
特急イブニングウェイ号の乗車記の最後に意味深な記述を入れて記事として出してから早1ヶ月半。相変わらず遅筆には定評のあるびゅうです。いやいくらなんでも遅すぎるでしょ……。ということで今回は「イブニングウェイ」の登場を踏まえて今後仙台都市圏において同種の着席保証サービスが広がっていくのかどうかについて考察していければと思います。
「イブニングウェイ」に関して詳しくはこちらの乗車記もぜひ
イブニングウェイ、どう?
さて記事執筆時点で運行開始から1ヶ月半が経過している「イブニングウェイ」。私は結局乗車記を書いた初日初便以来直接その様子を見に行けておりませんのでSNSなどでの投稿を参照するしかないのですが、見たところ乗車率はまずまずといったところ。
まぁそもそも2両編成という両数自体、首都圏外での着席保証サービスの列車群の中でも最短の編成長ですし、元々需要が大きくないことは織り込み済みでしょうが、それでも決して順風満帆とはいかない様子。とはいえまだ当初の運行期間は1ヶ月以上残っています。定着するかどうかの正念場はむしろこれからでしょう。
常磐ホームトレインをご存知か?
仙台地区における着席保証サービス、実はイブニングウェイ号が初だったわけではありません。運行開始が発表された直後のSNS上において「秋田リレー復活!?」という多数の声に紛れて少数ながらこの「常磐ホームトレイン復活!?」という声があったのも覚えております。
この列車は2005年12月16日に運行を開始しました。区間は仙台駅から原ノ町駅まで、上り1本だけが毎週金曜日のみ臨時列車として運行されていました。毎週金曜日のみの臨時列車、正しくイブニングウェイのご先祖様にあたる列車ですね!車両は当時「スーパーひたち」に使用されていた651系の付属編成の4両編成を使用。スーパーひたちとして到着後に運用に就いていました。
しかしこの列車は2007年3月16日をもって廃止。わずか1年3ヶ月の短い人生でした。SNSがほとんど発達していなかった時代の話ゆえ、詳しい話は主にブログメディアを漁るしかありませんがそれすらやはり少ない以上、中々利用状況などどうだったのかが見えにくい列車ではありますが、ここまで短命だったのですから芳しい利用状況ではなかったことは想像に難くありません。
そのことを踏まえると、イブニングウェイはある意味でリベンジともとれる列車なわけですね。
仙台各方面への着席保証サービスを考えよう
こうした前史を踏まえた上で、ここからは各方面への着席保証サービスが成立するかどうかについて考察していきましょう。
東北本線北方面〜頑張れイブニングウェイ
現状イブニングウェイが走っている東北本線の北側、小牛田方面です。ここの区間の考察は他と違って今あるイブニングウェイが定着するかどうかの話だとは思います。
これに関して、鍵を握るのが石巻線だと考えています。というのも、乗車記でも触れたのですがイブニングウェイ、小牛田駅で石巻線の列車と接続しており、その上その接続での涌谷駅までの所要時間にもフォーカスした宣伝がなされているからです。

個人的に一つ疑問だったのが「そもそも気動車用いてるのだから直通すればいいのでは?」というもの。とはいえ仮にも特急である以上、普通列車の枠を潰してしまっては他の利用者が不便になるので現状の接続に留めているのかとは考えました。
仙石線・仙石東北ライン〜こっちが本命?
宮城県内で仙台市に次ぐ人口を擁する石巻市。その間を結ぶこの路線はつまり宮城県最大の都市間輸送を担っているわけです。また、高速バスとの競合も激しい区間となっており、純粋な需要の大きさに加えてここも成立にあたって大事な要素かと思います。

ただこの系統でネックになってくるのが本数確保です。そもそも仙石東北ラインが成立した理由の一つが仙石線のバイパスで、実際同系統の開業後の仙石線は全て各駅停車として仙台近郊の域内輸送を担っており、混雑率も中々。一方仙石東北ラインは終日毎時一本と決して本数が多いわけではなく、混雑率はこちらも中々。私も何度か赤快速に乗ったことがありますが、仙台駅を発車後、塩釜、高城町でもさして乗客の入れ替わりがなく、結構石巻側まで乗り通していた乗客が多い印象でした。
そんな状況では磐越西線の快速あいづのような一部指定席制を含め、着席保証サービスを導入するには一工夫必要なように見受けられます。とはいえ次項の線区ほど絶望的とも思いませんし、やりようはあるのかなと。
仙山線〜こっちはガチで余裕ない
路線名は仙台と山形の都市間路線、しかしその実態は愛子までの仙台都市圏の域内輸送がほぼ全てなこの路線。一見すると最も需要のある路線に思えます。

しかしこの路線には根本的な問題があります。それはダイヤの密度が高すぎる点です。
そもそも全線に渡って単線という常軌を逸した構造になっているにも関わらず仙台都市圏のJR各線でもかなりの本数があるこの路線。交換可能駅のほぼ全てを使うダイヤ構成になってるしマジで余裕がなさすぎる。ダイヤがタイトすぎるという理由で設定が難しそうな路線でした。
常磐線〜見ようによっては既に……
ちなみに仙台〜岩沼間を含めた路線系統としての常磐線のお話です。先述した常磐ホームトレインが存在したこの路線。いわば一度挫折を味わっているわけです。しかしこの路線、見ようによっては既に着席保証サービスが存在しているのです。それがこちら。

いわゆる仙台ひたちの一本であるひたち30号。上りの仙台発のひたち号は1日3本ありますが、最終便である30号だけ岩沼と亘理の2駅に追加で停車します。そしてこれ、在りし日の常磐ホームトレインと同じ停車駅なんですよね。時間帯こそ違いますが、むしろイブニングウェイ1号と同じ時間帯になっており、常磐線方面の着席保証サービスとして機能しているという見方もできます。まぁイブニングウェイと違ってえきねっとチケットレスでの割引は大きくないんですけどね……。
東北本線南方面〜ご所望は白石?それとも……
常磐線とは路線系統としては仙台〜岩沼間で重複する東北本線の南側。仙台都市圏に含まれるのは恐らく白石までなのでしょうが、ラッシュ時の普通列車は基本的にその先福島まで運転しており、都市間輸送も担っている路線です。仙台〜福島を日常的に移動する需要はもちろん新幹線と高速バスの占めるウエイトの方が圧倒的に多いですけどね……。
こちらは特に障壁のなさそうな線区になっております。混雑率は決して低いわけではないのですが、ダイヤ面での余裕があるのがやはり大きいところ。こちらに関しては車両さえあればすぐにでも始められそうな路線ですね。
車両はどうする?
着席保証サービスにおいて欠かせないのが専用車両。イブニングウェイもそうですが、追加料金が発生する以上クロスシートがほぼ必須になっている感があるカテゴリで、車両も専用のデュアルシートを装備した車両や特急型車両などが充当されるケースがほとんどです。
しかしこの仙台都市圏を司る東北本部、車両の数がそもそも少ないことに定評のある支社、もとい本部でして。2021年と22年に2年連続で地震で東北新幹線がストップした際も代替の臨時快速の車両を遠路はるばる新潟支社から借りてくるなどかなり車両繰りは厳しいです。そんな中で使えそうな車両をいくつかピックアップ。
キハ110系レトロラッピング車(仙台車両センター小牛田派出所所属)

イブニングウェイに現在進行形で充当中の車両です。マジで仙台地区はこいつくらいしかまともな波動用車両がいないんじゃ……。
とはいえこの子、現状のイブニングウェイ以外の着席保証サービス列車が登場したとしてもそちらに充当される可能性は高くないと思っております。理由は単純で、所属先である小牛田に向かうのがイブニングウェイである以上はそちらに最優先で充当すべき車両だからです。
キハ110系0番台をもう1本とか増やせればいいんですけど快速南三陸も亡き今中々それも難しそうです。
E657系(勝田車両センター所属)

特急ひたちとして1日3本が仙台駅まで顔を出す車両です。元来急行型として製造されたキハ110系と異なりこちらは正真正銘の特急型。全席コンセントも完備しており居住性は申し分ないこの車両。ぜひ仙台でも活躍していただきたく……とは問屋が卸さないのが世知辛いところ。
まず10両固定編成という構造が中々厳しいところ。入線できる範囲が単純に狭まるというのもそうなのですがそれ以上に、1編成全て使うと高確率で供給過多になるんですよね。まぁそこは締切でなんとかなるとはいえ。
それ以上に問題なのが現状のひたちのダイヤ及び運用との兼ね合い。現行ダイヤでは基本的に下り最終のひたち21号が仙台に一泊する運用になっているのですが、仙台着が21:34とかなり遅い時間になっています。仙台でE657系を自由に使えるタイミングがこれ以降である以上、現状のままのダイヤでは中々難しいです。
HB-E300系SATONO(仙台車両センター小牛田派出所所属)

うわーん座席数が少なすぎます!!!
それはさておき、ただ真面目な話ガチで座席数は少ないです。2両で50席程度しかない。流石に着席保証サービスに供するには役不足感が否めません。その50席にしたって、半分程度はボックスシート、それもグリーン車ですからね。観光列車を通勤に使うには色々不都合が大きいというお話でした。
まとめ
結局ここでもネックなのが車両面なんですよね……。需要に関しては間違いなく存在しているでしょうし、ダイヤ的に設定することも不可能ではない線区はあります。結局車両なんです。
そもそもE721系の導入が進められていた2000年代後半以降、とにかく仙台地区は減車基調でした。2020年代でも快速あいづ指定席連結と仙台空港アクセス線増車を車両投入なしで賄っていますし。そこをどうにかできないか。仙台地区に着席保証サービスが根付くには現有の車両だけでは中々難しいのではないかなぁという結論になりそうです。

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仙台支社→東北本部→福島事業本部
動きが目まぐるしい…
- 2025年8月20日東北地方【常磐ホームトレイン】仙台都市圏での着席保証サービス一考
- 2025年8月5日関東甲信越【21世紀のデフレナンバー】東武50000型の付番の話
- 2025年7月11日東北地方【定着なるか】特急イブニングウェイ乗車記
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