元JR東日本・E501系の導入で、JR九州は415系を今後どうするの?

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2025年9月より、JR東日本で役目を終えたE501系が、JR九州の小倉総合車両センターへ順次JR貨物の甲種輸送列車にて運ばれている様子が目撃されています。

【60Hz対応済?】JR東 E501系の2編成が九州・小倉へ甲種輸送
JR東日本ではこれまで、E531系とともに少数派のE501系が運用されてきました。2024年3月改正で5両編成の運用が終了し、前後して4編成のうち1編成が廃車解体・1編成が観光列車に転用されました。2025年9月9日より、残されていたK75...

すでにJR東日本の工場内で一部の改造を終えたうえでJR九州へ譲渡されているようで、今後は九州地区で運用するにあたり必要な改造工事などを施工の上で、415系に代わって小倉・門司~下関間の関門トンネルを超える運用を主体に使用していくものと思われます。

415系1500番台

しかしここで気になる事柄が一つあり、それは「置き換えられた415系はどうするの?」という点。

今回の記事では、E501系の運用方法を予測しながら、今後415系がどういった運用をしていくのかを予想してみましょう。

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E501系で完全に415系を置き換えるのは無理!E501系はどう使うの?

まず、現在415系はステンレス車体・室内オールロングシートの1500番台のみが在籍しており、その数は4両編成×14本=56両となっています。

いっぽう、E501系はすべて4両編成にすると仮定した場合、最大でも7編成分=28両しか導入することができず、これでは415系をすべて置き換えるのは無理があることが分かります。

E501系自体は10両・5両各4編成ずつ製造されましたが、そのうち5両編成のK751編成が廃車・解体されており、最大でも7編成分しか譲渡することができません。

そのため、仮にE501系の導入で直接415系を置き換えたところで、半数またはそれ以上の415系が残ることは必須であると言えます。

つまり、E501系をただ単に導入しただけでは、後述で紹介する理由も合わせて、415系を完全に置き換えるのは無理があると言わざるを得ません。

E501系(画像:りょー)

また、E501系は片側4扉構造の車体を持つ電車である一方、JR九州管内で広く活躍するほかの電車が片側3扉となっているため、運用制限もかけられることとなります。

その理由は、一部駅において部分的に3扉車用の固定柵が設けられているため。

大野城駅で撮影した811系 ホームの一部に固定柵があることが分かる

鹿児島本線では九産大前駅、笹原駅、大野城駅などがそれに該当し、この関係で主力路線である鹿児島本線での運用は「門司港~南福岡間」のみで「全区間快速運転をする」場合にのみ運用が可能という制限が課せられてしまいます。

大野城駅には快速系列車がすべて停車するため、そこに到達する前の折り返し可能駅ということで、南福岡駅までということになります。

また、日豊本線でも安部山公園駅2番のりばに3扉車用の固定柵が設けられており、日豊本線での営業運転も快速列車でしかできないという状態となっています。(上り小倉方面行きのみ普通列車でも可能?)

プラスして、連結作業時に配線接続の省力化が可能な電気連結器を装備していないようで、連結運転を想定していないと思われるのもポイント。

4両編成の列車がない訳ではありませんが、特に快速系種別を中心に、鹿児島本線の博多駅周辺エリアで運用する際は6両以上の編成にすることが望ましく、415系のように2編成併結した8両編成での運転は想定されていないのかもしれません。(JR九州側で自社規格の電気連結器を装備の上で対応する可能性はあります。)

この関係で、鹿児島本線や日豊本線などで通勤輸送としても活躍する415系を完全に置き換えるというのは難しく、E501系は関門トンネル関連の列車で専従的に使用することが想定されるもの。

それにプラスして、所属車両基地で行う検査などを受けるために、日豊本線の小倉・西小倉~大分間にて快速・普通列車または回送列車(415系と同じ大分車両センターに所属させる場合)、または鹿児島本線の門司港・門司・小倉~博多・南福岡間で快速列車(博多~南福岡間も快速運転必須)または回送列車(鹿児島本線を走る813系などが所属する南福岡車両区に所属させる場合)にて、わずかながら走るという運用が取られるのではないかと想定します。

直方車両センターに所属させ、送り込み・返却を福北ゆたか線運用とする予想もあるようです。
また、門司港駅に常駐という形を取るという予想もあるようです。

執筆者としては南福岡車両区への配属、送り込み・返却運用は2編成を併結した8両編成での快速列車にて行うことを予想しています。

そのうえで、余剰になった415系を同数廃車させる、という動きが予測できるのではないかと推測できるでしょう。

しかし、執筆者はこれとは違った動きになるであろうことを予測しており、今回はそれを紹介していきます。

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E501系が鹿児島本線の救世主になるかも?

管内各地の減便・減車とその後の対応

ところで2022年9月のダイヤ改正では、国鉄から引き継ぎ(+1編成JR東日本からの譲渡車 もう1編成はそれ以前に廃車済)、老朽化が進んでいた、鋼製車体の415系がすべて運用を離脱することとなりました。

415系鋼製車

このとき運用を離脱した415系は大分車両センターに所属して日豊本線や鹿児島本線などで使用される車両が16編成、鹿児島車両センターに配属され鹿児島地区で使用される車両が5編成の合計21編成が稼働状態にありました。

415系鋼製車の一斉置き換えに当たっては、南福岡車両区所属だった821系全10本の熊本車両センターへの転属や(同時に821系は熊本地区の鹿児島本線や豊肥本線での運用がメインに)、西九州新幹線開業によって長崎本線の肥前浜~長崎間で電車が走れなくなったことによって余剰となった佐世保車両センター所属の817系などを活用。

2022年9月ダイヤ改正で全車が南福岡から熊本へ転出した821系

余った817系を鹿児島車両センターへ転属させて鹿児島地区の415系を置き換えながら、減便や減車、一部813系や821系全車へのワンマン運転対応改造などを施して、21編成84両という膨大な数の415系鋼製車を一斉に使用終了としたのでした。

しかし、現在も発展を続ける福岡都市圏を中心に、この減便・減車はかなり悪手となってしまい、減便・減車となる分の輸送力をカバーするために行われた813系の輸送力増強工事(=座席数の大幅減少)による問題と合わせて、利用者から不満が噴出することに。

地元紙や地元自治体からも多数の苦言を呈するほどにまで、問題が拡大してしまいました。

各所から顰蹙を買った813系輸送力増強工事施工車の扉間(写真は3100番台)
5列ある転換クロスシートの両端を撤去し3列としたことで座席数が大幅減少
ヒーターごと撤去され冬季の車内温度保持にも課題があった

その後、余分に減らしすぎた415系1500番台の運用数を増やす形で増発が逐一行われ、ダイヤ改正後使用休止状態にあったJR東日本からの譲渡車・Fo1501編成も2023年末より運用に復帰。

813系輸送力増強工事施行車に対する不満は、扉間の座席をロングシート化改造を急ピッチで進めることによって、輸送力増強工事によって増やした車両あたりの輸送力を維持しつつ、座席数を増加させる施策が図られています。(この工事は未施工の車両へも施行されています)

ロングシート化改造後の813系の車内(確か2200番台のはず)

しかし、一挙に21編成もの415系を代替車両なしに減らしてしまった代償は大きく、現在でも十分な輸送力を確保できているかは微妙と言えます。

そのため、現在のJR九州は、運用可能な通勤電車の車両数を増やす対応に迫られている状況にあると言えるのです。

E501系導入で鹿児島本線の増発・増結ができる?

このような理由から、執筆者はE501系の導入理由を老朽車取替目的よりも「福岡都市圏を中心とした鹿児島本線での増発・増結」を目的とする導入であると推察します。

まず、現在の415系の運用数は14編成配置に対して13運用となっており、このうち関門トンネルを超える列車に絡む運用が実質的に4運用分となっています。

つまり、この運用相当をE501系に置き換えることで、鹿児島本線で8両編成の列車を2編成分増やせるということに繋がる計算となり、列車内や博多駅などの混雑緩和へ繋げることができます。

また、列車の増発をしない場合でも、415系8両編成で既存の列車を置き換えたぶん、9両編成や8両編成の列車の割合を増やすということも可能です。

さらに、笹原通過の快速列車または区間快速列車限定とはなってしまいますが、8両編成を組めるようにできれば鹿児島本線においてE501系の送り込み・返却運用を営業列車に仕立てることも可能と思われます。

4扉車で全車ロングシートで8両編成という構成は、混雑の激しいラッシュ時の鹿児島本線における運用にもぴったり。

E501系自体も関門運用を主体としつつ、ラッシュ時の混雑緩和で活躍してくれることを期待できるかもしれません。

E501系(画像:りょー)

415系自体はどうやって置き換える?

さて、最後に415系の置き換えですが、E501系の中古導入によって、JR九州においては「原則交流電車以外の新車は自社で導入しない」という方針が出来上がったとも取れるかと思います。

いっぽうで、車齢がもう間もなく全車40年を経過しようとしており、老朽化が進む415系1500番台の置き換えも課題であり、小倉総合車両センターの移転が予定されている2031年度までには全廃させなければならないのでは?と考えております。

ではE501系で415系を置き換えないのなら何で置き換えるのかですが、そちらは交流専用の3両または6両編成の新車を導入することで置き換えられると考えられるのではないでしょうか。

この際、同じく国鉄型電車で老朽化の進む、宮崎・鹿児島地区で主に走る713系も置き換えられると思われ、それを見越して415系の本数より少し多めに導入することが予想されます。

この多めに導入した分で余剰を出し、その余剰車のやり繰りで817系を捻出して、415系だけでなく713系を置き換えるのではないかと想像しています。

さいごに

E501系は低コスト・短期間で関門区間の運用を置き換えつつ、福岡都市圏の混雑緩和に寄与してくれる存在になってくれると期待しています。

このような活躍での移籍は正直意外でしたが、今後も末永く活躍してくれると嬉しいですね。ちなみに運用開始は2027年3月ダイヤ改正からだと思っています。

ところで、E501系がダメになったら次はどれを入れるんでしょうか。521系でしょうか、はたまたつくばエクスプレスからでしょうか…

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こつあず鉄道ちゃんねる【鉄道・交通系解説】
鉄道系解説動画を中心に投稿している「こつあず鉄道ちゃんねる」へようこそ!★どんな動画を上げているチャンネル?★20分~30分くらいの鉄道や交通に関する解説動画を投稿しております。内容は取っ付きやすいモノから少し難しいものまで様々、得意分野は...

参考

この記事を書いた人
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鉄道をはじめとした乗り物の動画を作りつつ、趣味に明け暮れる日々。最近は将来設計的な悩み事が色々と…

コメント  ご意見やご感想等お気軽にどうぞ。

  1. 通りすがりの素人 より:

    拝見しました。

    福岡圏の混雑問題、大変ですね…4両415を3両の交流車両に置き換えたのですから当然です。
    501系基本編成は10連です。
    サハ2両抜いて、8連で譲渡してほしいですね。
    それとも10連のままで、クハ+クハ脱車で「12連貫通」とか??

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