どうも、第三種鉄道事業者オタクの中沢です。
普段は「高砂〜印旛日本医大」間の路線として扱われている「北総線」ですが、実は「高砂〜小室」間の路線なのです。今回はその理由と「千葉ニュータウン鉄道」という謎の鉄道会社についての記事です。ということで、今回もよろしくお願いします。
なぜ「北総線は小室まで」なのか
簡単に言うと、小室を境に免許が別れています。つまり「高砂〜小室」と「小室〜印旛日本医大」は完全に別の路線ということです。
その理由は各路線のルーツにあります。元々北総線というのは千葉ニュータウンにおけるサブルートとして位置づけられており、メインルートとしては「本八幡〜印旛日本医大」間の路線「北千葉線」が計画されていました。この路線は千葉県が建設する事となっており、本八幡から都営新宿線に直通して多摩ニュータウンと千葉ニュータウンを繋げる予定だったそうです。
当初はこのように「新鎌ヶ谷〜小室」間で並走、小室から先は北千葉線単独で印旛日本医大までを結ぶ予定でした。なお当初の予定では印旛日本医大のその先、成田までの路線であり免許も「本八幡〜成田」で申請していましたが、「印旛日本医大〜成田」間は運輸省に「判断が早い!」と却下されてしまいました。
そして千葉県は印旛日本医大までとなったこの路線を開業させるため用地取得などを進めようとしていましたが、オイルショックにより難航してしまいます。しかもこのオイルショックは千葉ニュータウン本体にも影響し、規模縮小を強いられることに…このままでは北千葉線計画が頓挫してしまいます。
そこで、千葉県は北千葉線のうち「小室〜印旛日本医大」間の免許を「住宅・都市整備公団」というニュータウン開発を行う組織に譲渡することにしました。住宅・都市整備公団は法律により鉄道業を行う事が許可されていて、運輸省も免許譲渡を許可したためこの区間は正式に住都公団の物となりました。
こんな感じです。ちなみにその後、なんやかんやあって残りの「本八幡〜小室」間は頓挫してしまうのですが…その話はまた別の機会に。
鉄道事業法による立場逆転
さて、公団に譲渡された区間は無事「千葉ニュータウン線(通称・公団線)」として開業を果たしました。ですが、公団線が「ひとつの路線」として扱われていたのはほんの少しの間だけだったのです。
公団はあくまでも鉄道会社ではなくニュータウン開発組織。つまり鉄道業は専門分野ではないので、公団線は開業時から北総に業務委託、つまり公団が北総にお金を払って運行していました。しかし、鉄道事業法が適用されると立場が逆転し北総が公団にお金を払って運行する事となってしまいます。
このようになったのは公団が線路保有のみを担当する「第三種鉄道事業者」となったからで、公団線内では北総が運行のみを担当する「第二種鉄道事業者」として線路保有者である公団に線路使用料を支払わなければいけないからです。ついでに「北総線」と「公団線」として分かれていた路線名も「北総・公団線」としてひとまとめにされてしまいました。
千葉ニュータウン鉄道の誕生
さて、途中で住宅・都市整備公団から都市基盤整備公団に名前が変わったりはしたものの「北総・公団線」の関係は特に変わることがありませんでした…2004年までは。
なんと、2004年7月をもって公団は鉄道事業から撤退し、「都市再生機構(UR)」となることが決定したのです。どうやら公団線の経営状態が厳しく、手放さざるを得なかったようです。
となると、どうにかしなければならないのが公団線の処遇ですが…ここで公団線を譲り受けたのが京成電鉄です。
京成電鉄は子会社として「千葉ニュータウン鉄道」を設立し、それを公団線の受け皿としました。北総と合併すればよかったのでは?と思うかもしれませんが、北総も経営状態が厳しく、赤字が続いていたので流石に無理だったようです。ちなみに、それと同時に北総開発鉄道が北総鉄道に社名を変更しました。
ということで、北総・公団線改め北総鉄道と千葉ニュータウン鉄道は2004年7月から新たなスタートを切りました。
空気と化した「千葉ニュータウン線」
…千葉ニュータウン鉄道は確かに新たなスタートを切ったのですが、その切り方が残酷でした。
なんと、千葉ニュータウン線の存在を表から抹消してしまいました。車両のプレートは全て「北総鉄道」に統一し、「北総・公団線」としていた路線名は高砂〜小室〜印旛日本医大間を一律で「北総線」に統一。かろうじて車両の色で北総と千葉ニュータウン鉄道を区別できますが、一編成を除く全てに北総鉄道と書いてあるため、わからない人にとっては全部「北総の車両」です。
ちなみに、その例外である「9200形」についてはこちらの記事をご覧下さい↓
最後に、現在の北総線・千葉ニュータウン線の簡易路線図を貼っておきます。
結論
北総線にお越しの際は、是非従業員3名のペーパーカンパニーの存在を思い出してみてください。
※この記事は「沿線ちゃっと」にて今年1月に投稿した記事を大幅リメイク・再編集したものです。
この記事を書いた人
- 千葉ニュータウンと鶴見線に対する熱量が異常な札幌出身千葉寺民の未成駅オタク
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調べるとここまでの経緯が面白いですね。