
ご無沙汰してます。ふぺです。
首都圏でお馴染みの「普通列車グリーン車」。長距離の移動や日々のちょっとした贅沢として1度は乗ったことがある人も多いと思いますが、実はこの「普通列車グリーン車」というのはかつて関西地方でも走っていました。関西地方では現在「Aシート」と呼ばれる関西版の普通列車グリーン車も存在しますが、一体どのようなものだったのでしょうか?
今回はそんな関西地方を走った京阪神快速グリーン車「サロ113」の話をしていこうと思います。
新快速「Aシート」とは
…と、その前に

新快速「Aシート」というのは2020年よりJR西日本が始めた有料座席サービスで、JR神戸線・京都線・琵琶湖線で運行されている一部の新快速の9号車にて連結されています。「Aシート」という名前の由来は多々あり、Amenity(快適性)のA、JR神戸線・京都線・琵琶湖線の路線記号であるA、関西弁で「良い」を表す「えぇ(A)」が由来となっています。

車内の扉と座席の間は簡易的なデッキで仕切られているほか、座席は683系や287系などで使用されているものと同じリクライニングシートを採用。また各座席にコンセントを設置、無料Wi-Fiまで完備しているという非常に快適な車内になっています。
そんな新快速「Aシート」の価格は以下の通りです。
指定席券 | 840円 |
チケットレス指定席券 | 600円 |
WESTERポイントアップグレードチケットレス | 300ポイント |
このようになっており、みどりの券売機で通常の指定席券を買うよりもe5489等のアプリからチケットレス指定席券を買ったほうが240円ほどお得になりますが、青春18きっぷを所持している場合に通常の指定席券を買えばAシートに乗車することができ、姫路から野洲まで快適に移動することができます。

また価格は首都圏の普通列車グリーン車とは違い、50キロまで○○円、100キロまで○○円…という制度はなく一律で840円とされており、例えば大阪⇨京都でAシートに乗ると840円かかりますが、大阪⇨野洲でAシートに乗っても同じ840円かかるということになります。
そんなAシートが連結されている新快速は以下の通りです。
平日(野洲⇨姫路方面) | |
新快速1号 | 野洲(08:59発)⇨姫路(11:03着) |
新快速3号 | 野洲(09:43発)⇨姫路(11:48着) |
新快速5号 | 野洲(14:45発)⇨姫路(16:48着) |
新快速7号 | 草津(18:36発)⇨網干(20:51着) |
新快速9号 | 草津(20:06発)⇨姫路(22:05着) |
新快速11号 | 野洲(20:28発)⇨姫路(22:34着) |
平日(姫路⇨野洲方面) | |
新快速2号 | 網干(05:45発)⇨野洲(08:12着) |
新快速4号 | 網干(06:33発)⇨野洲(09:01着) |
新快速6号 | 網干(07:22発)⇨野洲(09:48着) |
新快速8号 | 姫路(16:10発)⇨草津(18:07着) |
新快速10号 | 網干(16:53発)⇨野洲(19:16着) |
新快速12号 | 姫路(17:41発)⇨草津(19:37着) |
土休日(野洲⇨姫路方面) | |
新快速21号 | 草津(10:37発)⇨姫路(12:32着) |
新快速23号 | 野洲(11:45発)⇨姫路(13:47着) |
新快速25号 | 野洲(12:45発)⇨姫路(14:47着) |
新快速27号 | 野洲(18:27発)⇨網干(20:50着) |
新快速29号 | 草津(19:06発)⇨網干(21:17着) |
新快速31号 | 草津(20:06発)⇨姫路(22:05着) |
土休日(姫路⇨野洲方面) | |
新快速22号 | 網干(07:38発)⇨草津(09:51着) |
新快速24号 | 姫路(08:40発)⇨野洲(10:43着) |
新快速26号 | 網干(09:27発)⇨野洲(11:43着) |
新快速28号 | 姫路(15:11発)⇨野洲(17:15着) |
新快速30号 | 姫路(16:10発)⇨野洲(18:16着) |
新快速32号 | 姫路(17:41発)⇨草津(19:37着) |
平日※運転日注意 | |
新快速80号 | 姫路(18:10発)⇨野洲(20:15着) |
新快速81号 | 野洲(20:59発)⇨網干(23:19着) |
土休日※運転日注意 | |
新快速90号 | 姫路(10:42発)⇨野洲(12:43着) |
新快速91号 | 野洲(13:45発)⇨姫路(15:47着) |
このようにAシートは通勤通学時間帯に多く運行に網干・姫路と草津・野洲の間で運行されており、比較的乗りやすい列車となっていますので関西地方にお住まいの方はぜひ日々のちょっとした贅沢としてAシートに乗車してみてはいかがでしょうか…
※各駅の到着時刻等やAシートの細かい情報については以下に貼っている公式HPから参照してください。

かつていた京阪神快速「グリーン車」
ここまで新快速の「Aシート」について話してきましたが、では冒頭で話した京阪神快速の「グリーン車」というのは一体どのようなものだったのでしょう?

時は今から59年前の1964年。当時宮原電車区(現網干総合車両所宮原支所)に配置されていた80系を置き換える目的で113系が配置され、京阪神快速こと現在のT電として活躍していました。
ここで一部の80系に付いていた一等車を置き換えるべく1966年より連結されたのが京阪神快速「グリーン車」だっのです。このグリーン車は当時横須賀・総武快速線に投入される予定でしたが、従来より定員が少ないと不評だったため関西地区へ転属することになったのです。
当時宮原電車区と高槻電車区に配置されていた113系の基本編成は7連でしたが、この転属してきたグリーン車が連結されたことにより基本編成が8連となりました。また1968年のダイヤ改正「ヨンサントオ」にて15分おきに快速が走るようになった時期には全ての京阪神快速が113系に統一されており、グリーン車も連結した快速列車も結構な頻度で走るようになり、また宇野線の新幹線接続快速に使用されるようになるなど大きく活躍するようになりました。
グリーン車が連結された背景
ではなぜ京阪神快速にグリーン車が連結されたのでしょうか?

これに関して理由は多々ありますが、このグリーン車連結に大きく関わってくるのが東海道新幹線。当時の東海道新幹線にもグリーン車が連結されてましたが、当時のグリーン車は料金を払えば誰でも乗れる今とは違い、華族といった上流階級しか乗ることができないものだったのです。
また当時は新幹線から在来線に乗り換えて神戸港へ向かう需要があり、京都の旧華族や軍の幹部の利用が多くありました。そして”そのような階級の人たちを我々一般人と同じ車両に乗せるわけにはいかない”…という理由からグリーン車が連結されたと言われています。
また当時のグリーン車は”設備の差”というより“階級の差”を分けるために連結されているという面が強く、設備面が求められる今とは違いって車内の”空気感”が求められる時代だったのも関係します。
Aシートとの比較

次に京阪神快速グリーン車と新快速「Aシート」の価格を比較してみましょう。
新快速「Aシート」通常料金 | 840円 |
新快速「Aシート」チケットレス指定券 | 600円 |
京阪神快速グリーン車(100キロまで) | 700円 |
京阪神快速グリーン車(100キロ以上) | 1500円 |
このようになっており、京阪神快速グリーン車の場合神戸⇨京都であれば700円となっていますが、姫路⇨野洲といった長距離を乗る場合は1500円かかるというかなり高額な設定となります。また姫路から野洲まで乗るといった場合、通しで買うより一度大阪で区切って買うほうが100円ほど安くなるという仕様になっています。
対するAシートはどの区間乗っても料金は変わらないため、短距離の利用には向いてませんが、長距離の移動には向いている設定となっています。
グリーン車の終わり
このような京阪神快速グリーン車でしたが、関東とは対照的に関西では利用者の少なさが目立つようになりました。
これは登場当時と変わって誰でもグリーン車に乗れるようになっても「運賃以外の余計なお金を払いたくない」という関西人の倹約思考が関係しているほか、当時ライバル関係である阪急や京阪などでは運賃のみで転換クロスシートなどの豪華な座席に座る事ができたことが関係していると思われます。

そして1970年からは新快速が登場。現在の新快速は時速130kmで爆走するイメージが定着していますが、当時の新快速は快速とあまり差がなく運行本数も少なかった事からあまりグリーン車の需要は期待はされておらず、結局グリーン車は連結されないまま運行がされていました。

しばらく新快速と京阪神快速グリーン車は共存していましたが、1980年からは新快速に117系が投入。この117系は京阪間での競争力を高めるべく転換クロスシートを装備するなどして従来より快適性を高めた事により、ただでさえ少なかった京阪神快速グリーン車はここでトドメを刺されることになります。こうして同年1980年のダイヤ改正にて京阪神快速グリーン車は運用が消滅。不要となったサロは一部が廃車になったほか、関東の横須賀・総武快速線へ転出されるようになりました。
おわり
いかがだったでしょうか?
実はAシートより前に有料座席の列車が関西にもいたこと、そして当時の時代背景から見るとかなり面白い列車であることがお分かり頂けたかと思います。この京阪神快速グリーン車の血を引き継ぐAシートも気付けば運行開始から5年が経過しました。登場当時から値段や予約方法など大きく変わってきましたが、どうか先代のように廃止されることなく、ぜひ末長く走り続けてもらいたいですね。
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コメント ご意見やご感想等お気軽にどうぞ。
大まかな時刻表を掲載掲載してくださるのは大変ありがたいです☺️私もぜひ機会があれば乗ってみて、内装のレビューといきたいところです。
ところで、とねも細かい話とはなってしまうのですが、
>当時の東海道新幹線にもグリーン車が連結されてまし
>たが、当時のグリーン車は料金を払えば誰でも乗れる
>今とは違い、華族といった上級国民しか乗ることが
>きないものだったのです
例として挙がった華族制度、こちらは日本国憲法の施行とともに廃止されています。なので「旧華族」などと改めるとよいかもしれません。
また「上級国民」というワードは比較的最近使われだしたもので(2019年の新語・流行語大賞にノミネートされるくらい新しい言葉という認識です)、かつそのように言われる方々に対しての皮肉的な意味合いが含まれています。したがって、このような記事で用いるのはあまり適切でないと感じました。「上流階級」などを代わりに用いるのはいかがでしょうか。
ご指摘ありがとうございます。
訂正いたしました。
「運賃以外の余計なお金を払いたくない」という関西人の倹約思考…
関西(神戸)人ですが、他地方ではそういう通説というか都市伝説があるようですが、私見ではそういう傾向は感じておりません。近鉄や南海の有料特急とか昭和の頃からずっと存続してますからね。
単に、料金に見合う着席サービスであると考える利用者が少なく利用が伸び悩んだ、という程度のことではないでしょうか。
当時ライバル関係である阪急や京阪などでは…
これもよく言われるフレーズですが、昭和50年代当時の私鉄は、京阪間特急では主に無料クロスシート車でしたが、阪神間ではロングシート車ばかりでした。大阪−三宮、神戸なら25〜30分ぐらいですからね、かつ運賃自体が国鉄に対して私鉄は概して安く、そこに当時の物価、金銭価値を考慮してグリーン席課金700円は関西人かどうかに関係なく高く感じられるのではないでしょうか。
国鉄は運賃が高くても、113系クロスシート、
私鉄は安いがロングシートと、非鉄の人であってもある程度の棲み分けのイメージがありました。ここに、赤字に苦しむ国鉄がさらなる差別化を図るために、新快速を運行開始するわけですね。速さを大きくアピールした新快速ですが、京都−神戸、大阪−姫路などで直通(乗車時間だけでなく乗換え不要なことでも速い)というのは、競合私鉄には絶対真似できません。
つまり、上流階級うんぬんのグリーン車の存在は、高度成長期における一億総中流意識の拡大とともに
、赤字国鉄の京阪神地区の営業施策として不要なものになったと私は思っています。
当時の新快速は快速とあまり差がなく…
快速は明石以西各駅停車ですので、姫路方面だと相当違います。山電の特急がラッシュに耐えきれずクロスシートを諦める一方、山陽新幹線開業で大阪−岡山間は新幹線に全振りするも、大阪−姫路間では新快速が主役になっていきます。料金面でも、私鉄は山電、神戸高速、阪急または阪神と初乗り料金が3回かかりますので区間によっては大差ありません。もし117系が、今の上野東京ラインのようなロングシートの普通車と二階建グリーン車の編成で登場していたら、グリーン車が存続する余地はあるか…どうでしょうかねぇ。そんなこと当時考えたこともないです。
平成も半ばに入ると、JR九州の駅ではどこを向いても特急割引切符「2枚きっぷ」「4枚きっぷ」のポスターだらけになり、短距離でも特急利用が当たり前になる一方、JR神戸線では京都線と違い特急はそもそもわずかで販促もまるでなく、無視されているような印象をうけました。ですから、2019年の新快速Aシート、そしてらくラクはりまの運行開始は、神戸線の営業施策そのものが大きく変わったと感じたものです。
否定的なコメントばかりで申し訳ないのですが、神戸出身者の正直な感想でした。
時代は流れるが…流行(はやり)は繰り返される…ファッションと同じように…
サロ113のことですね?
個人的には好きな車両でしたが…定員48名?だった気が…。
横須賀・総武快速でよく見ました…子供の頃。
見かけたら「ラッキー」と思ってました、希少車なので。
153系新快速は急行型だった為屑物入れトイレ洗面所があり座席も113系と比べゆったりしていたあれは当時としては良かったのではないか?。
指定席840円って東日本だと観光列車料金なんですよね(通常は540円)