71-000形の行先表示器を考察する【ヌマレッシャーズ】

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おことわり

本記事を製作するにあたり,弊サイトの管理・運営をなさっている「鉄道ファンの待合室」様から71-000形の資料写真を共有してくださりました。また,イラストの資料にも活用させていただいております。本当にありがとうございます。

また,本記事以降は丁寧語(俗にいう「~です,ます」調)をやめ,基本的に断定調(俗にいう「~だ,である」調)とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

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はじめに

2024年11月20日の朝,新潟県の鉄道車両工場から1つの新型車両が産声をあげた。朝日に照らされながら現れたその顔は,まるでイルカのようにやさしい笑顔であった。

撮影:鉄道ファンの待合室

そう,かねてより話題になっていたりんかい線の新型車両「71-000形」である。

りんかい線は「新木場~東京テレポート」の開業から長らく「70-000形」と呼ばれる,JR東日本209系をベースにした車両が使われてきた。しかし,70-000形は製造されてから30年近く経っている。そのこともあり2度のリニューアルが行われたのだが,車体の老朽化は容赦なく進んでいた。

そこで,りんかい線の運営を行っている東京臨海高速鉄道株式会社(以下:TWRと示す)は70-000形に代わる新型車両として71-000形を投入・2025年度下期より営業開始をすることとなった1

概 要

ここでは71-000形について簡単に触れる。

外観はイルカのようなほほ笑みが特徴的である。しかし,鋼体の大部分はE235系,前面の鋼体はE233系がベースとなっており,機器構成も直通先であるJR所属の車両に合わせたものとなっている。このことから,従来の70-000形より車体幅が150 mm も広くなる2。ラッシュ時は地獄ともいわれる混雑ぶりを見せる埼京線にとっても心強いのだ。約30年ぶりとなるTWRの新型車両にふさわしい形式といえるだろう。

71-000形についてもっと詳しく知りたい方は,「鉄道ファンの待合室」氏が執筆した以下の記事も合わせて見ると良いだろう。何か新しいことが発見できるに違いない。

【大崎へ甲種輸送】東京臨海高速鉄道りんかい線71-000形が落成
東京臨海高速鉄道は開業時から使用している70-000形の後継として、新型の71-000形を投入することを明らかにしていました。 最初の1編成目となるZ11編成が総合車両製作所(J-TREC)新津事業所を出場し、甲種輸送にて大崎駅までの輸送が

71-000形の行先表示器に目を向けてみよう

イラスト:Azusa 資料提供:鉄道ファンの待合室

そんな71-000形だが,行先表示器については森尾電機製フルカラーLEDマトリクスパネルが使用されていることしかわからないのが現実だ。そこで,今回は行先表示器に内蔵されているコンピュータ「ROM」に格納されている「表示データ」について考察していく。

森尾電機

JR東日本E129系の行先表示器
JR東日本E131系の行先表示器(次駅表示あり)

上に示した2つの写真は,いずれも森尾電機が作成した表示データを使用している車両の行先表示器である。JR東日本の車両に多く搭載されており,関東やその周辺の人々にとって最もよく見られるタイプだと考えられる。

森尾電機製データの特徴として次駅表示という,現在停車している駅の次に止まる予定の駅名を案内していることが挙げられる。この「次駅表示」を搭載したのはJR東日本の代表的な車両「E233系」が最初であり,その分かりやすさから評判を呼んでいる。

この森尾電機製の表示データは,東京都交通局や小田急電鉄,JR東海やJR四国などの車両でも見ることができる。現在TWRが保有している70-000形も森尾電機製のデータを使用しているので,データ制作担当を行う会社において最も有力な候補だろう。

「次駅表示」を初めて搭載したE233系0番台の行先表示器 先に示した2つの表示データとはフォントが微妙に異なっていたりする

コイト電工

京成電鉄3000形の行先表示器
JR東海313系の行先表示器

上に示した2つの写真は,いずれもコイト電工が作成した表示データを使用している車両の行先表示器である。関東では大手私鉄での採用例が多く,首都圏の私鉄のほとんどがコイト電工製のデータを搭載している。

全体的に文字がのっぺり(?)しているのが特徴的で,テキストサイズも大きめに取られていることから視認性が高いといえる。埼京線に直通している相鉄12000系もE233系ベースであるが,表示データはコイト電工が担当しているため,「森尾電機製のパネル+コイト電工製のデータ」という数少ない組み合わせが誕生する可能性も少ないながらある(実際に阪神電車が唯一,その組み合わせで運行している)。また,コイト電工のデータを表示するパネルを製作している「日亜化学工業」のものを搭載した編成が現れることもありえる。そのため,一部の編成がコイト電工のデータを使用することも考えられるだろう。

三菱電機

東京都交通局6500形の行先表示器
JR東海HC85系の行先表示器

上に示した2つの写真は,いずれも三菱電機が作成した表示データを使用している車両の行先表示器である。三菱電機といえば誘導電動機など「パワーエレクトロニクス分野」が有名であるが,鉄道用行先表示器も生産している。

近年採用例が増えており,「アンチエイリアス」と呼ばれる指定した色と黒の中間色(例えば,背景が黒の環境でオレンジ色の文字を出したとき,オレンジと黒の間に値する色をいう)を出力して文字を滑らかに写し出す技術が高いことで有名だ。写真以外の車両では,山手線などで活躍中のJR東日本E235系も三菱電機の表示器・表示データが使われている。

過去にはJ-TREC新津車両工場で国際展示場駅のアートパネルが表示されたとの目撃が出ている。アートパネルを正確に再現するにはアンチエイリアスの技術が不可欠だ。とはいえ,E235系の行先表示器や表示データは三菱電機以外にも森尾電機も製作に携わっている。アンチエイリアスが搭載しているとはいえ,全車が森尾電機の表示データである可能性もあるだろう。

おわりに

いかがだっただろうか。Azusaは定期テストや資格試験が重なっていたためなかなか記事を更新することができなかったが,3か月ぶりにしてはよく書けたと思う。

なかなか記事を更新できる機会が取れないが,これからも「ヌマレッシャーズ」シリーズをご愛読いただけると幸いである。

やっぱ森尾しか勝たんな

参考文献

  1. 東京臨海高速鉄道株式会社,”りんかい線に新型車両71-000形を導入します”,https://www.twr.co.jp/Portals/0/resources/info/2023/20231106_information.pdf,Access on November.28,2024. ↩︎
  2. 東京臨海高速鉄道株式会社,”りんかい線に新型車両71-000形を導入します (6)車内快適性の向上”,https://www.twr.co.jp/Portals/0/resources/info/2023/20231106_information.pdf,Access on November.28,2024. ↩︎

この記事を書いた人

Azusa
ただの電気系学生
誘導電動機とLEDマトリクスパネルが好物
何卒

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