
序 章
唐突であるが,サムネにいる2車両についてご存じであろうか。これらの車両の顔を見ると非常にそっくり(というかほぼ同じ)だとわかるだろう。しかし,これらは全く別の形式である。今回はこの「E129系・HB-E210系」について観察していこう。
資料とデータについて
資料とデータについては,以下に示す通りである。また,イラストはすべてAzusaが描いたものである。
写真の撮影者
- E129系… Azusa
- HB-E210系… 「鉄道ファンの待合室」様 提供
車両性能のデータ
機器の型番等の車両に関する設計データはすべて,参考文献に記した技術報告書から引用した(以下の脚注からアクセス可能)。
概 要
E129系

E129系は,2014年に登場した東日本旅客鉄道の鉄道車両である。導入された背景は以下のとおりである。
- 新潟県内のJR線で活躍した115系の置き換えること
- E127系0番代を他路線に譲渡した際に起こる不足車両の補填
車体は東北地方で活躍しているE721系をベースとしているものの,sustina構造としている。また,台車はE233系のものをアレンジした仕様となっている。そのため,E721系のように側面の乗務員扉と乗降ドアの高さが異なることはなくなった。
2両ユニットのA編成と4両ユニットのB編成が存在し,走行線区の利用状況に合わせて両数を調整できるのも特徴だ。
HB-E210系

HB-E210系は,2015年に登場した東日本旅客鉄道の車両である。導入された背景は以下のとおりである。
- 東日本大震災で被災した仙石線の不通区間の運転再開に合わせて開業した「仙石東北ライン」の運用を担うため
- 「仙石東北ライン」における,東北線と仙石線を結ぶ連絡線に以下の問題点があったこと
- 東北線が単相交流20[kV]・50[Hz],仙石線が直流1500[V]と,架線電源電圧値が異なる
- その上,連絡線が設けられた場所は立地条件の関係上,デッドセクションを設けることができなかった
車体は前述したE129系がベースとなっており,外観だけ見ればE129系と見間違える。しかし,床下機器や内装,屋根上のパンタグラフが主回路用蓄電池となってる等,違いは数多くある。
すべて2両編成で製造されたが,有事が無い限りは2本繋げた4連で運転される(昔は2連での運用もあった)。
相違点
床下機器


左図はE129系に,右図はHB-E210系に搭載されているVVVFインバータ装置(主変換装置)の外観である。よく見ると,装置のボックスにある放熱孔の形状に違いがある。
これは,E129系は東洋電機製造,HB-E210系は日立製作所と,制御装置の設計・製作を担当したメーカーが異なるためである。この例を含め,E129系とHB-E210系の床下機器はいくつか異なる点がある。
機器類 | E129系 | HB-E210系 |
制御装置 | SC102(東洋電機製造) インバータ+ブレーキチョッパ | CI24(日立製作所) コンバータ+インバータ |
主電動機 | MT75B(三相交流誘導) | MT78(三相交流誘導) |
主発電機 | 無 | DM113 |
ディーゼルエンジンの有無 | 無 | 有 |
台 車 | DT71C/TR255D | DT75B/TR260B |
塗装 | ダークグレー | ライトグレー |
ドア


E129系とHB-E210系にはドアの違いがある。写真を見比べてみると,ドアガラス周りが微妙に異なっている。そこで,それぞれのドアの特徴について表にまとめてみた。
項 目 | E129系 | HB-E210系 |
ドアとガラス板の圧着方式 | ボンディング加工 | ボンディング加工 |
ガラスの構造 | 単板 | 複層 |
化粧板の有無 | 有 | 無 |
閉まるときの挙動 | 一般的な空気式ドアと同じ | 完全に閉まる前に一度停止する |
ドアチャイム | 鳴動パターンはE721系 音は首都圏エリアの車両 | E721系と同じ |
ボンディングとは?
ガラス板をドアに圧着する方法はいくつかある。その中でも,ガラス板と他の材料を貼り合わせる方法をボンディング加工という。詳しくは以下の動画で説明されているので,興味がある方は是非。
行先表示器


上図は,実車を基に再現した行先表示である。E129系(写真左)はフルカラーLED式,HB-E210系(同右)は3色LED式と,出力できる色の制限が異なる。
それぞれのヌマ要素
E129系
案内設定のROMがちょくちょく更新されがち
「またまた~そんな訳ないでしょ?」と思うのも無理はない。しかしこれは紛れもない事実である。実際にどんな変更があったのか,簡潔にまとめてみた4。
- 12017年~2018年頃
- 「新潟大学前」の次駅英語表記の変更(時期は不明だがこのころだと考えられる)
- 22018年
- 行先データに「快速 新津 Niitsu SLリレー号」の追加
- 32023年
- 行先データから「快速 新津 Niitsu SLリレー号」を削除
- 行先データに「新井」,「快速 新井」,「快速ワンマン 長岡」,「浦佐」を追加
- 42025年
- 行先データから「新井」,「快速 新井」を削除
- 行先データに「快速ワンマン 直江津」,「巻(新潟経由)」を追加
やりすぎだ
直近7~8年で4回も更新することは,はっきり言って異常だと思う,マジで。このような事例が起きた原因は,プログラムの構成上,種別と行先を別々に設定することができないからだと考えられる。データを無限に載せることは不可能な上にこういった事情が重なると,どうしても一部データを削除しなければ新規データを追加できない。これに関しては仕方ないといえる。
ドアチャイムが3種類混在している
これに関してはYouTubeの動画を見ていただいた方が早い。そもそも原因が分からないので,本当のヌマと言ったらこっちの方が強いのかもしれない。
HB-E210系
電気式気動車として運行することも可能
先ほどHB-E210系の屋根上には,主回路用蓄電池が設置されていると説明した。この主回路蓄電池で不具合が起きた場合,どのように対処しているのだろうか。

上図はHB-E210系の主回路構成である5。この回路図の通り,主回路用蓄電池で何らかの不具合が出た場合,主変換装置内部にある非常蓄電池回路を通じてモータを回せるようになっている。主変換装置内部の電池による駆動は電気式気動車と同じ仕組みなので,このような題名となった。
用途が不明な行先
HB-E210系は行先データに関するヌマなポイントもある。その中でも一番異彩を放っているのは,「真室川」(奥羽本線)だろう。なぜ奥羽本線の山間部のデータがあるのか,未だに疑問が残る。
結 び
実は2/25頃に記事は大体完成していたが,諸事情が重なり3月公開となった。その諸事情の中でも以下の件が特に大きかった。記事本編はこれで終わりだが,ここで大切なお知らせがある。
今後について
あけましておめでとうございます(超今更),Azusaです。最後に記事を書いてから早3か月,気が付いたら年を越してしまいました…
さて,ここからは私Azusaの今後について書かせてください。
というのも,本日から2027年3月中旬まで「ライター活動を休止」いたします。つまり,
約2年間,記事の更新が途絶えます
なぜこのような決断をしたか,理由は以下の通りとなります。
- 2年後の大学編入を希望しているのだが,現状のGPA(学年成績)だと大学編入の成功がかなり厳しいため
- 現在在学している学校の卒業条件として,卒業論文を執筆しなければならないため
こればかりはしょうがないとしか言えません。だって自分の人生に大きく関わるんですから…
そういうわけで,長~い期間記事の更新はできませんが,2年後も本サイトが生き残っていたら戻ってきます,多分。
最後に一言。
また,この場で会いましょう!
参考文献
- 株式会社総合車両製作所 生産本部 技術部,”総合車両製作所技報 第4号 解説 JR東日本E129系一般形直流電車”,https://www.j-trec.co.jp/company/070/04/jtr04_088-093.pdf,Access on Feb.25,2025. ↩︎
- 東洋電機製造株式会社,”東洋電機技報 第131号 東日本旅客鉄道株式会社E129系一般形直流電車用電機品”,https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F10386025&contentNo=1,Access on Feb.25,2025. ↩︎
- 株式会社総合車両製作所 生産本部 技術部,”総合車両製作所技報 第4号 製品紹介 JR東日本HB-E210系一般形ハイブリッド車両”,https://www.j-trec.co.jp/company/070/04/jtr04_082-087.pdf,Access on Feb.25,2025. ↩︎
- 行先対象表wiki,”新潟車両センターE129系”,https://taishouhyo.wiki.fc2.com/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%9F%E8%BB%8A%E4%B8%A1%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BCE129%E7%B3%BB,Access on Feb.25,2025. ↩︎
- 日立製作所,”日立評論2016年10・11月合併号:蓄電池駆動システムにおける最新技術と展望”,https://www.hitachihyoron.com/jp/archive/2010s/2016/10-11/pdf/2016_10_11_02.pdf,Access on Feb.27,2025. ↩︎
この記事を書いた人
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