたか線直通があまりに非現実的だったりするから失敗に終わる気がする

賛成、志免町もそうなんだけど東平尾公園に行きやすくなるのがすごくありがたい
経済波及効果的には問題ないらしいし延伸してほしいなぁ、最悪本数想定半分なんやから単線で行けないかなとか思ってる

全面的に賛成、経路中に東平尾公園・志免町を経由するとより👍
おそらくそうなると経路上にイオン福岡もあることになるので需要もありそう
ちな長者原に直行ルートもあるけど、個人的にあれは微妙(線形的・需要的な意味で)
…とのこと。どちらの意見もその通りで、前述の長者原延伸の概要で「既存のJRホームに乗り入れる形となる」と話しましたが地上のJRホームに乗り入れるとなると結構な大きさの用地が必要になるほか、直通運転に必須な交直流車の新造が必要なのでその費用をどこから出すか、また作ったとしてその元は取れるのかが不安な人も多いようです。ただB,Dルートではアクセスの悪い東平尾公園や志免町に行きやすくなるという観点から延伸を希望する方も多いようです。
まとめ
地下鉄の長者原延伸。七隈線が博多まで延伸開業した今、この長者原延伸案が1番有力と言われていますがあまり先行きが良い計画とは言えないのが現状です。この計画がこれからどうなっていくのか分かりませんが身近な路線な以上、行く末をしっかりと見守っていきたいと思います。
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ふぺです
月1で九州メインの記事を上げていければと思ってますので何卒...
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