E231系1000番代徹底解説

JR宇都宮線や高崎線、東海道線等で活躍するE231系1000代は、来年で落成25周年を迎えます。未だ第一線で活躍し続けるE231系ですが、デビューから四半世紀を迎える立派なベテラン車両です。第一線での活躍は既に後半戦に入っているものと思われます。そんなE231系をイチから解説する記事を書かせてもらいました。

おことわり

この記事は、E231系1000番代に関するあらゆる事柄をまとめているため、読了目安約73分と内容の多いものとなっています。記事やページを分けることも出来ましたが、「徹底解説」と銘打ったくらいですから、ずっしりした記事でもいいだろうとの考えで公開しております。基本的な内容だけでなく、様々な点からのE231系を紹介すべくインターネット上でわずかに記録の残っていることまで事細かに掲載してあります。目次機能も駆使してみてください。

記事中では特にことわりのない限り「E231系」は1000番代を指します。また、宇都宮線は以降「東北線」と表記します。当記事で扱う内容には推測や記録の乏しい事象も含まれています。ご指摘や詳しい記録をお持ちの方がいらっしゃいましたら、当方メールアドレスまでご連絡下さい。

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E231系1000番代の基本情報

E231系1000代(石橋~雀宮 筆者撮影)
設計最高速度120km/h
起動加速度2.3km/h/s(P5)
通常時減速度4.2km/h/s(常用最大制動)
非常時減速度4.5km/h/s(非常制動)
装備保安装置ATS-SN ATS-P
基本諸元表

編成状況

E231系は1,255両、全160編成が運用中(一部検査等で入場中の編成を除く。)です。他線区と異なる点は、編成の拠点となる車両センターが、小山車両センターと国府津車両センターの2箇所に分かれていることです。拠点を複数有し、各所属先で車両の仕様に差があるのは首都圏では非常に珍しいことです。

小山車両センターはJR東日本首都圏本部の管轄で、10両編成49本+5両編成35本の計84編成665編成が在籍し、全ての編成番号に「」が付けられています。(都合上、旧区分の「大宮支社」として扱う。)

国府津こうづ車両センターはJR東日本首都圏本部の管轄で、10両編成42本+5両編成34本の計76編成590両が在籍しています。編成番号には、10両編成の場合「」が、5両編成の場合には「」がつけられています。(都合上、旧区分の横浜支社として扱う。)

E231系導入の目的

E231系は2000年から2006年までに導入された車両です。主な目的は「113系/115系の淘汰」であり、東北/高崎線や東海道線で陳腐化した113系や115系を置き換える目的で導入されました。しかし、増備された編成の場合はグリーン車連結率を100%とするため、グリーン車を連結していない211系を淘汰する目的もありました。詳しくは後述の箇所をご覧ください。

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E231系の分類

E231系は所属先と時期で分類される

160編成もの数に上るE231系ですが、所属先や時期で分類をすることで、編成の状況がより分かりやすくなります。2000年~2003年にかけて小山区の113/115系を置き換えるために新製配備されたグループを「ヤマ初期」と呼んでいます。「ヤマ初期」に該当する編成は、基本編成のU501-U541編成と付属編成のU2-U69編成です。

続いて2004年から2006年にかけて、今度は東海道線の113/115系の置き換えを目的に新製配備されたグループが国府津編成です。こちらは全編成が一貫して同時期に製造されたため、時期による分類はされないのが一般的です。なお、国府津車の基本編成は一部小山車からの捻出を受けていますがこちらは後ほど解説します。

2006年には、グリーン車非連結の211系を地方に追い出す形で小山車両センターに増備された編成が登場します。これが「ヤマ後期」と呼ばれるグループです。ヤマ後期に該当する編成は、基本編成のU-584-U-591編成と付属編成のU-105-U-118編成です。後期編成には編成番号にハイフンが付されることが一般的です。

ヤマ初期(小山初期編成)

ヤマ初期はE231系1000代のなかでも最初に投入されたグループです。製造年は2000年~となっており、同時期に製造されたE231系0番代や209系500代と類似した車内構造が見られます。先述の通り、U501-U541編成とU2-U68編成がこれに該当します。

ヤマ初期の特徴には以下のようなものが挙げられます。

  • 車内案内表示器が1段LED式
  • ドアランプ未設置
  • 連結部の貫通扉を省略した箇所がある
  • 運転台計器類は速度計やBC圧力計などのアナログメーターを採用
  • 車外スピーカー準備工事未施工
  • 普通車座席にSバネが使用されていない
  • 落成時のVVVFインバータ装置はSC59A形、SIV装置はSC66形を採用
  • 保安装置はATS-SN / ATS-P

小山初期車では1段式表示を採用しており、ドア上の鴨居部に設置されています。なお、この表示器は導入当初よりスクロール機能を有し、相鉄所有の車両に見られるようなスクロールができないものではありません。

導入初期には行き先表示が「行先は 〇〇」という表示でしたが、のちに「〇〇 行」という表示に改められています。ヤマ初期のなかでも、2002年製造分からは「行先は/行」をどちらも表示できる設定になっています。

最もよく知られているのは4つ目の「座席のSバネがないこと」なのではないでしょうか。「ヤマ初期」という言葉は車内環境の陳腐さを揶揄する意味合いもあり、特に「座席が硬い」ということで度々問題視されます。ヤマ初期が特段硬いというわけではありません。ヤマ初期で使用されている普通車シートはE231系0番代や209系と同様のものを使用しています。ところが、それらの車両と違ってヤマ初期は中距離電車であり、長時間の電車移動となる機会も多いだけに、座席が硬いことは頻繁に批判の的となります。

なぜ、硬いのか。それは座席にSバネと呼ばれるコイル機構がないためです。2004年以降はSバネを使用した座席になっているため、比較的座りやすくなっています。「Sバネ」は一般的にソファなどでみられるもので、深く座った時の尻への抵抗感すなわち硬さを低減させるものです。また、シートにリサイクルの一環でポリエステル素地を使用していることも硬さに影響しています。

国府津編成

小山区への配置から遅れること4年、2004年には東海道線の旧型電車113系を置き換えるべくE231系の新製配置が発表されました。ヤマ初期とは4年差で新製されることになった国府津編成はヤマ初期とは若干の差異が生じることになります。ヤマ初期からの主な変化は以下の通り。

  • 車内案内表示器が2段LED式に変更
  • K-01・02編成/S-01・02編成を除いて全車両連結部に貫通扉が設置
  • 運転台計器類は全てモニターに集約され、故障時のための予備モニターも装備
  • 車外スピーカー準備工事を施工
  • 乗務員室前の仕切り面に手摺を設置
  • 普通車座席のクッション性を向上、Sバネを使用したシートを採用
  • 伊東線への直通を考慮し、ATS-PNを保安装置として装備

新製車ではVISと呼ばれる車内旅客案内装置の開発により、運行情報と次駅案内を同時に表示できる2段式スクロールを採用しました。

さて、ヤマ初期では省略箇所もあった連結部の貫通扉ですが、K-01・02編成/S-01・02編成以外の国府津車では全車両の連結面に貫通扉が設置されました。実は、これ以降連結面に貫通扉を設置することが義務付けられたのです。このようになった背景には2003年2月18日に発生した韓国の大邱テグ地下鉄放火事件が関わっています。大邱地下鉄1号線中央路チュンアンノ駅で車内に放火されたことで、当該車両と対向車両の2編成が全焼し多数の死傷者を出したこの事件では、延焼や煙が広がった原因のひとつに「貫通扉の未設置」があるといわれています。日本では、これを機に貫通扉の全車両への設置が義務付けられました。

国府津編成からは、新たに車体側面部に車外スピーカー設置準備施工が行われ、車外スピーカーを将来設置するためのスペースを1~5号車と8~15号車に設けています。窓枠上の帯上に銀色の設置スペースが見られるため、外見からは帯が途切れているようにみえるのが特徴といえます。さらに、乗務員室仕切り面の客室側に手摺を新たに設置しています。

国府津編成以降の車両では、普通車座席にSバネを採用したことで、比較的柔らかい座り心地に改良が施されています。モケット模様などに差異はありませんが、座面中央部に腰掛けるとクッション性の高さを感じます。

また、所属先が変わったことで小山車と国府津車という点での差異も見られるようになりました。

小山編成と国府津編成とではセミクロスシートを設けている車両に違いが見られます。小山編成では1・2号車と14・15号車にのみ設置されたセミクロスシートですが、国府津編成ではこれらの車に加えて、9号車と10号車に設置しています。これは、東海道線の方が熱海などへの観光客の利用が多いことが背景にあります。

また、トイレの位置にも違いがあり、小山編成では1号車と6号車、グリーン車に設置されているのに対し、国府津編成では6号車にはトイレがなく、代わりに10号車にトイレが設置されています。

グリーン車組み込みによる捻出

小山に投入された2000年~2003年には東北・高崎線での普通グリーン車サービスは始まっていませんでした。そのため、ヤマ初期は10両全て普通車の状態で新製されましたが、2004年のグリーン車サービス開始に伴い、中間車両の4・5号車をグリーン車2両と交換することになります。そこで余剰になった旧4・5号車のサハ2両を、2004年からデビューとなるE231系国府津車に捻出することになりました。

これを見越して、国府津基本編成はK-01編成を除いて8両編成で新製されており、中間の6号車と7号車に小山編成からの余剰車を組み込んで10両に編成しています。そのため、K-01編成を除く国府津基本編成では上記のような国府津編成の特徴はなく、小山編成の特徴が見られます。先述のようなスピーカー準備工事は未施工であるため、6号車と7号車だけが未施工なら国府津編成であると特定することができます。

ヤマ後期(小山後期編成)

E231系1000代最後のグループはヤマ後期です。2006年、東北・高崎線で運用していた211系のうち、グリーン車を連結していない編成を淘汰し、上野口のグリーン車連結率を100%とするために再び小山車両センターにE231系が新製配置されました。ヤマ初期では編成番号と制御車(クハ)の車両番号末尾2桁が一致していましたが、間に国府津編成が製造されたため、ヤマ初期の編成番号付番とは規則性を変え、U-584編成からU-591編成までと、U-105編成からU-118編成として編成番号が付番されました。

ヤマ後期編成は全車新製、1~15号車の全車両に車外スピーカー準備工事が施されています。国府津編成とほぼ同様の車内設備であるものの、セミクロスシートやトイレの配置は所属先である小山の特徴に準ずる形となっています。ヤマ後期の特徴をヤマ初期と比較する形で以下に記載します。

  • 車内案内表示器が2段LED式
  • 全車両の連結部に貫通扉を設置
  • 運転台計器類は全てモニターに集約され、故障時のための予備モニターも装備
  • 全車両に車外スピーカー準備工事施工
  • 普通車座席にSバネを使用
  • 落成時のVVVFインバータ装置はSC77形、SIV装置はSC75/76形を採用
  • 保安装置はATS-SN/ ATS-P
  • 新製時から強化型スカートを装備

2006年のダイヤ改正までには国府津編成が全て新製配置され、東海道線の113系は全て淘汰されました。当時は旧型電車の置き換えだけでは運用数に対して編成が足りなかったため、不足した分は横須賀線のE217系を転属させて補う予定でしたが、諸般の都合により改造工事に遅れが生じ、ダイヤ改正までに3編成の転用が間に合いませんでした。そのため、急遽ヤマ後期を国府津に貸し出すことになりました。この貸出期間中には御殿場線山北駅までの入線が確認されています。当時は保安装置の関係でヤマ初期は東海管内に入線することができなかったため、同じ小山編成でありながら、さっそく初期車と後期車の違いを見ることができました。

番代区分について

続いては番代区分です。一般的に「1000番代」と呼ばれていますが、「近郊タイプ」という呼び方も混在しています。どちらも同じ電車を指していますが、実は車両番号を見てみると必ずしも「-1000」ではありません。

仕様形式記号形式番代座席座席形態/便所号車
小山国府津
寒地仕様+1000
衝撃吸収+5000
クハE231形6000番代ロング+010
8000番代セミクロス+20001515
8500番代便所設置+50010
E230形6000番代ロング+0便所設置+011
8000番代セミクロス+20001
寒地仕様+1000モハE231形1000番代ロング+08・1313
E230形7・1212
E231形1500番代ロング+0座席相違+5003
E230形3500番代セミクロス+20002
E231形3500番代セミクロス+20009
E230形1500番代ロング+08
サハE231形1000番代ロング+096・7
3000番代セミクロス+200014
6000番代ロング+0便所設置+50006
サロE231形1000番代グリーン車5
E230形4

車両番号は基本的に仕様や座席形態によって加算方式に区分されています。加えて、表中の「座席形態/便所」に該当する車両にはそれぞれ加算をすることになっています。「座席形態/便所」の番代区分は極めて複雑なため、補足を加えましょう。単に座席形態が違うだけでは加算はされず、「座席形態の異なるモハユニット」と電動車ユニットに限定して加算がされます。また、便所設置の欄をよく見ると、同じ便所設置でも加算される数がそれぞれ異なっています。便所設置車の加算条件は次のとおりです。

  • 便所を設置したクハE231形(10・15号車)は500を加算する
  • 便所を設置したクハE230形(1・11号車)は加算しない
  • 便所を設置した中間車(普通車)は5000を加算する

これらの加算によってそれぞれの車両は車両番号が決定します。このE231系を「1000番代」と呼称しているのは、どの車両にも「寒地対応」がなされており、全ての車両の車両番号が1000以上になるためです。

幅広い運転区間

定期列車の運行範囲

2024年8月現在、定期列車で運転される路線/区間は以下のとおりです。

  • 東北線(上野ー宇都宮)
  • 高崎線(上野ー高崎)
  • 両毛線(高崎ー前橋)
  • 東海道線(東京ー沼津)
  • 伊東線(熱海ー伊東)
  • 上野東京ライン(上野ー東京)
  • 湘南新宿ライン(大宮ー大船)
  • 横須賀線(大船ー逗子)

2015年の上野東京ライン(東北縦貫線)開業により、現在は全車両が全路線で共通の運用になっています。かつては車上保安装置の関係で小山初期編成は伊東線に入線できませんでしたが、現在では伊東線の保安装置が変更になり、全ての車両が対応しています。また、東海道線はほとんどが東京ー熱海間のJR東日本管内での運転ですが、2024年のダイヤ改正により、熱海ー沼津間のJR東海管内の運用にもE231系が入ることがあります(通称「沼津ローカル」)。

E231系の入線履歴

定期列車以外で、過去ダイヤや試運転等で入線した範囲はどれほどまで広がるのでしょうか。

  • 東北線(上野ー黒磯)
  • 日光線(宇都宮ー日光)
  • 中央本線(ー甲斐大和)
  • 常磐線(上野ー我孫子)
  • 武蔵野線(大宮(支)ー西船橋)
  • 京葉線(南船橋ー新習志野ー東京(京葉地下))
  • 御殿場線(国府津ー山北)
  • 東海道線(東京ー浜松)

東北線の黒磯行列車は最近まで定期列車として存在していましたが、宇都宮以北のワンマン化等により現在は定期列車としては入線しません。日光線は、デビューから定期入線はありませんが、デビュー直後に付属編成で日光線に入線しています。また、中央本線の甲斐大和までも国府津編成の試運転で入線した記録があります。最近では、小山編成の車輪転削を松戸車両センター我孫子派出所で行っている関係で、常磐線への入線も頻繁に行われています。

小金井運輸区の乗務員訓練は、「踏切設備がない」京葉線で行うことがあり、過去にU531編成やU520編成等が、武蔵野線を経由して京葉線内で試運転を行っています。

かつては御殿場線山北までの定期列車が存在し、山北までの入線経験があります。また、東海道線の浜松までは過去に何度か入線しており、付属編成では訓練のために浜松まで入線を行ったことがありました。基本編成では2010年に団体列車「伊豆するがひまわり号」が掛川からの回送のため、浜松駅に入線しています。

編成を特定するカギ

グループを特定しよう

160編成もいるE231系1000番代、まずは所属先のグループを見分けることが必須です。おさらいですが、重要なグループは3つ。「ヤマ初期」「国府津編成」「ヤマ後期」です。

ここで簡単に見分けられる特徴を挙げていきます。

  1. ゼッケン札(編成札)が付いているか?
  2. グリーン車を除く車両側面の車外スピーカー設置準備工事が未施工か?
  3. 基本編成中の6号車と7号車を除いて車両側面の車外スピーカー設置準備工事が施工済か?
  4. 基本編成中の全車両側面に車外スピーカー設置準備工事が施工済か?
  5. 客用扉に「ドアボタン」ステッカーが貼付されているか?

ホームや車内から、判別できる特徴はこのくらいでしょう。「宮ヤマ」「横コツ」の表記は意外と見逃してしまうこともあります。特に重要なのは「車外スピーカー設置準備工事」だということがよくわかります。

まず、一番目の特徴「編成札」は、「付いていれば小山編成」で確定です。国府津編成には編成札が設置されていませんが、ヤマ初期とヤマ後期には「U***」と書かれた編成札があります。

二番目の問いに「はい」なら、「ヤマ初期」で確定です。全車両で準備工事が未施工であるのはヤマ初期以外には当てはまらない特徴です。三番目の問いに「はい」なら「国府津基本編成(K-01編成を除く)」です。6,7号車がヤマ初期の特徴を持つのはなぜでしたか?疑問があれば戻ってみてください。四番目の問いに「はい」なら、「ヤマ後期またはK-01編成」です。全車両新造車であるがゆえの特徴です。

ここまででほとんどの見分けができますが、ヤマ後期付属編成と国府津付属編成の見分けがまだ曖昧なままです。これらを解決するのが五番目の問い、「ドアボタンステッカー」です。

このドアステッカーは小山編成にしか貼付されていません。このステッカーは車外ドアボタン位置と車内ドアボタン位置に合わせて車内外に貼付されています。そのため小山編成は国府津編成に比べてドアステッカーが複雑になっているのが外見上の特徴となっています。

なぜ、小山編成にだけドアボタンステッカーが貼付されているのでしょうか。

これは、東北線の小金井以北と高崎線の籠原以北において、ドアを乗客がドアボタンを使用して開閉させる「半自動ドア」の扱いが常時行われているからです(かつては宇都宮以北であった)。これは車内保温の役割が非常に大きく、快速列車接続時の長時間停車でも扱うことがあります。東海道線では常時扱う区間がないため、国府津編成には貼付していません。現在では、上野東京ラインの開業で東北・高崎線と東海道線は運用が共通になりましたが、依然として小山編成にのみ貼付されています。

これらによって、簡単な外観上の特徴から編成のグループは特定ができるということが分かりました。以上のことをまとめた分類表は以下の通りになります。

車両番号から編成を特定しよう

さて、車両番号から編成番号を特定することはできるのでしょうか。これは例えばの話ですが、転属や組み換えを行なわない場合、車両番号と編成番号は綺麗に一致するケースがほとんどです。クハ○○○-1は大抵「第1編成」になります。ところが、E231系1000番代の場合は、小山→国府津→小山の順に増備されており、ヤマ初期に関しては編成番号特定が比較的容易ですが、国府津編成はなかなか難しいことになっています。

先に断っておくと、車両番号から編成番号が特定できる号車とそうでない号車が存在します

ヤマ初期の場合

簡単に編成番号の推測ができる号車は1・2・3・6・10号車です。これらの号車では車両番号の下二桁が編成番号に対応しているため、簡単に推測ができます。

例)サハE231-6020 → U520編成

付属編成の場合は、12・13号車の下二桁が編成番号に対応しています。

例)モハE231-1031 → U31編成

2000年9月までに製造された編成(U501編成ーU510編成とU2ーU20編成)は基本編成と付属編成で一部中間車両の車両番号が交互に付番されています。これは、基本編成と付属編成がペアで製造されていたためです。なお、導入初期の製造に関しては後述とします。

国府津編成の場合

国府津基本編成の場合は、1・2・3・8・9・10号車の車両番号で推測ができます。ただし、既にヤマ初期の製造がされた状態で新製されたため、一部車両は42番目からの付番となります。

8号車は「モハE230形15**代」、9号車は「モハE231形35**代」、10号車は「クハE231形85**代」とそれぞれヤマ初期には存在しなかった番代区分のため、下二桁が国府津編成の編成番号と一致します

例)モハE231-3515 → K-15編成

付属編成の場合は11~15号車まで規則性があるため、車両番号の下二桁を「公式」に当てはめると編成番号をあぶりだすことができます。

11・14・15号車は「下二桁 ー 28」で編成番号と一致するようになっています。

これらの車両は、小山付属編成に同形式が存在しており、付属初期車の最終編成では車両番号が「**28」までになっているため、続く国府津付属編成では第一編成となるS-01編成が「**29」から始まっています。

例)クハE231-8042 → (42-28)→ S-14編成

12・13号車は「下二桁 ー 69」で編成番号と一致するようになっています。

これらの車両は、小山付属編成に同形式が存在しており、付属初期車の最終編成では車両番号が「**69」までになっているため、続く国府津付属編成では第一編成となるS-01編成が「**70」から始まっています。

例)モハE231-1083 → (83-69)→ S-14編成

国府津編成は第一編成から車両番号が半端なため、編成番号と車両番号が一見対応していないように見えてしまいますが、導入の背景を考慮すれば特定ができます。

小山後期編成

小山後期編成は車両番号に合わせて編成番号が付番されているため、特定は容易です。

基本編成では1~5号車の車両番号下二桁が編成番号と一致しています。付属編成は12・13号車の下二桁が編成番号と一致するようになっています。

例)サロE231-1090 → U-590編成

小山後期編成ではグリーン車の車両番号と編成番号が一致している点が特徴です。小山初期編成では導入時にはグリーン車が連結されておらず、グリーン車サービス開始時にはランダム様に連結されたため、編成番号との関連性は皆無になっています。

編成個体特有の特徴から特定する

全160編成も存在しているE231系ですが、特定の編成にしかみられない特徴を持つ車両もあり、これらから編成を特定できるものもあります。

トイレインジケーター設置車(U521編成)

普通車トイレの使用状況を表示するトイレインジケーターがU521編成にのみ設置されています。なぜU521編成にのみ設置されているかは不明ではありますが、その後の編成に導入されることもなく、現在に至るまで普通車に設置した車両はないため、試験的に設置されたものでしょう。

低ドア窓仕様車(U520編成他5編成)

客用4ッ扉の窓が通常よりも低い設計の車両が存在します。U520編成・U521編成・U31編成・U33編成は新製時より約30mm程度ドア窓ガラスが低い位置となっており、現在でも同様の状態となっています(U31編成など一部の編成ではドア交換によって一部ドアが一般的なものに換えられている場合がある)。また、U520編成とU521編成の旧4号車・5号車が捻出されたK-15編成とK-16編成でも同様の仕様を確認できます。

この仕様についても詳細は分かりませんが、同様のドアは以降採用されていないことから、試験的な設計であることがわかります。一部編成では通常のドアに交換されているものもあります。

導入初期

東北線への投入開始

E231系1000番代が初めて導入されたのは東北線でした。2000年3月に小山電車区向けの新形電車としてU1+U501編成が新製されます。当時は編成番号の表記がこのような形であり、約1年間のみの表記ではありましたが、編成札もU1等と表記されたものが設置されていました。このような表記スタイルは当時は珍しいものではなく、主に特急電車などでみられる表記でした。なお、2001年には表記が現行に統一されています。

U1+U501編成の落成から3か月後の6月21日、東北線と池袋直通列車の最大4運用で運行を開始しました。東北線での本格的な運行開始は2000年12月のダイヤ改正からで、これに備えてか第10編成までは基本編成と付属編成がペアで製造されています。00年12月のダイヤ改正後からはしばらく付属編成は製造されず、着々と基本編成だけが本数を増やしていきました。

東北線内解結事故が発生

運行開始から半年が経った2000年12月、早速E231系1000番代にとって初の大きなトラブルが発生しました。1例目は00年12月25日に野木駅構内にて普通列車の10両目の連結が外れて安全装置により緊急停車する事象でした。1例目から1か月後の2001年1月13日には浦和駅構内にて同様の事象が発生、緊急点検の結果、Tc車に設置されている衝撃吸収型連結器に欠陥があることが判明し、この時点で落成されていた全ての編成で交換を行いました。

高崎線への投入が開始

1年ほど東北線専用で運用されていたE231系でしたが、2001年になると高崎線での運用が解禁されます。高崎線運用拡大に伴い新製が加速し、付属編成の製造が再開しました。U520編成とU31編成からペア製造となり、U39編成まで続いています。

このときのダイヤ改正では高崎線にE231系を集中させる運用に改めたため、一過性ではありましたが東北線でE231系の運用が減っています。数か月後にはE231系は高崎線から115系を駆逐するなどしたことからも、E231系の投入スピードが極めて速いことが分かります。

この頃には付属編成どうしを連結した10両運用で運転されることがありました。当時はまだグリーン車サービスが始まっていなかったため、基本編成による10両編成であっても、付属編成による10両編成であってもあまり影響はありませんでした。この5+5運用を考慮して、E231系導入初期は付属編成に号車シールが貼付されていませんでした(基本編成もデビュー時は貼付されておらず、2002年に貼付された)。現在は連結を行われない付属編成の青森方に電気連結器が装備されているのは、この時期の5+5運用の名残といえそうです。

東海道線用車両への遷移

東海道線等への投入が開始

2003年7月には東海道線で運用されている陳腐化した113系を置き換えるため、E231系が国府津電車区に新製配置されることになりました。また、2004年7月に始まる普通グリーン車サービスに向け、サロE230形とサロE231形の製造が行われることになりました。国府津向け編成は先に小山に配備された車両とは一部変更になった点があり、ヤマ初期は209系の系譜を継ぐような点が見られたのに対し、国府津編成からはE233系とほぼ同時期の製造ともあって、ハード面で進化した車両といえます。

E231系の国府津区投入によって、在来の113系全51本は全て置き換えられる形となりました。

グリーン車の組込が開始

先に投入された小山編成はここまで3年ほど平屋編成で運転が行われていましたが、04年になるとグリーン車を連結することになりました。先述の通り、平屋時代の4・5号車を国府津に捻出してグリーン車を連結します。U508編成から連結が行われましたが、しばらく連結編成と非連結編成が混在することになっていました。

効率を重視したのか、小山初期編成への連結はほぼランダムな状態で、規則性はほとんど見られないため、グリーン車の車両番号から編成番号を特定することはできません。また、小山編成では検査時に運用都合からグリーン車を組み換えたために、投入状況は極めて複雑な状況になっています。

さて、国府津編成では新製時からグリーン車を連結しているため規則的な連結となっています。

横浜事業所構内事故が発生

この記事のサムネイルには、このようなタイトルを付けています。

「これは、1,255(+2)両の物語─」

E231系1000番代は現在、1,255両が在籍しており、過去に廃止になった車両は一両もありません。しかし、製造数は1,257両なのです。差分の「2両」はどこへいったのでしょうか。

実は、この2両は製造され完成したものの営業運転に就くことはありませんでした。この背景には横浜事業所構内事故が関係しています。事故を報道した実際の記事を以下に引用します。

24日午前8時45分、横浜市金沢区大川の東急車輌しゃりょう製造(本社・横浜市)横浜製作所で、試運転に使う線路に止めていた製造中の電車車両6両が動きだして脱線し、壁を突き破って約1メートル道路に飛び出した。けが人はいなかった。同社によると、電車は1両の重さが約35トン、長さが約20メートル。傾斜のある線路上に先頭の牽引車両を含む11両編成で止まっていた。後ろ6両を切り離したところ、この6両が50メートルほど動いて脱線。線路の約5メートル先の壁を突き破った。

平成16年2月26日「神奈川新聞」より

翌2月25日には甲種輸送が施行される予定でしたが、甲種輸送に向けた新造試運転中にサロ6両が逸走して車止めに衝突し道路上に突き出す形で脱線しました。詳細は分かりませんが、脱線の原因は構内の分岐器扱い誤りだったようです。脱線した2両は以下の車両です。

  • サロE230-1005(U517編成組込予定)
  • サロE231-1005(U517編成組込予定)

これら2両は脱線により損傷したため東急車輌は修理を試みましたが、JR東日本は当該車両の受取を拒否したため、同じ車両番号で新造、当該車両は廃車となった模様です。なお、JRへの受け渡し前の事故であったため、E231系としての事故には扱われません。

自動放送案内が開始

小山初期編成には自動放送装置が搭載されておらず、自動放送は行われていませんでした。なお、グリーン車組み込みが完了した基本編成から順に自動放送対応が行われました。国府津編成からは新製時から自動放送が可能になっています。なお、小山付属編成では自動放送対応が進まず、また付属編成と自動放送対応の基本編成が連結した場合には、ROMの関係で自動放送が流れませんでした。当時、グリーン車組込編成は高崎線運用を優先して投入されており、自動放送対応も高崎線を優先して運用に入れる目的からか、高崎線には小山初期付属編成は一切入れられずに国府津編成の付属編成を連結させていました。

弱冷房車を8号車に統一

弱冷房車の位置は小山編成では115系の伝統から3号車としていましたが、国府津編成では8号車にあり、この弱冷房車の号車を統一するために、小山編成の弱冷房車を8号車に変更しました。当時は運用上の関係が現在ほどなかった小山編成と国府津編成とで統一を行ったのは、湘南新宿ラインでの運用や当時既に構想されていた東北縦貫線(上野東京ライン)を見据えていたためと考えられます。

小山車両センターに増備

この時点で、東北・高崎線のグリーン車連結率は80%前後となっていました。E231系では概ねグリーン車連結が完了していましたが、211系にグリーン車非連結編成が混在していたため、100%には届かない状況でした。新前橋電車区の211系に組み込まれたグリーン車は、淘汰された113系の二階建てグリーン車と田町電車区の211系の平屋グリーン車を連結しており、一部はグリーン車を持たない状態で運転されていました。これらのグリーン車非連結編成をE231系で置き換え、長野地区や房総地区に転配することになりました。

2003年にU541編成をもって小山への配置は完了していましたが、2006年になって小山に基本編成8本と付属編成7本を増備することになりました。2006年6月に新製配置されたU-591編成は1000番代で最後に落成した編成となりますが、E231系としても最後の編成となります。

U504編成、踏切事故で臨時組換

2007年6月10日、高崎線内で踏切事故が発生し、U504編成の1~3号車が損傷(要修理状態)したため、当該3両の修理が完了するまで、U45編成の13~11号車を臨時的に組み込み、運用に就かせました。3両を奪われたU45編成はU504編成の修理が完了するまで運用を離脱しました。

故障救援

2010年2月12日、東北線東大宮駅手前でU525編成の電気系統に故障が発生し、力行ができなくなりました。応急処置により、東大宮駅まで移動させるも自走不可状態となったため、田端運転所のEF81 57を救援機として手配しました。同機は双頭連結器を装備していませんでしたが、U525編成のクハE231形側(青森方)連結器にアダプターを装着させてEF81形と連結しました。なお、この連結アダプターは床下に収納されている模様です。

この救援回送ではクハE231形側にEF81形を連結させ、一度大宮駅まで推進回送を行い、進行方向を変えて東大宮操車場内に回送させました。

上野東京ライン開業

2015年3月14日、上野ー東京間の東北縦貫線が開通し、長らく中距離列車が分断されていた区間を介して東北・常磐線と東海道線を結ぶ新たな直通サービス「上野東京ライン」が開業しました。

かつては、上野ー東京間には中距離列車線が設けられていましたが、東北新幹線の東京延伸に伴い用地確保のため神田附近の列車線を撤去して東北新幹線を建設したため、中距離列車は上野と東京で分断されることになりました。神田駅付近では住民の反対もあってなかなか東北縦貫線の再開通は実現しませんでしたが、新幹線の上に中距離列車線を敷くという難工事によって2015年に開業を果たしています。

上野東京ラインの開業によってE231系の運用は全ての路線で共通化され、上野東京ライン開業の1年前までには東北・高崎線での211系の運転は終了となっています。

この運用共通化によって、小山編成・国府津編成の運用における壁がなくなり、さらにはE231系とE233系の異形連結も行われるようになりました。

機器更新が開始

E231系1000番代の代名詞ともいえる「墜落インバータ」。新製時から採用されている日立製の2レベルIGBT-VVVFスリーブイエフインバータの老朽化を受けて、機器更新が始められました。2015年10月16日にU520編成が東京総合車両センターに入場し、機器更新を実施、SC59A型から後期型のSC112型に更新を受けています。この機器更新工事は小山編成ではほとんどの編成で行われており、「墜落インバータ」は数を減らしてきています。

大船駅構内にて電化柱と接触する事故が発生

2023年8月5日、花火大会開催に伴う臨時列車として運転していた第9974M列車が大船駅構内で建築限界内に傾斜していた電化柱と接触する事故が発生しました。当該列車はS-14編成で、接触を受けた15号車を中心に大きな損傷が認められました。S-14編成は2024年9月現在もなお、営業運転に復帰できておらず、臨時入場中となっています。SNS等での投稿などから、修理は行われていないことが推測されます。

この事故は、E231系1000番代が関係した事故のなかで最も車体損傷の大きな事故であり、乗客乗員にケガ人が出た重大な事故でした。1000番代に備わるクラッシャブル機構が機能したように見えるほどの損傷だったため、今後修繕して運用復帰できるか不透明なところとなっています。サロ2両を除けば事故廃車を出していないE231系1000番代なだけに、今後の動向に目が離せません。

あとがき

E231系のヒストリーの最後が事故というのは非常に残念でなりません。このヒストリーが明るい形で締められるように今後もE231系が立派な活躍をしてくれることを願います。

来年で落成25年を迎えるE231系1000番代。「近郊形」という微妙な立ち位置におり、他のE231系とは一線を画している車両です。製造数は1,257両、類い稀にみる大量生産でした。数の多い車両は好き嫌いが分かれる、どちらかといえば嫌われる傾向です。この車両も、どちらかといえば嫌われている方なのかもしれません。

しかし、この記事を読んで、E231系1000番代の基本の「き」から輝かしい歴史、そうでない歴史まで、知らなかったE231系の顔に触れることができたのではないでしょうか。

こんどE231系に乗ったときに、いつもと違う目線でE231系を見てくださるようになれば嬉しいです。

1,257両の物語、お楽しみいただけましたでしょうか。

参考文献/画像提供

この記事を書いた人

とうほくらいん
とうほくらいん東北本線を愛する大学生
東北本線にまつわる記事を中心に執筆しています。深い記事を少しずつ、皆様にとって新たな東北本線との出会いがありますように...

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