奥深き架鉄の世界 〜半架編〜

皆様こんにちは。兵庫が生み、奈良が育て、愛知に住まわせてもらっている凶人、杉山英澪です。さて、鉄オタの区分的に私は「架空鉄」に当てはまることでしょう。休日は架空鉄道の創作ばかりをしていますからね。

もしかしたら、この記事を読んでいる方でも、「架空鉄道を作っているよ」という方がいるかもしれません。しかし、多くの方が「架空鉄道は作る気起きねえわ」と思っていることでしょう。更には、「架空鉄道?何それ?」と思う方もいるかもしれません。架空鉄道は比較的敷居が高いようなジャンルかもしれませんからね。では、ここで一発、架空鉄道の作り方について、長く語ってみようかと思います。

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そもそも架空鉄道とは何か?

架空鉄道は、その名の通り「実在しない鉄道」です。つまり、架空鉄道は全て空想上のもの、創作物となります。そんな架空鉄道は、主に2種類に大別できます。

まず1つ目は、現実世界に存在する設定である架空鉄道です。これらの架空鉄道は、基本的に日本国内でありますが、偶に海外進出を果たしているものもあります。私は、これらの架空鉄道を「半架」と呼んでいます。

もう一つは、架空世界に存在するもの。こちらは、その架空鉄道が運行されている世界線から創作しなければなりません。私はこのような架空鉄道を「完架」と呼んでいます。

今回の記事では、半架について解説します。

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架空鉄道を作ろう(基本設定編)

どこに敷設するか考える

半架鉄道の作成は、どこに敷設するかを決めないと始まりません。しかし、どこに路線を敷設するか決定するのにどうすれば良いのか分からないという人も多いのではないかと思います。そこで活用すべきなのが「地理院地図」です。

この写真のように、地理院地図を見るだけで、標高、都市の分布、交通網などが一目でわかります。この地理院地図を見て、鉄道路線が無い地域、所謂「鉄道空白地帯」に架空鉄道を作ってみましょう。

路線を考える

どこに作るか決めたら、実際に路線を敷いてみましょう。このときに活用できるサイトを幾つか紹介します。

空想鉄道

空想鉄道は、グーグルマップ上に路線を引くことの出来るサイトです。2015年の開設以降、作品数はどんどん増えていき、2024年10月現在ではおよそ37万もの作品が登録されています。

このように登録し、それを他者にアピールすることさえ出来ます。また、右上の「コメ」というところはコメント欄です。このコメント欄では、他の作者との交流をすることが出来ます。この交流によって、作者は設定を変更することが出来ます。また、他の架空鉄道との直通運転を募集しているところもあり、非常に活発なサイトです。

しかし、この空想鉄道はかなり民度が低いという欠点を抱えています。このサイトは、何かアカウントを作らずとも、作品を投稿することができます。故に、荒らし目的でこの空想鉄道にアクセスしている者も少なからずいるというのが現状です。さらに、古参勢によれば低年齢化も進んでいると言います。実際、空想鉄道のユーザーは小学生も多いようです。

なお、こんなに偉そうに空想鉄道について語っている私は、空想鉄道歴はたったの1年10ヶ月。人に誇れるほど長くやっていません(笑)

空想別館

こちらもGoogleマップ上に路線を引き、作品登録を行うことが出来るサイトです。機能自体は先ほど紹介した空想鉄道とあまり変わらないのですが、一つ決定的な違いがあります。それは、ログイン制のサイトであるということです(空想別館の利用にはグーグルアカウントが必要)。つまり、荒らしの数が空想鉄道と比べて少ないのです。それを考慮すると、落ち着いて架空鉄道を制作できるのは空想別館の方なのかもしれません。

見た感じだと空想鉄道と大差ないかもしれませんが、先ほど述べた通り空想別館はログイン制です。

しかしながら、ログイン制である故の課題点もあります。それは、作者同士の交流が空想鉄道よりは難しいということです。空想別館の利用には、Googleアカウントを必要とするため、空想鉄道よりは敷居が高いです。そのため、空想別館を利用できない人も多いようです。


注)両サイトはリンクフリーです

路線敷設のコツ

川は垂直に渡る

橋梁を建設するには、勿論多額のお金がかかります。だからこそ、鉄道会社は川を渡る距離を短くしようと、川に対し垂直に橋を架けることが多いです。

上は南武線、下は阪急神戸本線・宝塚本線の橋梁です。確かに、それぞれ川に対し垂直に渡っていますね。なお、これらには勿論例外が存在するので、その辺はご承知おき下さい。

市街地はなるべく潰さない

後述する「歴史」と関係してくるのですが、鉄道開業前からあった市街地を潰すのはなるべく避けましょう。

けれども、「古地図なんて持っていないよ」という人が大半だと思います。私も勿論そのうちの一人です。そんな人たちにオススメしたいのが、「空中写真タイムトラベル」です。このサイトでは、様々な場所の航空写真を、時期別に閲覧することが出来ます。

上は2024年現在の、下は1978年ごろの写真で、写っているのは兵庫県宍粟市の中心部(旧宍粟郡山崎町)です。これらから、かつてどのようなところが市街地で、どのようなところが田畑、空き地であったかがよくわかります。

勾配について少し考えてみる

鉄道は勾配に弱いです。そのため、車と同じように峠越えをすることが出来ません。そこで役に立つのが、初めの方で触れた「地理院地図」です。地理院地図では、「+」マークで刺された位置の標高が分かります。さらに、地理院地図には等高線もしっかり描かれてあるため、標高の移り変わりがよくわかります。それが、勾配に直結していくのです。

なお、国の基準では勾配の限界は35‰(1000mで35m登る勾配)となっています。そのため、この35‰を目安に、路線を敷いていくことをお勧めします。なお、この勾配の限界に関しても例外があり、神戸電鉄や箱根登山鉄道などには、普通に35‰超えの急坂が存在しています。 

歴史を考える

本格的な架空鉄道に於いては、路線だけでなく、歴史も欠かせません。どのようにしてその鉄道が誕生したのか、どうしてそのようなルートになったのかなど、様々な裏付けをしてくれるのが歴史です。そんな歴史に関連してくる事象などを幾つか紹介していきます。

阪神電気鉄道の開業(1905年)

阪神電気鉄道は、阪神タイガースの親会社として有名ですが、鉄道路線に関しては、大阪湾沿岸の下町を経由しています。そんな阪神電気鉄道は、日本における最初のインターアーバン(都市間鉄道)です。現在では、大阪と京都を結ぶ京阪電気鉄道や、東京と横浜を結ぶ京浜急行電鉄など、日本には様々なインターアーバンが存在していますが、その先駆けとなったのがこの阪神電気鉄道です。

↑阪神車の写真が無かったので、山電の車の写真を掲載。

この阪神電気鉄道の最大の特徴は、私設鉄道法ではなく、軌道条例に依拠したことです。阪神電気鉄道は、当時軌道条例を所管していた古市公威氏から「線路のどこかが道路上にあればよかろう」という了解を得たことから、敢えてごく一部の区間だけ併用軌道上に敷設し、それ以外は高規格な専用軌道にしたのです。この法の抜け穴をついた奇策は成功し、この後に続々と他の会社が続いていくようになったのです逆に言えば、この阪神電車の免許取得以前に、インターアーバン路線の免許を取得した設定にするのは、少し無理があるのかもしれません。

鉄道国有法の施行(1906年)

この法律は既設の私設鉄道を国有化する目的で公布されました。1906年10月以降、北海道炭礦鉄道(函館本線の大半など)や日本鉄道(東北本線の大半など)、阪鶴鉄道(福知山線)などが国有化されていきました。

箕面有馬電気軌道の成功(1910年)

1910年、またも阪神地域の鉄道が日本の私鉄史を変えました。箕面有馬電気軌道、今の阪急電鉄です。

同鉄道は、開業時はとても都会とは言えないような地域と大阪市を結んでいました。もちろん、そのままでは鉄道事業は成功しないということが、箕面有馬電気軌道の経営に大きく関与した小林一三氏の目には見えていました。そこで、彼は「池田新市街」、のちの「池田室町住宅」の開発を計画し、それを実行しました。これは日本初の試みでした。しかも、池田新市街は、当時珍しかった割賦販売、今で言う住宅ローンを取り入れました。そうして、池田新市街内を、「手が届かないわけではない」というレベルにすることに成功しました。

箕面有馬電気軌道は、単純に鉄道で人々を輸送するだけではなく、人々の暮らしを生み出し、生活の質を向上させることに努めたのでした。このスタイルは今でも阪急電鉄に受け継がれている他、このように都市開発と鉄道敷設をセットで行う事例も後を絶ちませんでした。その最たる例が目黒蒲田電鉄、いまの東急電鉄でした。

陸上交通事業調整法の施行

1938年、乱立した交通事業者の整理とそれによる利便性向上を目的に「陸上交通事業調整法」が施行されました。これにより、東京では所謂「大東急」、大阪では近畿日本鉄道、富山では富山地方鉄道が誕生しました。

この法律は戦争の開始によるものだと思われがちですが、大きな目的は交通事業者の統合であるため、戦争要素はありませんでした。しかしながら、陸運統制は結局戦時下になっても続き、そこから戦争味を帯びてくるようになりました。

これらの合併を見ていくととても興味深いので、鉄道好きなら架空鉄道を作らなくとも是非知っておくことをお勧めします。

不要不急線指定・戦時国有化

時は流れて戦争の時代へ。資源に乏しい日本では、金属類の回収が始まりました。それに伴って、鉄のレールを走行する鉄道にも影響が出ました。1941年8月30日以降、政府によって線路を撤去させられた路線がいくつも存在しています。これを不要不急線と言います。

不要不急線に指定された路線の例として、国鉄有馬線(三田〜有馬温泉)、信貴山急行電鉄(高安山〜信貴山門)などが挙げられます。多くの路線が、利用者が少なかったり、観光地へのアクセスを担っていたりしたために休止となりました。これらのうち多くの路線は、民営の場合は大半がそのまま廃止、国有の場合でも戦後の赤字による廃止などで姿を消していっています。

また、戦時体制下、休止とはならなかったものの、国によって買収された私鉄もありました。これらを戦時買収私鉄と呼びます。この頃国有化された路線の例として、宇部線を運営していた宇部鉄道、加古川線や今の北条鉄道にあたる北条線などを運営していた播丹鉄道などが挙げられます。

モータリゼーション・国鉄の赤字

戦後、日本では急速に自動車が普及し、車社会化が進みました。これをモータリゼーションと言います。このころ、日本では初の高速道路である名神高速道路が開通したり、国道の指定が行われたりしました。それにより、鉄道に乗る機会が次第に減っていったのです。そうして、大都市圏の鉄道を除けば、利用者数は減少し始めたのです。なお、大都市圏の鉄道はというと、人口集中に伴ってむしろ混雑が激化しており、対策に追われていました。地方と都市の格差が浮き彫りになったのもこの頃です。

それに伴って、国鉄も慢性的な赤字となりました。勿論、モータリゼーションも理由ですが、それよりも大きな理由がありました。日本鉄道建設公団の存在です。同公団は、地方と都市の格差の是正を目的に、地方に鉄道を建設しまくったのです(地方以外にも勿論鉄道を建設しましたが)。勿論、そうして開業した鉄道はだいたいが赤字路線でした。例えば、神岡鉄道に転換され、2006年に廃止された神岡線、2003年に廃止となった可部線の可部〜三段峡間などですね。これらの赤字地方路線は国鉄のお荷物となってしまい、国鉄の経営の足を引っ張ってしまいました。そうして、1987年には国鉄の民営化が行われました。

三セク鉄道の増加

1981年、特定地方交通線が制定されました。これは、国鉄の路線で「地方交通線」に該当するもののうち、輸送密度が4000人(日)を下回ったものを指します。これらの鉄道のうち、他社への転換の対象となったのは83路線でした。これらのうち、4割ほどに相当する38路線は、鉄道に転換されました。さらに、鉄道に転換された全38路線のうち、およそ94%に相当する36路線は第三セクター鉄道に移管されました。例として、岡多線を引き継いだ愛知環状鉄道、北条線を引き継いだ北条鉄道、矢島線を引き継いだ由利高原鉄道などが挙げられます。


これらは、いずれも日本の鉄道史を変えた出来事となっています。私は特に、陸上交通事業調整法の施行やモータリゼーションは日本の鉄道をガラッと変えているような出来事であると思います。

架空鉄道を作ろう(関連設定編)

路線、歴史が何となく出来てきたら、関連設定を深めていきましょう。

駅の規模を考えよう

鉄道にとって、乗降の場となる駅は欠かせません。そんな駅について設定を深めてみましょう。

まず、駅の位置からどのような感じかを読み取ります。この時も、地理院地図を是非活用してみましょう。

例えば、ここの辺りに架空の私鉄の途中駅を設けるとしましょう。皆様ならばどのような構造にしますか。私ならば、加古川という比較的大きな都市の中心に位置する駅となるに違いないと思ったため、きっと2面4線の駅にしているでしょう。また、加古川駅が高架であることを鑑みて、その途中駅も高架構造にするかもしれません。

また、利用者数についても考えてみましょう。JRの加古川駅の利用者数は、一日あたりおよそ2万人です。そして、播州地区に於ける鉄道は、JRが中心となってると言えそうですので、私だったら利用者数を1万4千人(日)ほどにしているでしょう。なお、これはあくまでも一例です。

車両の設定を深めよう

鉄道の駅や線路があっても、人を乗せる車両ななければ、鉄道として意味を成しません。そこで、車両を作ることをお勧めします。

・・・けれども、車両を作るのには、ある程度の美術の才能が必要ですし、時間がかかります。そういうときこそ、車両の設定を深めましょう。車両を描けなくても、車両のイメージを上手く捉えることで、その路線の印象などが分かってきます。以下の設定についてはなるべく考えておきましょう。

  • 製造年
  • 製造所
  • 車両の寸法
  • 編成、製造数
  • 最高速度
  • 運用路線
  • 制御装置
  • 運用開始時期

これらを最低限設定しておけば、架空鉄道としての味が出てきます。また、も〜っと深めたいよ、という人は、

  • 起動加速度
  • 定員
  • 車両の重さ
  • 台車の形状
  • 保安装置

なども考えておくと良いでしょう。また、時間に余裕がある人、絵に自信がある人などは、実際に描いてみても良いのではないでしょうか。

ちなみに、私も架空鉄道の車両を描いたことが何度かありますが、やはり大変です。床下機器とか台車とかはとても難しかったです。

忘れてはならない会社情報

鉄道路線には、公営の場合を除けば、基本的に運営会社が存在しています。作った架空鉄道がら現実世界にある鉄道会社の路線の1つならば良いですが、架空の会社が運営している架空鉄道の場合は、運営会社について設定を深めていく必要も出てくるかもしれません。仮に設定するならば、以下の項目は必須といっても良いでしょう。

  • 社名
  • 本社所在地
  • 代表者名(代表取締役社長など)
  • 設立日
  • 設立者
  • (だいたいの)売上高

この会社に関連する設定については、Wikipediaの記事を参考にしても良いと思います。寧ろ、参考にしたほうが良いくらいです。

まとめ

ダラダラと架空鉄道について語り、しかも上から目線で解説しているようなヤバい記事をここまで読んでくださり、大変有難う御座いました。

最後に、私から1つ言わせてください。架空鉄道はあくまでも趣味の1つです。そのため、架空鉄道に熱中しすぎて学業に大きな影響が出た、架空鉄道を作るために夜更かしをしたら寝不足気味になったといったことが起こったら、架空鉄道の制作はなるべく控えましょう。本業や健康状態などをしっかり気にしてください。その上で創作活動に励みましょう。

また、今回は「半架編」でしたので、勿論「完架編」も存在します(ぼちぼち執筆を進めています)。完架編は、12月のどこかで公開予定です。乞う御期待!

この記事を書いた人

杉山英澪
杉山英澪
架空鉄、領収証鉄。名古屋市守山区住みの中学生です。
10分で読めるような手短な記事ばかりを書いています

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