
こんにちは、こづるしんでんです。
2025年8月~9月にかけて、尾久車両センターと仙台車両センターの国鉄型電気機関車が、一気に姿を消しました。さらに現在唯一残っている新潟の電気機関車4機も、11月で営業運転を終了すると発表されています。
2014年の北斗星ラストランや2020年のGV-E197系・E493系のデビューなど、なくなるのではないか?と言われながらも長い間残っていた電気機関車たち。なぜ、今一気に数を減らしてしまったのでしょうか。考えてみました。
電気機関車の余剰化
ではまず、EL全廃の要因が何だったかを考えていきましょう。
事業用電車のデビュー


まず第一の要因は、E493系やGV-E197系、キヤE195系のデビューです。

これらが置き換えた機関車の主な運用は、「工臨」です。工臨とは「工事臨時列車」の略で、線路や駅を維持・改良するために、普段は走らない臨時列車として運行される列車です。普通の旅客列車とは違い、貨車にレールやバラスト(線路の下に敷く砕石)を積んで運ぶのが基本。で、この工臨、貨車に荷物を積み運ぶわけですが、機関車を使って工臨を行う際にそのとき問題になるのがこの3つ。
- 「機回し」が必要になる
- 機関車と電車では操作方法が違う
- 保守が独特
とまあ、色々と手間がかかってしまうんですね。機関車自体老朽化している今、あえて機関車を新製するよりも、電車に似た車両で置き換えたほうが楽になってしまいました
そこで開発されたのはキヤE195系、GV-E197系、E493系です。どれも電車や気動車をベースに設計されていて、キヤE195系はレール輸送を、GV-E197系はバラスト輸送を「機関車+貨車」から置き換えました。
E493系は、本格的に稼働し始めたのは案外最近。車両の廃車回送・新製回送といった、従来EF64やEF81が担っていた配給輸送を置き換えました。
これによって、機関車の仕事は大幅に減少しました。ただ、これらのデビュー後もまだ10機程度機関車は残留していました。
カシオペアラストラン

もうひとつの大きなトリガーは、6月に行われた カシオペアのラストラン でした。寝台特急の牽引で活躍してきたEF81の役目は終了。また、SL牽引列車の補機としての役目もGV-E197系に置き換えられ、お客を運ぶ機関車の仕事は一気に減りました。
廃車回送された国鉄型機関車
では、2025年4月以降、尾久・仙台地区から廃車回送された主な車両を整理します。
EF81系(尾久所属)


- EF81 80:9月11〜12日、ED75 759を牽引し秋田総合車両センターへ
- EF81 81:9月2〜3日、ED75 758と共に廃車回送
- EF81 95 / 139:9月17日、カシオペア予備電源車カヤ27 501とともに秋田へ
人気が高く、カシオペアや配給等でよく本線に出てきた尾久のEF81。ここ最近は4機体制でしたが、9月の始めだけで一気に消滅してしまいました。
EF65-1000(尾久所属)

- EF65 1115:9月10日、長野総合車両センターへ廃車回送
ブルートレインけん引用として登場し、寝台特急「瀬戸」「出雲」や急行「銀河」などの列車もこなしていました。このEF65形1000番台はPFと呼ばれ、貨物・旅客を牽引できる機関車として登場しました。このPFはJR東日本では最後の一両となっていました。
ED75系(仙台・秋田所属)


- ED75 758 / 759 (仙台):廃車回送済み
- ED75 767 (秋田):廃車回送済み(自走)
あかべこ、という愛称を持つED75。絶対にそんな両数いらないだろという秋田1機、仙台3機の状態で2年経っていました。
昨年にはED75を全機集めた撮影会を行うためにわざわざED75 767を仙台まで持ってくるという訳わからんことをしでかしてました。しかし、昨年中にED75 757が廃車回送され、大きな仕事だった仙石線の配給もGV-E197系にとって変わられ、ついに全機が廃車回送されました。
EF64-1000(高崎所属)

- EF64 1051 / 1053:5月頃に廃車回送
もともとSL・ELぐんまなどで定期的に旅客営業を行っていました。昨年に営業運転を終了した後も数機残留していましたが、EF65-501を残し電気機関車は一掃されました。
なぜ“今”廃車ラッシュになったのか
ここで整理しておきたいのは、なぜ2025年春〜夏にかけて、一気にEL全廃が進んだのか、という点です。
短く言うと「仕事が一斉に消えた」+「置き換えの準備が一段落した」が重なったからです。
ちょっと複雑なこの電気機関車の置き換え、E493系登場から5年もたった今なぜ一気に消えていったのか考えてみました。
1)“仕事”がまとめて消えた
まず最初に押さえるべきは、ELが担っていた“仕事”そのものが、春〜夏にかけて次々に消えたこと。具体的には、
- 寝台特急「カシオペア紀行」のラストラン(6月)。EF81やEF64にとって一番分かりやすい仕事が消えた。
- 首都圏の車両世代交代(E217系の廃車、E235系の新製投入、E231系の機器更新完了)が一区切りついた。そのため、配給・廃車回送などELの出番が大幅に減った。
2021年から4年間かけて実施されてきたE231系の機器更新も2025/6/12~13にかけて配給されたS-02編成をもって終了。EF81が引き受ける数少ない配給輸送でした。また、横須賀・総武快速線のE217系からE235系への世代交代も終わり、それにともなう配給輸送も終わりを迎えました。
その一方で、ELを置き換える側の整備も進みました。E493系やGV-E197系、キヤE195系が配給や工臨を引き受け始めたことで、「ELでなければ無理」という仕事が次第に消えていきました。
これがなにを意味するかというと、EF81やEF64が「任されていた仕事」が急速に減ったということです。
2)E493系は「最初は慎重」
ここが今回の鍵。E493系の導入経緯は、単純に導入すれば即代替できる……そういったわけではありませんでした。
慎重な導入初期
当初は久留里線のキハE130系1両の配給など、限定的な運用から始まっています。3年も走行試験を行っていましたが、同時期に廃車回送が行われていた鶴見線205系の配給には使われず、その後もキハ110の2両の配給など、小規模な配給にとどまっていました。 正直多くの日とが「非力なのでは?」と話すぐらい。
救援機の待機・空振りも
そんななか迎えた2025年、ようやくE493系が本領を発揮できる機会がやって来ました。そうです。E231系800番台のAT出場です……が秋田まで行って連結訓練までしたのに結局戻ってきました。
このように空振りも多かったE493系ですが、その次のE231系800番台K6編成のAT出場や209系1000番台のNN廃車回送などを無事にこなし、ようやくその真価が発揮されてきました。
一気に本格運用へ
その後、E493系はE131系の新製配給、E233系の秋田入場などの実績を重ね、長編成牽引もこなすようになりました。これらの成功が積み上がり、「この車両で大丈夫だ」とわかったことが、長年残ってきた電気機関車たちを一掃した最大の要因だったのではないでしょうか。
3)置き換えられる側のスピード感
もう一つ理由として考えられるのは、置き換えられる側に求められていたスピード感です。
E217系の整理やE231系の更新は、E493系の不具合を理由にダラダラ伸ばすわけにもいきません。「できるだけ早く世代交代を完了させる」ためにも、実績が不十分なE493系を使わず、従来通りのELの牽引で終わらせたのではないでしょうか。
結論
- 仕事がなくなる:カシオペアラストラン+E217廃車+E235投入+E231更新の終了で「ELの居場所」が消失。
- E493系がようやく本格稼働:導入初期の限定運用や救援待機を経て、209系・E131系・E233系の牽引実績で信頼を積んだ。これが、旧ELをまとめて整理する“安心感”を現場に与えた。
要するに、「たまたま一つの理由で消えた」というよりは、仕事がなくなったのとE493系がようやく使えるようになったのが合わさったから、今回のELの一掃に繋がった……そう考えました。
残りのELたちは?

現在残留しているELは新潟の4機。
EF64-1030、1031、1032
EF81-140
です。これらも引退が発表されています。
JR 東日本新潟支社では、長年にわたり臨時列車の牽引や新車回送などで活躍してきた
EF64 形・EF81 形電気機関車(新潟車両センター所属)が、2025 年 11 月をもって旅客
列車としての営業運転を終了します。https://www.jreast.co.jp/press/2025/niigata/20250918_ni04.pdf
ということで、JR東日本から電気機関車が完全に消える日ももう近そうですね。
最後に
さて、なぜ“今”ELが一気に消えたのかを整理してきました。
寝台特急カシオペアのラストランや首都圏車両の世代交代で、EF81・EF64の出番は激減。さらにE493系は、209系・E131系・E233系の牽引で実績を積み、「これで大丈夫」という信頼がようやく生まれたため、スピード感をもって整理を決行。
つまり、この結果が今回の廃車ラッシュです。ファンとしては、もう見られない姿を記録に残しておきた買ったところです。ありがとう、ELたち。
最後までご覧いただきありがとうございました。

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